KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2019年マラソン大賞講評

2020年12月27日 | 日本マラソン大賞
昨年の大晦日に発表した日本マラソン大賞の講評、2020年もあと残り4日という今になって発表である。楽しみにしていた方には大変申し訳ない。以下の講評は2019年12月の時点での視点で書いたものである。

新人賞には東京マラソンで日本人トップの5位でゴールした、初マラソンの中央大学の学生ランナー、堀尾謙介と同レースで女子の日本人トップの7位でゴールした一山麻緒、そして名古屋ウイメンズに次ぐ2度目のマラソンとなった北海道マラソンで優勝した和久夢来を選んだ。氷雨の中、有力ランナー総崩れの中、5位でゴールした堀尾、卒業後は近年マラソンで好調なトヨタ自動車入りが内定している。一山も東京、ロンドンを走りMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)出場権を得て6位。2度目のマラソンで「日本代表の登竜門」である北海道を制した和久、と五輪の前年でありながら、「次の五輪」が楽しみのランナーが続々と登場してきた。

カムバック賞にはロンドン五輪マラソン5位入賞の中本と、リオ五輪マラソン代表の「爆走娘」福士加代子。年齢的には「ピーク」をとうに過ぎたと思われた彼らが、MGCのスタートラインに立ったという、それだけでうれしい。

ブライテスト・ホープ賞には鈴木と宇都宮。ピンと来た人もいるだろうが、鈴木は宇和島東高出身で宇都宮は八幡浜高校出身。鈴木はMGCのレースの後半を大いに盛り上げた(彼が集団から抜け出した時は鳥肌が立った。)し、宇都宮はクィーンズ駅伝のアンカーでの八幡浜高校の後輩、中村優希との勝負でワクワクさせてくれた。愛媛出身のランナーが来年以降の日本のマラソン界を盛り上げてくれるかもしれないという伊予柑、もといいい予感。

ベスト市民ランナー賞は、元旦の時に発表した山口遥にもう一人、山崎竹丸を加えさせていただく、この賞、元来は「選者と面識があるランナー」を選ぶ賞であった。別大毎日女子の部優勝などの好成績を連発する実業団に所属経験の無いミセス・ランナー、山口の成績を評価したいが彼女とは生憎面識がない。そこで山口が2時間27分39秒の好タイム(五輪代表選考レースのさいたま国際マラソンの日本人トップのタイムを8分近く上回る)で優勝した神戸マラソンで念願のサブ20(2時間18分59秒)をマークした、高知のランナー山崎竹丸も追加で選出していただいた。

物故者に授与する特別功労賞には、有森裕子に鈴木博美に高橋尚子と3人のマラソンメダリストを育てた「名伯楽」、小出監督。「亡くなった人間に鞭を打つような事はするべきではない。」というのが日本人のモラルというが、この人に対してはいろいろと言いたいことをその「モラル」に従って、「マスコミ対策が実に巧みだった。」とかアテネ五輪の女子マラソン代表に対して「あの3人では金メダルは無理だ。」と暴言を吐いたこととか、何人もの「Qちゃん二世」をつぶし・・・、おっと、ちっとも従っていなかった。

話題賞には3人の外国人。これまで無かったことである。東京五輪のマラソン会場を札幌に変えさせたIOC会長トーマス・バッハ、世界の長距離界を席巻するケニア&アフリカ勢と勝負出来るランナーを多数生み出すクラブチームを率いていたが薬物&セクハラ&パワハラ疑惑でトップの座を追われたアルベルト・サラザール(1980年代には、マラソンに於ける「ラスト・アメリカン・ヒーロー」だった。)、そして、サラザールのスポンサーであり、厚底シューズでマラソン界の勢力図を破壊的に変えているナイキの総帥マーク・パーカー。この3人の「お騒がせ男たち」、サラザールを除いた2人、バッハとパーカーはマラソン界に於いて「改革者」か「破壊者」かどちらで歴史に名前を残すであろうか?

優秀外国人には東京マラソンの男女優勝コンビを。悪天候で日本の有力ランナーが次々と失速する中、高速タイムでゴール。昨年の好記録ラッシュは何だったのかと落胆させた。実はもう一人選出していたのだが、ドーピング検査での陽性が報じられたために割愛した。

以下はメジャー大会の上位入賞者より。努力賞にはびわ湖マラソン日本人トップとなる7位入賞の山本憲二。近年駅伝での中国(CHINAの事ではない)王者となった古豪マツダから、マラソンでも結果を出すランナーが現れた。原発停止の影響で廃部となった四国電力から「格上」のチームであるトヨタ自動車に移籍し、北海道マラソンで優勝してみせた松本稜。冬のマラソンでの快走も見てみたい。ノーリツから独立し、「プロ」として競技を続けてきた岩出玲亜。スキャンダラスな週刊誌報道もあったが、名古屋では5位入賞で雑音を吹き飛ばした。

敢闘賞には、福岡国際マラソン2位の藤本拓、そしてMGC3位の大迫傑を外して、4位の大塚祥平、そしてMGC3位の小原怜を選んだ。大塚祥平、自己ベストは2時間10分台ながら9月のMGCで2時間11分58秒。冬も夏も安定したタイムを出せるランナーだ。五輪や世界陸上の代表には不可欠なランナーである。リオ五輪代表に1秒及ばなかつた小原。今回のМGCも3位で内定を決められず。このまま「悲運のランナー」で終わって欲しくない。「塀までひとっ飛び」の快走を見せて欲しい。


WMM(ワールド・マラソン・メジャーズ)は五輪&世界陸上と同格の大会というのが僕の見解である。殊勲賞にはベルリン・マラソン9位の村山謙太、ニューヨークシティ・マラソン8位の竹ノ内佳樹、そしてドーハ世界陸上7位入賞の谷村観月を選んだ。

優秀選手賞と最優秀選手は今年最大のマラソン・イベント、MGCの上位2人で東京五輪の代表に内定した服部雄馬と中村匠吾、鈴木亜由子と前田穂南を選んだ。前回リオでマラソン代表連続選出が4で途絶えた天満屋から前田が選ばれ、「武富マジック」健在を見せた。中村を「伏兵」扱いする報道もあったが、世界最高記録の出た昨年のベルリンで単独走で2時間8分16秒をたたき出したランナーである。なめたらあかんぜよ。

2019年最大の収穫は、遂に実現した「誰もが納得出来る形の一発選考レース」であるMGCである。これこそ、東京五輪の「最大のレガシー」にしてもらいたい。東京五輪のマラソンの発着が新国立競技場で無くなってしまったが、4年後のパリ五輪のマラソン代表選考もМGCで決めてもらいたい。それは、この方式で選ばれた代表が東京、もとい札幌のロードでどれだけの結果を残すかにかかっているだろう。


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