フンザは、1974年まで続いたフンザ藩王国があった地域で、王都カリマバードが中心地。
日本では、「風の谷のナウシカ」の「風の谷」のモデルとして、また、宮本輝原作映画「草原の椅子」のロケ地として知られる。
特に、アジアの旅行者の間では、「桃源郷」と呼ばれ、自然豊かな村や谷の美しさは、杏の花が咲く時期にそのピークを迎える。
訪ねたのは1913年4月。
アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)の首謀者ウサマビンラディンが米国特殊部隊により殺害(2011年5月) された2年後。
殺害された場所は、ちょうどイスラマバードからカリマバードに向かう幹線道路沿いのアボッターバードという街。
付近は軍事施設があるような地域で、現地のガイドは「まだ、彼は生きている!」と言っていた。
途中、ガンダーラ最大の仏教遺跡群タキシラに立ち寄った。
中国からインドへは、ヒマラヤ山脈により行く手を阻まれ、
中央アジアやパキスタンを経由するルートにこうした遺跡が点在する。
既に、イスラム教徒が多く住む地域になってしまっている現在を思うと、
悠久の歴史の中でも、激動の時代を経てきたことを感じざるを得ない。
パキスタンのトラックは、ゴテゴテに装飾され、通称、デコトラと呼ばれている。
日本でも奇麗に装飾されたトラックはあるが、これほどのモノは、まずお目に掛かれない。
街には専用のお店があり、色々なパーツが販売されている。
「トラックの中を見せて欲しい。」と頼むと、
「どうぞ、どうぞ。」とばかりに、自慢そうな素振を見せて、写真にも収まってくれた。
カラコルムハイウェイは、パキスタンのギルギットから中国カシュガルまで、カラコルム山脈クンジュラブ峠(標高4693m)を越えて横断する道路。
2010年フンザ川の山腹斜面崩壊によりダム湖(アッタバード湖)が出現し、道路が完全に遮断されてしまった。
湖は長さ18キロメートル、幅500メートル、水深100メートル以上といわれ、暫くの間、渡し船での行き来を余儀なくされた。
私が訪ねたのは、ちょうどその時で、未舗装の道路をカリマバードからタクシュルガンまで、まるまる2日かけて進んだ。
その後、一帯一路を掲げる中国の後押しにより、計画発表後の僅かの期間(2015年完成)で、トンネルの掘削と全面舗装により、1日でカシュガルまで行けるようになったという。
カリマバードには、「ハセガワ・メモリアル・パブリック・スクール」がある。
長谷川恒男は、アルプス三大北壁の冬期単独登攀を世界で初めて成功した有名な登山家。
不幸なことに、近郊のウルタルⅡ峰で雪崩により1991年遭難死してしまった。
その故人の遺志を引き継ぎ、奥様がこの地に学校を設立したもの。
この地域では、教育の機会を得ることが難しく、また特に、女性への教育はなおさら。
ちょうど朝礼が始まろうとしている時に訪ねたが、日本人というだけで、歓待して頂いた。
校庭からは、ラカポシ(7788m)の雄姿を望み、
レディフィンガーを従えたフンザピーク(6270m)も印象的。
生徒・学生達の笑顔が今でも脳裏に蘇る。