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 物語は上巻から時を置かずに続きます。

 本巻では、人は目的のためならここまで邪悪になれるのか?という思いを強く抱いた。
 例えばマーティンの弟のラルフ。もともと乱暴な性格だったことに加え、昇進する度に彼の中の獣が顔を現してくる。また、グウェンダの兄のフィルモンは修道院長になったゴドウィンの側近となり、邪悪な性格がますます歪んでくる。
 権力を手にすると人の本性が現われる。現代の価値観で彼らを断じてはいけないと知りつつ、これはひどい、と思う(^^;
 一時マーティンと恋仲になりかけたエリザベスも失恋の痛手から修道女になり、心穏やかになるどころかマーティンとカリスを憎むようになり、彼らを苦しめる偽りの証言を進んで行うようになる。

 ひとりひとり挙げていくと切りがないが、ある者は金のため、ある者は野心のため、そしてある者はちょっとしたボタンの掛け違いから激しい憎悪に身を焦がし、他人を不幸にしてゆく。ややカリカチュアライズされてはいるが、ここに書かれていることのスケールダウン版なら現代にもいくらでも見つかるだろう。
 その一方で、本当に親切だったり愛情深かったり思いやりにあふれていたり・・・そういった美徳を備えた人々もいて(もちろん、マーティンとカリスも含まれる)、悪人との対比が見事。正義は勝つ!(爆)と信じて下巻に入りたい(^^;

 圧倒的なディテールも、この作品の魅力。

 中世のカトリック教会がいかに権力を持っていたか、当時の職人・商人がいかに知恵を絞って生活を成り立たせていたか、ギルドは誰と敵対し誰の利益を守っていたか、近代兵器が無いとはいえ戦争がいかにむごたらしいものか、そしてペストに対して教会が、いか人々が無力であったか・・・
 歴史の教科書ではわずか数ページで説明される内容が、ボリュームがあるからこそ、もちろん著者の筆力もあって、読みごたえがあります。簡単に説明できるくらいなら小説は不要。黒か白かではないグレーゾーンこそ人間の心のありようで、著者は過不足なくそのあいまい領域を描ききっています。

 気になるマーティンとカリスの愛の行方は・・・とんでもないことになる(^^;「こうなるだろう」という予測は片っ端からはずされ、気持ちよいほど裏切られる(^^;
 まあ、ここは紳士らしくネタバレなしでいきましょう! 気になる方はぜひ読んで下さいね(^_-)

 そうそう、読みながら思い出したことをひとつ。
 ジュリア・ロバーツ主演のラブコメディ『プリティ・ブライド』(原題は『ランナウェイ・ブライド』)。花嫁が結婚式場から3回も逃げ出してしまうという○カ映画。私はプンスカ状態で観終え、ちっとも笑えなかった。評価も最低(^^;
 しかし、本作でも聡明なカリスが喩えとしてそう考える場面が出てくるんです。「結婚式場から花嫁が逃げ出す」って向こうの常套表現なのかな? そういえば私の好きなスパイダーマン2でも、メリー・ジェーンが逃げてたし(^^;
 ちなみに「コップに水が半分しかない/まだ半分もある」という、プラス思考でいくかマイナス思考でいくかという時によく使われる表現も(half empty or half full)は向こうの定番ですね。本作にも出てきます(^_-)


【関連エントリ】
『大聖堂(上)』ケン・フォレット
『大聖堂(中)』1ケン・フォレット
『大聖堂(中)』2 ケン・フォレット
『大聖堂(下)』ケン・フォレット
『大聖堂ー果てしなき世界(上)』ケン・フォレット

大聖堂―果てしなき世界 (中) (ソフトバンク文庫)
ケン・フォレット
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