kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

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たった一人の生還 たか号遭難27日間の戦い

2019年08月09日 | 書評

黒潮丸通信からおしえてもらった「たった一人の生還 たか号漂流27日間の戦い」山と渓谷社刊2014年を中野図書館より借りた。たか号遭難は1991〜92年のグアム外洋ヨットレースで起きたこと、生還者が一人であったこと、捜索活動に見落としがあったこと、当時の外洋ヨットレースの実施体制が貧弱なことなどは知っていたが、それ以上のことは知らなかった。新聞を賑わした事件であったことは間違いない。

佐野三治さんが生き残り記録として執筆したものである。荒天でたか号が転覆した際に艇長が水死したことから始まり、起き上がった艇が浸水して放棄せざるを得なくなり、ライフラフトに6人が乗り移って漂流してしまう。緊急遭難信号発信機の作動不良と喪失も重なり、外部への通報に失敗する。ラフト内の装備品、水、食料も荒天の中でほとんどがなくなる窮地に陥る。時間とともに飢餓状況となりラフト内が狭隘なこともあって衰弱する人が出てくる。死ぬ人が一人出ると次々と亡くなり、最後は2人となる。その間に筆者は客船と海上保安庁捜索機YS11、自衛隊哨戒機P3Cを見る。客船は夜間のため発見されず、YSには発見されたと思い救助を待ったが来なかった。
最後は筆者一人となり、精神的に落ち込み妄想を見るようになる。ラフトは空気が徐々に抜けて居住環境も悪くなる。その中でかつを鳥を2匹捕まえて食料にすること、雨水を数回飲むことができた。
漂流27日目に貨物船に発見され救助された。海上保安庁くらまに移乗、ヘリで硫黄島へ移送、硫黄島よりファルコンで羽田空港、日本医大入院となった。
病院での治療状況も詳しく書かれており、きちんとした記録になっている。死んだ仲間遺族への訪問も詳しく書かれている。自分が体験したことを生存5ヶ月めにまとめており正確性はあると思われる。
この山渓版は後書きに特徴がある。それは2014年に遭難した辛坊氏が書き加えた遭難、漂流の実体験である。佐野さんとの体験は違いは大きいが、共通した思いはあるようである。
久しぶり一気に読めた新書であった。

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