柏からイタリアニュース

イタリアの今をイタリアメディアの記事からお届けします。

(番外)ベネズエラの現状について

2017-08-02 14:06:13 | 国外記事
ベネズエラは2015年の国民議会選挙で野党が勝利してから、社会の混乱が広がり、政情が大変不安定な状況になっているようです。7月30日の制憲議会選挙を前にして、世界中でその選挙の行方が批判的に注目されていますが、30日付けのコリエレは一般の国民の一例としてインタビュー記事を載せていましたので、ベネズエラの人々の生活や意見の一端を見てみようと思い、翻訳してみました。

La Corriere della sera 2017/07/30

la crisi economica

Venezuela, Pedro e Carmen:
«La classe media ha perso tutto»

La storia di una coppia che si occupa di medicina naturale e terapia del dolore: «Cinque anni fa eravamo una famiglia normale, ora non possiamo bere una bottiglia di vino»

経済危機
ベネズエラの夫婦、ペドロとカルメンの場合
「中流クラスはすべてを失ったよ。」
二人は自然薬の処方と痛みのセラピーの仕事をしている。「5年前には普通の家庭だった。しかし、いまは一本のワインさえも飲めないんだ。」

「5年前までは普通の家庭だった。仕事で食っていけたし、友人たちと夕方集まっての食事買いも出来たし、1年に一回は旅行も出来た。それが今では、最後にいつワインのボトルの栓を抜いたかも覚えていないよ。」ペドロは54歳、カルメンと一緒に住んで10年。カキと呼ばれる、カラカスの丘の街に住んでいる。家は2階建て、トロピカルな植物に囲まれている。気温は年間を通じ、昼夜を通じ、25-28度と快適だ。家の中は香がかおり、猫たちがそこかしことに。二人は互いに愛し合い、好きな仕事を持ち、すばらしい場所に住んでいる。すべては神様のおかげ。2つのことさえなければ。1つは私たちが彼らの住まいにたどり着くまでに潜り抜けなければならない装甲付きの柵扉、そしてカルメンとペドロが話してくれた非常識な話だ。

「ベネズエラの悲劇とは私たちそのもの。世界の人々にとっては信じがたいことかも知れないけど。普通の生活から惨めな生活になるのにあっという間の数年だった。私たちは自然薬の処方と痛みのセラピーの仕事をしている。1日に15人のお客さんが来るまでになったが、それが今では4人だけ。一時間で1万5千ボリバルが料金なんだけど、お客さんは老人が多いから、40%割引にしている。その結果1日1.5ドルの売り上げ。これで米を買う。ただし、売っていればの話だが。」

ペドロが言う。「今日のベネズエラの旧中流階級になにが起きているのかを説明するのは難しい。私の父は一階に住んでいるのだが、彼はいま84歳、かって通信省で高い地位にいたので月30ドルの年金をもらっている。が、近所のInes婦人は誰にも見られないように、夜明けすぐの早朝に木からマンゴを取って、生活の糧にしている。彼女はそのことを恥ずかしがっている。私たちといえば、3ケ月に一度米国から送られてくる包み頼り。キューバの連中はドルでもらうが、われわれは食べ物でということだ。

カーキ(カルメン)が言う。「私の姉は私たちに生活費を送ってくれているの。生鮮品を手に入れるために、友人たちと協力して、いつも使っている市場に交代で行ってるの。しばしば長蛇の列で順番待ちの交代もするの。月曜日は私たちの番でスーパーに公定価格の品物を買う係りってわけ。仕事はヨガ講師、首飾りつくり、化粧、エステシャン。ペドロはコンピュータ修理で数ドルを稼ぐってとこ。この3年間は私たちの食糧供給は、いわばとても健康的、まるでベジタリアンのよう。そのため私は23キロ、ペドロは25キロ痩せたわ。腫瘍患者のようだわ。私たちの社会生活も出費を減らさざるを得ない。だから政府に対するデモでだって、知った顔に出会う機会は少ないわ。」

ペドロが言う。「そんなこんなでここにはもう誰も残っていないよ。友達も親族も。二人の兄弟は米国に、一人の妹もコスタリカに行っちまった。最近に出ていったのは、私のおじだ。おじは麻酔専門医で、ベネズエラでは時給3ドルしか稼げなかった。私の前の奥さんとの間の息子が3人いるんだが、彼らはもう国を出て行く準備をしているよ。私にとっては友人たちとの食事が懐かしいよ。サケとえびの手料理でカルメンと一緒に住むようになったんだからね。まったく笑うしかないが、30年前銀行勤めのころは給与は月2千ドルだったんだよ。これがベネズエラの現実さ。私たちなんてまだましな方。ゴミ箱をあさって食べ物を探している連中だっているんだから。

カルメンが言う。「私たちの生活にインターネットは欠かせない、必須よ。検閲のない情報を手に入れる手段として、TwitterやWhatsAppを使って、国中で起こっていることを知るの。寝るのも少なくとも4時間ごとにペドロと交代で、情報漏れをしないようにしているわけ。デモにいったら家には帰ってこれない。殺されるかもしれないから。住む場所と安全だけは譲れない出費。この建物の柵の向こう側は地獄よ。Ines婦人にはもう無理。だから私たち、ご近所仲間で彼女の費用を面倒見るしかないのよ。」

ペドロが言う。「政府の権力者や、金持ちや、腐った野郎どもはみんな知ってるのさ。中流階級の現状も、食料事情も、抗議が出来ない人、スーパーで並んでいる人、抗議デモに行く人のことも。政府が政府シンパの人々に配布している食料包みは私たちはもらう資格さえない。政府はその包みが1ケ月分の食料が入っているというがとんでもない。だけど少なくとも中には、米、小麦、パスタ、オイル、ツナ、額にして2万ボリバル分だという。だけど、この金額は外の自由市場ではコーヒー豆1袋の値段だ。こんな状態が続くわけがないだろう。世界の人々が私たちに援助のために動いてくれるだろう。そしてベネズエラの港は支援物資でいっぱいになるかもしれない。でもそれはいつなんだ?」


(原文)

http://www.corriere.it/esteri/17_luglio_30/venezuela-pedro-carmen-la-classe-media-ha-perso-tutto-cf4e69d4-7568-11e7-8292-d167b01e26c8.shtml