キューピーヘアーのたらたら日記

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『日の名残り』 カズオ・イシグロ

2008-12-11 16:20:22 | 
なんて堅苦しい小説!

って最初は思った。

一昔前の英国の執事の回顧録なのだから致し方ない。

放送大学の講義で取り上げられてなかったら、

おそらく一生手にとって読むことはなかったであろう。

回顧録というのは語弊があるかもしれない。

小説の現在(1956年)では、主人公:スティーブンスは新しいアメリカ人の主人に仕え、

一週間の休暇をもらって、イギリス西部へ自動車旅行をするのだ。

その旅の途中にいろいろ昔を振り返ってはまた現在に戻る、

という小説の構造なのである。


『日の名残り』とは夕暮れの、一日のうちで一番景色が美しい時間帯。

そう、『ザ・マジックアワー』である。

それは大英帝国の凋落の暗喩であり、

スティーブンスが長年仕えたダーリントン卿の没落であり、

老年期にさしかかったスティーブンスの人生の今現在の姿であり、

実らなかったスティーブンスの淡い恋でもある。


旅の目的の一つは、昔の女中頭:ミス・ケントン(今はミセス・ベン)に会い、

もう一度ダーリントンホールで働かないかと要請することであるが、

そこからが間違いだ。

「今の結婚がうまくいってないなら、旦那と別れて僕と結婚してください。」

とプロポーズするための旅でなければならない。

そうでなく、単に仕事にかこつけて会いに行くだけでは男らしくない。

このスティーブンスには人間として何かが欠けている。

今更泣いてみたって知るもんか。

せいぜい、アメリカ風のジョークの練習でもしてろって、言いたくなっちゃった。

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