KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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WBA世界ライトフライ級王座決定戦雑感vol.1

2006年08月16日 | その他のスポーツ
8月2日、たまたま早く帰宅することができた僕は、7時半には、テレビのチャンネルをWBA世界ライトフライ級王座決定戦に合わせることができた。ボクシングの世界戦を生中継で見るのは久しぶりのことだ。

6日放映された「スタ☆メン」(フジ系列)によると、今回の世界戦で日本人チャレンジャー、亀田興毅の敗北を期待していた人は、28%にもなるという。意外と少ないな、と思ったのは僕だけ?いやいや、このようなアンケートが実施されること自体が異例のことだ。他の日本人ボクサーにこのようなアンケートが実施されるだろうか?

で、僕も28%の中の一人だった。亀田3兄弟、並びにその父親に対する僕の印象はというと、スポーツ・ニュースを見ていて、彼らの顔が出てくると、即、チャンネルを変えていたくらいに、嫌っていたのだ。

彼らの名前を知ったのはいつ頃だったのか、全く記憶にない。少なくとも、去年の世界陸上の関連番組には出ていたのは見た。そして、今年元旦のニューイヤー駅伝、彼らが「ゲスト」として出演していたが、解説の瀬古利彦さんに対して、タメ口で話す様に、不快感を覚えた。

かつて、TBSでは、ケンカの強い不良少年をオーディションで集めて、ボクシングのトレーニングを積ませて、プロデビューさせる、というのを番組の中の企画として実施していた。後に、一部メディアで「ヤラセ」が指摘されたりしていたが(あれが完全にシナリオがあったというのなら、指導役の元チャンピオン、竹原慎二の役者としての力量は相当なものだと思うが。)、参加者が傷害事件で逮捕される、という散々な結末だったという。亀田3兄弟を見て、その企画、「ガチンコ・ファイトクラブ」がまだ継続していたのかと思っていた。
と言うよりも、TBSはボクシングは、ヤンキーのするスポーツと思っているのかと思った。

試合前に出た、具志堅用高さんの、彼らに対する批判は、当然のことだと思っていた。だから僕も、この試合で、果たして、亀田の実力は「本物」かどうかを確かめたいと思っていた。

1R3分で12ラウンドの試合に、放送時間が2時間半も用意されている。放送開始は7時半なのに、1時間半は、これまでの兄弟の歩みやら前座試合やらでつぶされた。テレビ局に寄せられた抗議の中には、なかなか試合が始まらぬことへの怒りも多かったそうだが、たぶん、陸上競技に興味のない方々だったのだろう。「世界陸上」では、常套手段だ。ひどい時は、翌日の午前4時頃スタートの競技を、前日の10時頃から、
「いよいよ、この後スタートです!」
などと煽りたてているのは、陸上ファンにはおなじみのことだろう。

父親が大ファンだったというバンドのボーカリストによる国歌斉唱。こんな顔した人だったのか、初めて知った。ベネズエラのファン・ランダエタ。知り合いのマラソン・ランナーに似ている!と思ったので、応援し甲斐があるなと思った。

1Rで亀田がダウン!28%の視聴者は狂喜した一瞬だった。しかし、その後の11R、なんとか持ちこたえたし、ランダエタもとどめを刺すことができず、判定に持ち込まれた。ホームタウン・デジションもありかな、と思ったら、やっばりね、そうだろね、な結果だった。

即、チャンネルを変えた。10時からのNHKの「その時、歴史が動いた」を見れば良かった、と少し後悔している。よりによって、この日のテーマは日本人初のボクシングの世界チャンピオン、白井義男さんだった。この番組で「口直し」をした人も少なくなかっただろう。
試合後の亀田の
「どんなもんじゃい!」
を聞かなかったのは、精神衛生上良かった。

以上があの日の僕が、テレビを見ていて思ったことである。この後のメディアやネット上の大騒ぎについては、ここで詳細に振り返るまでもないだろう。

ホームタウン・デジションはボクシングにはつきものとは言え、ここまで、ボクサー本人に対して批判が集まったケースは今までになかったのではないか。亀田の口の聞き方の悪さや、対戦相手を見下す態度に対する批判が一気に噴出したが、それを言うなら、どうして、今年の元旦くらいから言わなかったのだろう。
「あのような、王者の品格を備えていない者に世界戦を戦わすわけにはいかん。」
と、言う人は誰もいなかったのだろう。ボクシング界にも「横審」のような存在が必要かもしれない。

試合後、批判の的になったのは3兄弟の父親もだが、某週刊誌に「ヤラセ」を暴かれた某大家族といい、このテレビ局はこの手のキャラの親父さんにこそ、家族愛の本質があると思っているみたいだ。いかんせん、父親になったことのない僕にはこの点に関しては、何も言えない。しかし、この父親が年末には「ベスト・ファーザー賞」に選ばれたりすることのないことを祈るのみである。

輪島功一さんが、8度目の世界タイトル防衛戦に敗れた後のリターン・マッチで王座奪還を目指す日々に密着取材した沢木耕太郎さんのノンフィクション作品があるが、その中で印象的なエピソードがある。チャンピオンの柳斉斗が来日する際に沢木さんは輪島さんに、
「出迎えに行くんでしょ?」
とたずねたが、輪島さんの返事は、
「行って何をするのさ。アリみたいに殴りッこでもするのかい。だめさ、日本ではああいうショーマン・シップはウケないんだよ。日本人は生真面目にやらないと、しまいに腹をたててくる。」
というものだった。それから30年過ぎた今、日本人のボクシング、というかスポーツそのものに対する見方が大きく変わってしまったのだろうかと、亀田興毅の、対戦前にフライド・チキンをむさぼりくったり、キューピーの人形を渡したり、ボウチャンという名の相手に「坊ちゃん」の本を勧めたりするパフォーマンスを見て思ったものだった。しかし、今回の世界戦を見て、「腹を立ててきた」人は少なからずいたようだった。「あの時代」のモハメッド・アリだからこそ許されたパフォーマンスを、21世紀の日本の子供が真似していいわけはない。

遅れ馳せながら、この件、まだまだ書きたいことがあるので、つづく。


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