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大聖堂 (上)

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 あれれ、スピーディな展開のスパイ小説、「針の眼」とはかなり違う。正直、いくら正月でまったりしてるとはいえ、3分の2位までは読むのが苦痛だった(^^)。
 何が苦痛かというと、物語が遅々として進まないということもあるが(大部なので仕方ないか)、描かれている人物たち、かな。リアルなんである。どういうことか?
 現代日本の作家が描く人物は、現代日本の読者が「期待する」ように行動する。ここでいう「期待」のベクトルは良い悪いの方向を問わない。
 善人、悪人から始まり、なんとなく遊び暮らす高校生、一般常識の欠落したオタク、筋を通すがために組織で浮いているビジネスマン、出世至上主義で上役にべったりのサラリーマン、連続殺人を犯す快楽殺人犯・・・いろんな人物像があるが、すべてある役割を期待され、それを作中人物として演じさせられている。「嫌なヤツ」でさえ意図してそのように描かれているから、最後に痛い目にあったり時には命を落とすことで読者のカタルシスにつながるわけだ。
 ところがこの「大聖堂」、(今のところ)主役の石工、トム親方。背が高くがっしりした体つきだが、それほど強いわけではなく、聖堂の設計・積算ができるくらいだから頭はいいんだが、日常の生活では抜けている。そして一番いらいらさせられるのは長男のこととなるととたんに目が見えなくなること。ものすごく言動に矛盾がある。
 読者としてはトムにシンパシーを抱きつつ、物語を共に歩んで行きたいと思うのだが、ちょっと好きになりかけると突き放される感じ。いや~ツライ(^^;)。でも、実際、現実世界ではむしろこういうことが普通だ。これがリアルと書いた理由。
 後半部では物語が動き出し、一気に読んでしまった。嫌な感じを抱えながらでも物語がどこへ進むのか見届けなくてはならない、すっかりそんな気にさせられてしまった。さすが、ケン・フォレット、続きを買わなければ(^^;


【関連エントリ】
『大聖堂(中)』1ケン・フォレット
『大聖堂(中)』2 ケン・フォレット
『大聖堂(下)』ケン・フォレット

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