kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

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ホース・ソルジャー 本、映画

2017年10月13日 | 映画評価
ホース・ソルジャー 米軍特殊騎兵隊、アフガンの死闘 
ダグ・スタントン 早川書房 2017/10/10 読了


 2001年9月11日のアメリカの同時多発テロ発生後、犯人として突き止めた首謀者ビンラディンのグループ、アルカイダをアフガニスタンが友人としてかくまっていました。アメリカはアフガニスタンに引き渡しを要求しましたが、断られました。そこで交渉は早々にあきらめて、当時政権を維持していたタリバンを倒す目的でアフガニスタンに侵攻しました。アメリカ軍は隣国ウズベキスタンのカルシ・ハナバードにある空軍基地K2を借りて、そこから11月初旬にアフガニスタンへCIA特殊作戦要員、陸軍特殊部隊兵士などを秘密に送り込りこみました。具体的には反タリバンの主要な勢力であった寄せ集めの部族群、北部同盟を支援して北部の要衝であるマザリシャリフの攻略を行いました。
 本書は、その過程でのアメリカ軍特殊部隊兵士と北部同盟兵士の共同作戦での活躍をドキュメンタリーにしたものです。アフガニスタンでは馬が主に移動手段として使われており、アメリカ軍特殊部隊兵士たちも馬にまたがって移動、戦闘をしたので、本の題名がホース・ソルジャーになったわけです。近代戦で馬に乗って戦うという一種のアナクロニズム・時代錯誤が見て取れるところが、この本の狙いでしょう。
一方で、極めて近代的な戦い方である、空軍機との連携による精密誘導爆撃が描がかれています。精密爆撃を任務とする爆撃目標誘導員による陸上目標のレーザー照射とGPS座標を決定し、頭上を飛ぶJDAM搭載のF-18やB-52に伝えることにより、ピンポイント・精密誘導爆撃が可能でした。タリバンは当初、高空を飛ぶ航空機より、どこからともなく爆撃が行われるので相当な恐怖であった思われます。
 CIA特殊作戦要員、陸軍特殊部隊要員らは北部同盟の部族長やその部下たちを尊重して行動しており、一体となってタリバンを追いつめてゆきます。2001年11月には北部の要衝であるマザリシャリフを陥落しますが、そのあとに起こったタリバン捕虜の粗雑な扱い(武器が備蓄されていたカライジャンギ要塞の中に閉じ込める)により、武器を見つけ出した捕虜の反乱にあってCIA特殊作戦要員に死者が出てしまいました。同時にタリバン側にも数千名の死者が出ました。
 アメリカご都合主義による戦いぶりが本書で明らかにされており、あまり好ましい印象はありません。しかし馬に乗って戦ったという点が面白いところではあります。アフガニスタン部族兵士の様子も興味深い。2001年9月11日からほとんど日もたたないうちに、軍事力行使の決断をしたアメリカの覚悟と、実行力の高さは見事でした。
 2017年現在、アフガニスタンの混乱は収まっていません。様々な対立、国民の教育レベルの向上ができていないなど多くの問題があるので、しばらくは紛争は続くと思われます。

映画 ホースソルジャー 2018/5/14 TOHOシネマズ日比谷
 新しいTOHOシネマズ日比谷にてホースソルジャーを見ました。早川書房発刊の原作を読んでる者にとってはいささか物足りない。美味しいところをつまみ出して作ったように思えてしまいます。最初から主人公がマッチョ系で展開は予想できましたが、アメリカ国威発揚映画になりました。撮影はアメリカ国内ということですので、アフガニスタンに似た地形があったようです。
 映画では目的地のマザリシャリフに進軍する過程が描かれているのは原作と同じです。送られたソルジャーは地元軍閥であり反タリバン勢力を率いるドスタム将軍と手を結びます。政治的な配慮から地元軍閥が進軍し、アメリカのソルジャーはそれを助けることになります。戦闘自体は陸軍方式ですが、さらにB52爆撃機による高空からのピンポイント爆撃を行いタリバン勢力を駆逐して行きます。激しい騎兵戦や肉弾戦が行われましたが、不思議なことにあれだけ雨あられと銃弾が飛び交うのに主人公たちには当たらず、タリバンや味方のアフガニスタン北部同盟の民兵がバタバタ死にます。ヘリで助かるのは味方アメリカ兵のみという一方的な内容です。
 馬に乗って戦うのが映画の味噌ですが、そこに至る苦労がほとんどありません。すぐに馬に乗って活躍できるでしょうか?原作ではその辺りもしっかりと書かれていましたが、映画では端折られいます。
 一方、出てくる兵器などは原作よりもたっぷりしています。チヌークの侵攻型は長い空中給油装置を突き出し、胴体には槽曹を抱いた真黒な機体です。アメリカ兵の侵入の際はルートの飛行高度が高く砂嵐や天候に妨げられて相当苦労したと原作にあります。護衛ヘリは天候に適応できず帰還してしまいます。またこのヘリを救助の際に呼びますが、ウズベキスタンより数時間かけてきたのでしょうか。原作にはありません。地上では各種の戦車、軽戦車、ロケット砲ランチャー、ピックアップトラック+機関銃など盛り沢山です。アメリカ軍の協力得られて作られた映画ですので良く作られています。
 最終目的地の マザリシャリフまでの途中にある ターンギー峠の戦いに焦点が絞られます。この戦いでロケットランチャーを装備した車両が出現、苦戦になります。そこへ騎兵隊並みにホースソルジャーが突撃して敵陣を潰してタリバン兵を駆逐して勝利します。この辺りは映画向きに脚色されたものになっています。原作では目的を遂げた後にマザリシャリフの要塞に閉じ込めたタリバン兵からの反撃に会う様子が描かれていますが、映画にはありません。
 いつものようにこれらソルジャーたちは直ぐにアフガニスタンから引き上げて、母国で家族と再会してハッピーになります。アメリカ御都合的な点が多い映画でした。
 せっかくの原作でしたが映画内容はB級です。