あれは失敗だったのか?
さらは昨年、中2の合唱コンクールのピアノ伴奏の演奏の途中で止まってしまった。
見てるこっちの方も焦った。
一杯練習して来たけど、弾き込みは十分とは言えなかった。
楽譜も覚えてはいたけど、正確に弾こうとするから緊張感が出るようだった。母の私はピアノの事は全く分からないけど、カクカク弾いてる感じだった。
合唱コンの日の朝、いつもは弾けてるところも急に弾けなくなったのは気になった。本番前のプレッシャーかもしれない。
本番。
途中で止まるところが何回かあり、持ち直してはいたけど、あるところで完全に止まってしまった。
そしたら、クラスの子全体がアカペラで続けた。
中1。
中学に入って、1学期の終わり、合唱コンクールのピアノ伴奏を頼まれたとさらが言う。
さらは自分から手を挙げるタイプじゃない。
小学校の時にはたくさんいたピアノを習っていた子も、中学に行くと塾に行く子が増えるし、部活と勉強の両立もあってか、辞める子も多いらしい。そしたら、クラスにピアノを弾く子が2人しかいなくて、課題曲と自由曲があるから、自由曲の方を音楽の先生に頼まれたらしい。
自分からは手を挙げることはないから、初めてそんな主役級なのが回って来て、いいやーんと言う母に、さらは「主役は歌う人で、ピアノは伴奏」と冷静。
私はピアノも弾けないし、楽譜もドから数えて読むくらいだから、楽器をすらすら弾くなんて夢のまた夢。小学生の時、音楽会とかでピアノになる子とかって、主役級でいいな~なんて思ってました。
私の母はピアノを弾くのに、私に教えるとかは全然なかったから、音楽のことは全然分からない。1曲弾けるようにどのくらいかかるかも、よく分かってない。
それとは別に、夏に船旅に行く予定があった。
4月に見つけて、勢いで申し込んで、3週間の日本一周の船旅。
帰って来たら、姉妹2人のピアノの発表会もあるということで、折り畳み式のキーボードを買って、船に乗った。(船の中にピアノは何台かあるけど、お客さんは弾いてはいけない決まりだった。1年に一度帰国した時しか調律できないから、素人は触れないようになってた。)
ところが、船の中は新鮮だし、寄港したら観光でめい一杯出かけるし、練習する時間って案外ない。
ただでさえ、中学に入って初めての宿題の量はすさまじい。
さらに副教科まで宿題が出るって、私の時代はなかったような気がする。
2学期になって蓋を開けてみたら、合唱コンクールの曲の完成度がいま一つ。
ピアノの発表会の曲は約1年かけて去年から練習してたから、弾けるようになってたけど、合唱コンの方が...。
結構直前になって、ピアノの先生から「このままではまずいです」と言われ、生徒数が多くてなかなか空きのない先生だけど、誰かが休みになった時とかに追加でレッスンをしてくださる。
私は1曲を完成させるのに、どのくらい時間がかかるのか全く分からなくて。
学校が1学期の終わりに楽譜を渡して、2学期の合唱コンクールをするというくらいだから、できるものなんだろうくらいに思ってた。
よく考えたら、ピアノの発表会は1年前から練習してるんだから、それを考えても、この短期間で新しい曲を弾けるようになるって、相当大変なのでは。
〇小節がこのくらいで弾けるようになったから、〇小節x〇時間で、このくらい?とか考えたりもしたけど、そんな機械的にうまくいくわけでもない。
とにかく練習量が足りないということだった。1日2時間くらいは弾かないと追いつかない。そうなると、学校の宿題もこなしてたら、ゆっくり進めるさらとしては、物理的に時間が足りない。さらと話して、しばらく美術部も休んで
合唱コンまでは練習時間を確保することに。それを部活の顧問の先生にも相談に行く。
部活の顧問の先生と話してたら、部活だけでなく、美術の授業でも取り組んでる絵を仕上げるのがまだだとか。そうか、全体的にゆっくりじっくり時間をかけたい方だし、かかってしまうんだ。私もそういうとこあるから、もどかしい。不器用なとこ似てごめん、と思う。
とにかく合唱コンの数週間前は、部活を一旦停止して、家でのピアノの練習時間を増やす。他にも見つかった何教科かの課題が遅れてるところも追いつかないといけない状況だった。
「ピアノは主役級だからいいや~ん」と思ってたけど、全然そんなんじゃなかった。ピアノの子、めっちゃ陰ながら努力しなあかんやん。
ピアノが好きだったり、気晴らしになってて引き受けるならまだいいけど、さらの負担になってないかなと気になった。
私自身が、「責任があるからする」って考える方だから、さらにも「伴奏がないと始まらないから、責任重大やで。」とか「迷惑かけたらあかんで。」と言ったこともあった。
音楽の先生と美術の先生に相談した時、ピアノのことが負担になって学校に来れなくなることも心配していた。不登校の子が増えてるし、中学でも1クラスに何人かいる状況。そこを気にかけてくださる。
でも、さらはどちらかというと、その時点では、このことがあるから、前を向いていた。元々は学校が嫌だったということを忘れてる感じ。