『リセット』垣谷美雨(双葉社)
著者は第27回小説推理新人賞を受賞した方で、受賞作はたしか「竜巻ガール」で、これも後で読んだけど、推理……っていうのはどうなのか、文学筋ではないわたしにはギモンだったけど、「ああ、そうだったのか」と膝を打つ瞬間はあるから、広い意味でのミステリには入るんでしょう、たぶん。
で。
この『リセット』も、推理小説=ミステリ小説っていうイメージのあるわたしなどには、ミステリっていうのかなあ、と首をひねるけど、350ページで終わる本書の349ページで、わたしは「うきゃー」と驚きと喜びの叫びを上げましたよ! 心の中で。夜中に読んでたから、ほんとに大声だしたらやっぱりねえ……。そんな話はさておき。
これぞミステリ。蒔いた伏線をちゃんと刈り取ってくれている!
でも、ストーリーの本筋とは関係なし。全然なし。たぶん。
いや、ほら、「これ、伏線かな?」とずっと気にして読んでたのに、なーんにも説明されずに終わっちゃって、えー? って欲求不満になるミステリ小説もあるじゃないですか。「気にするほうが悪いわ、あんたミステリのセンスないわ」と言われたら、返す言葉がないんですけど。トリックは言うに及ばず、犯人当たらないことも多いし(あはは)。
でも、これは、その反対。
「うわー、あ、あれ、こ、このための伏線やったんかー!」
こんなもんの――否、ていうか失礼――このための伏線やったんかーとちゃんと言えるくらい、実はしっかりくっきりはっきりと、頭の片隅にメモ書きしてあったのだ。ずーいぶん前のほうに出てきたそのくだりを。見る側の気持ちと見られている側の特徴を一度に浮き上がらせている人物描写だと思ったその部分……。伏線だったのだ。こんなもんの。何度も言うな? ゲラゲラ。
垣谷美雨さんてきっとすごくお茶目さんね、とわたしは勝手に推理する。これじゃ犯人当たらなくて当然ですかそうですか。
同じところで膝を打ち、そして笑ってくれた四十女さん、あなたとは仲良くなれそう。