ここに掲載する記事は,私の『生命論』(☆)の8章「新しい生物学」における「生物の基本特性」の項を,本ブログ記事のために編集したものである.
☆『生命論―生命は宇宙において予期されていたものである』批評社(2007)
唐木田健一
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私は,本ブログ記事「“社会構築主義”的問題:理論評価に対する“社会的要因”の関与について」および「倫理的問題の評価において要求される項目」において,理論あるいは倫理的問題の評価にあたっては,次の三つの項目が要求されることを主張した(☆):
(a)事実と対応していること(実証性)
(b)論理的矛盾がないこと(合理性)
(c)一般性を有すること(普遍性)
これらは,理論あるいは倫理に対して外から課せられるものではなく,理論あるいは倫理が広い説得力をもつために自らが要求するものである.なお,ここでは,「倫理」は人間関係(「倫」)におけるコトワリ(「理」)という意味で用いている(「和辻哲郎“倫理”という言葉の意味」).
☆これら要求項目の適用については,いくつもの実例を示した:『理論の創造と創造の理論』朝倉書店(1995),『アインシュタインの物理学革命』日本評論社(2018),『科学・技術倫理とその方法』緑風出版(2021),ほか.
三つの項目の間の互いの関係を模式的に理解するには,着目する理論を「円」と考えればよい.項目(a)は「円」とその外部との関係,(b)は「円」の内部の整合性,そして(c)は「円」の大きさに対応する.
これら三つの項目は,生物の基本特性に対応するものである.まず大まかには,(a)は生物とその内外の環境との関係,(b)は生物のさまざまなレベルにおける首尾一貫した合目的性,そして(c)は生物の生存可能な時間・空間の領域に対応する.もっと具体的には,(a)は環境との物質およびエネルギー-エントロピーの授受,(b)は自己保存あるいは自己調節系としての働き,そして(c)は空間的には適応環境の広さ,時間的には生存の継続および自己増殖能に関わるものと解釈できる.これらは生物の基本特性としてよく知られている.
私は,項目(a)(b)(c)は「生命の原理」の要求――環境と相互作用しながら生存する合目的存在の特徴――を個別側面から記述するものとして,普遍的な意味をもつと考えている.人間の広義の理論的(すなわち思考)活動は,その合目的存在の一側面なのである(「理論科学の射程」).
[了]
無限宇宙を考えると
まあそうすると地球上の生命体は全て 我々の識らない宇宙の星から来たことに…