伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ70

2018-09-02 12:15:03 | ジャコシカ・・・小説
彼が去った後、あやはこみ上げてくる腹立たしさと、訳の分からぬ動揺で呆となっていた。

 社長と入れ替わって優美が近付いて来たのにも気付かなかった。

 「社長が何か用だった」

 今度こそ息が止まった。

 「どうかした。何か言われたの」

 あやは返事の前に、顔の前で激しく手を振った。

 優美の眼がじっと、あやの眼の奥を覗きこんでいる。

 「特に何も言われていません。ただ近頃ちよっと客足が落ちていることで諮かれました」

 「それで・・・・」

 「シーズンの切り替え時期だからじゃないですかって答えました」

 「それだけ」

 「ええ、それだけです」

 優美の視線が動かない。

 大きな眼だ。ただでさえ大きな二重の眼がいつも一杯に見開かれているのが、彼女の顔の一番の

特徴だ。

 いささかバタ臭いその眼とは裏腹に、鼻も唇も控え目で温和しく日本的だ。

 体型と同じくふっくらとした面立ちは、36歳の年よりは上に見える。

 いつもいつも色んなことを取り仕切り、新しいアイデアや企画に挑戦しているからかも知

れない。

 彼女の前に立つといやでもその意志力に満ちた力を感じてしまう。

 あやはもし彼女が着物姿で現れたなら、間違いなく大勢の従業員を従えた、観光地のホテルの女

将に見えると思っていた。
コメント
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