むしろ有害

アメリカのFDA（食品医薬品局；日本の厚生労働省みたいなところ）が、抗菌作用のある19種類の抗菌剤を使用している抗菌石鹸やボディーソープなどを販売禁止にする、と9月2日に発表した(ここ)。

3年前に殺菌製品に使用される殺菌剤が長期的に健康リスクがあるというデータが出たことを受けて、今後もそれらを販売したいメーカー側に対して、安全性と有効性の追加データを出すように求めていた。が、今回使用が禁止された19種類の殺菌剤については、通常の石鹸より効果が有る・あるいは通常の石鹸と同等の安全性があるといったことを示すデータが提出されなかったため、使用禁止措置となった。欧州ではすでに2015年の段階で、化学物質を管理するEUの機関が液体石鹸にトリクロサンを使用することを禁じている。

FDAは通常の石鹸を使って水で洗った場合と比べて、抗菌石鹸が細菌の増殖を効果的に防ぐという科学的証拠はないのみならず、長期的には抗菌石鹸のほうが有害となりうる可能性があるという指摘もある、と警告している。要するに、抗菌石鹸で30分くらい手を洗うなら別だけど、ちゃっちゃと洗ったくらいでパッケージに歌われているような殺菌効果は得られず、むしろ使われている抗菌剤の内分泌撹乱（ホルモンの働きを妨害して甲状腺などに悪影響を及ぼす）リスクがありうる、抗菌石鹸ってむしろ有害ってはなしだ。

菅官房長官は7日の記者会見で「日本において同様の成分を含む製品の確認を早急に実施している。この調査結果を踏まえ、厚生労働省の審議会において日本が取るべき措置について検討を行い、速やかに結論を導きたい」とのんきなことをおっしゃっておる。国民の生命財産を守るとか選挙の時に連呼した首相、国民が嫌がる原発やら秘密保護法やら憲法改正には前向きだけど、少なくともアメリカでは3年前から問題視され、EUでは昨年すでにトリクロサンが使用禁止になっているのに、なにが「早急に実施」だよ。ったく、国民の生命財産は守ってくれるつもりがないってことじゃん。

政府の決定など待ってたららちがあかないので、我が家はミューズとお別れすることにしました。これにはトリクロカルバンという固形石鹸に含まれる抗菌剤（このたび晴れてFDAが禁止した）が含まれている。有用だと信じてたのに、有害だったのね。ちなみに今回FDAが禁止したトリクロサンやトリクロカルバンは日本において、抗菌や殺菌効果をうたう石鹸、ハンドソープ、ボディソープ、歯磨き粉などに使用されており、化粧水、クレンジング液、美容液、フェイスクリーム、日焼け止めなどにも防腐剤・消臭剤として添加されているようだ。

ところで、日本国政府が国民の生命財産を守ってくれない例をついでにもう一つ紹介。トランス脂肪酸の件。トランス脂肪酸を一定量摂取すると悪玉コレステロールが減って動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まるとされており、それ以外にも認知機能の低下やアトピー、アレルギー、肥満などのリスクも高めるということで、いろんな国の食品には含有量の表示が義務付けられている、しかも10年以上前から。欧米諸国のみならず、ブラジルなどの南米諸国や、アジアではお隣の韓国も10年くらいまえから表示している。が、日本では「そもそも日本人が摂取している量が少ないので問題ではない」と表示義務には否定的。そのせいでトランス脂肪酸を多く含むマーガリンは今でも何事もなかったかのように使われているし、同じくショートニングだってクッキーやドーナッツに使用されている。今でも学校給食ってマーガリンなんだろうか？不安じゃ〜

リスクコミュニケーションという意味で「少なければ安全だけど、摂り過ぎると危険」と警告くらいして、食べる側の意思で選べない給食などでの使用は禁止すればいいのに、それすらせず、よって成分表示義務の導入なんてありえね〜って。どれだけ業界寄り、どれだけ国民無視？

テレビも新聞も「日本のおもてなしはすごい」とか「技術大国日本」とか、多分30年くらい前ならそうだったかもしれないけど、もはやそんなことはない（海外のおもてなしのほうが私には心地いい場合もあるし、技術の勝負で勝っても商品化で負け続けて、とうとうシャープは台湾企業に買われるしまつだし）のに、ないものをあるかのように喧伝するのは、報道機関として恥ずかしいことと思ってもらいたいものだ。そして、政治や行政のおもてなしがなってない、ってか、自己弁護や私腹を肥やすことに忙しくて、主権者である国民を全くおもてなしてないことを批判すべきだと思うんだけど。