杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科ブログ

杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科からの情報発信です\(^^)√
電話予約は042-357-3671です.

予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える、を読んだ。

2010-12-25 | クリニック通信

岩田健太郎先生の本です.やっとワクチンについて賛成とか、反対といった同じ目線レベルではない、メタレベルの本が出てくれました。

メタファーなどもつかっていて、読みやすく、分かりやすいと思いますので、ぜひワクチンに興味をもっている親御さんなどは読んでみてください.しかし、本当に読んでほしい人は読まないんだろうなあ・・・

 

僕が一番思っているのは、「ワクチンをやっても一定の確率で事故はある.ワクチンをなくしたら病魔は社会に広がる」という、どちらにせよ被害がおこるような事象に対して、社会はどのように受けとめるのがいいのだろうかということです。

 

コンピュータのプログラムをかくように論理的に考えるならば、これは計算すれば簡単に解決できます.モノで考えれば分かりやすいのですが1000万台のPCがあったとします.これにコンピュータウイルスワクチンを導入すると100万台に1台はワクチンソフトをインストールする人がコーヒーをこぼしてしまったり、電源に足を引っかけたりしてPCに害を与えるとします。ここではシンプルにするためにPCは二度と回復しないことにしましょう。

 

一方で、ワクチンをしないと、10%くらいのPCはウイルスにやられてデータが一部消えてしまったり、困った事態がおきるとしましょう。ここでもシンプルにするためにウイルスにやられたPCは二度と回復しないことにします。

 

どれだけワクチンにコストがかかるかにもよりますが、ウイルスワクチンを導入すれば、1000万台÷100万=10台のPCがおしゃかになります。導入しなければ1000万台x10%=100万台のPCがおしゃかになります。

 

これをみれば、ワクチンは導入するに決まってる!となるわけですが・・・問題はウイルスワクチンを導入したPCで壊れる10台のうちの1台があなたのかけがえのないPCだったらどうするか、ということなのです。

 

人はモノではないのです。しかし、ワクチン行政としては、人をモノとして予防政策を取っている。取らざるを得ない。どうやら、そこに現場の悩みが生まれてくる原因があるようです。

 

 

もう一つ。気になる点。

現在のワクチン議論では、ワクチンを打つ人、うたれる人の存在を抜きにして、ワクチンそのものの成分だけで議論がなされています。しかし、ワクチンの副反応&副作用をカウントするときに、ワクチンを打つ人、打たれる人の状態は大きく影響してくるのです。

たとえば、打つ人。医師だったり、看護士だったりしますが・・・医師は全国で25万人います。その中にはやっぱり、針のさし方が下手な人、乱暴な人、レベルが様々で存在しています。みな、一律にロボットのようにできればいいのですが、ピアノと同じでうまい下手があります。大人に上手でも子どもには不慣れだったり。そもそもBCGの打ち方学んでないだろう、というようなBCGの打ち方をしている子どもの腕を見かけることもあります。

 

打たれる人にも様々な事情があります。医師が注射をうっている間に子どもを押さえている手を終わったと勘違いして離してしまう人。ワクチンというより針恐怖症で失神をおこしてしまう人。何を注射しても腫れてしまう人。病気のせいでワクチンがうてない人。暴れてしまう発達障害の子ども。薬をいれなくたって針をさしたまま、腕をぐるぐる振り回されたら、そこが腫れてもおかしくありません。

 

実はこうした人間側のパラメータの方がずっとワクチンの副反応・副作用という数字に作用している可能性は大きいと思っています.もちろん、ワクチンの種類によってこの関与は大きく異なりますし、ワクチン製剤の影響がゼロというわけでは絶対にありません。

 

ワクチンの副作用・副反応の認識、定義、基準もはっきりしていません。現場の医師に任せています。医学的には関係なくとも、患者救済のお金が、目の前の患者さんに届くなら、と患者のおきた疾病とワクチンを関連づけてしまう医師も少なくないと思います.もし、私だったらそうしてしまうと思います.

 

まあ、例えるなら、月にプラスマイナス1秒狂うデジタル時計を買ってもらった人が、そもそも自分が30分とか平気で遅刻するくせに、それを棚にあげて、この1秒の狂いをなくすために電波時計を買い直したりすることにあくせくしてるのと同じように見えるのです。その前にやれることはもっとあるだろう、と思うこのごろです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿