彼が去った後、あやはこみ上げてくる腹立たしさと、訳の分からぬ動揺で呆となっていた。
社長と入れ替わって優美が近付いて来たのにも気付かなかった。
「社長が何か用だった」
今度こそ息が止まった。
「どうかした。何か言われたの」
あやは返事の前に、顔の前で激しく手を振った。
優美の眼がじっと、あやの眼の奥を覗きこんでいる。
「特に何も言われていません。ただ近頃ちよっと客足が落ちていることで諮かれました」
「それで・・・・」
「シーズンの切り替え時期だからじゃないですかって答えました」
「それだけ」
「ええ、それだけです」
優美の視線が動かない。
大きな眼だ。ただでさえ大きな二重の眼がいつも一杯に見開かれているのが、彼女の顔の一番の
特徴だ。
いささかバタ臭いその眼とは裏腹に、鼻も唇も控え目で温和しく日本的だ。
体型と同じくふっくらとした面立ちは、36歳の年よりは上に見える。
いつもいつも色んなことを取り仕切り、新しいアイデアや企画に挑戦しているからかも知
れない。
彼女の前に立つといやでもその意志力に満ちた力を感じてしまう。
あやはもし彼女が着物姿で現れたなら、間違いなく大勢の従業員を従えた、観光地のホテルの女
将に見えると思っていた。
社長と入れ替わって優美が近付いて来たのにも気付かなかった。
「社長が何か用だった」
今度こそ息が止まった。
「どうかした。何か言われたの」
あやは返事の前に、顔の前で激しく手を振った。
優美の眼がじっと、あやの眼の奥を覗きこんでいる。
「特に何も言われていません。ただ近頃ちよっと客足が落ちていることで諮かれました」
「それで・・・・」
「シーズンの切り替え時期だからじゃないですかって答えました」
「それだけ」
「ええ、それだけです」
優美の視線が動かない。
大きな眼だ。ただでさえ大きな二重の眼がいつも一杯に見開かれているのが、彼女の顔の一番の
特徴だ。
いささかバタ臭いその眼とは裏腹に、鼻も唇も控え目で温和しく日本的だ。
体型と同じくふっくらとした面立ちは、36歳の年よりは上に見える。
いつもいつも色んなことを取り仕切り、新しいアイデアや企画に挑戦しているからかも知
れない。
彼女の前に立つといやでもその意志力に満ちた力を感じてしまう。
あやはもし彼女が着物姿で現れたなら、間違いなく大勢の従業員を従えた、観光地のホテルの女
将に見えると思っていた。