「わすれない」と「備える」こと-共に生きる社会へ踏み出す
映画「星に語りて」の企画を担当した藤井克徳氏に聞く
尾崎 洋二のコメント
1-要支援者にっとって避難場所は、そこに居続けることが困難な場所である、場合によっては避難生活が第2の被災なる、という共通認識が一般の方々や、行政の職員の方々に必要と感じました。
2-個人情報の保護が優先され、支援が届かないという本末転倒の現状という指摘は重要です。
3-災害被害のなかに人災的な部分があるとすれば、その部分は防げるはずなので、今後人災部分を乗り越える課題として全国的にその都度発信していく必要があると思いました。
------------以下 聖教新聞4月4日2019年 要点抜粋箇条書き -----------------
Q1-映画の製作に当たっては、どんな思いがあたのでしょうか?また実話に基づいたドラマとされたのはなぜですか?
A1-被災地で障害者の死亡率が全住民の死亡率の2倍に上った現実があります。この事実を忘れず、備えること、それが主題となっています。
A2-映画としては実写に基づくドキュメンタリーという方法も考えられましたが、被災した障害者の心情を察すれば、難しいと思いました。ただ、ドラマ化しても、特別な主役は置かず、全出演者が主役になる群集劇を目指しました。
Q2-前半には避難所から”障害者が消えた”という驚きの事実が描かれます。
A1-この事実は、障害者にとって避難所は、そこに居続けることが困難な場所であることを表しています。中略
加えて、環境の変化に弱い障害者はパニックを起こすことも少なくありません。障害者にとって、避難所生活が”第2の被災”になっているのです。
その結果、壊れかけた自宅に戻ったり、車の中で寝泊まりする状況が生まれました。こうした状況は熊本でも繰り返されています。
Q3-障害者団体が連携し、被災地での支援が実現していくなか、行政も動かす様子が映しだされてます。
A1-実際、障害者団体で対策本部を立ち上げ、岩手、宮城、福島の各県に現地対策本部を設け、延べ1万人余の人員を派遣しました。中略 この活動の結果、南相馬市、陸前高田市では障害者の情報開示を特例として認めることになりました。
法律によって個人情報は保護されていますが、最も優先すべきは命を守ることです。
情報の保護が優先され、支援が届かないのであれば、本末転倒です。
命を守るという目的があれば、情報は開示されるべきではないでしょうか。
Q4-震災後、障害者自身がまちづくりに取り組む姿が印象的です。
A1-実際に、陸前高田市では、震災後、障害当時者を中心に委員会が設けられ、障害者政策を作り直す作業が始まりました。中略 市長が目指す「ノーマライゼーション」という言葉が必要のないまちづくりが始まっています。
2006年に国連で採択された「障害者権利条約」は、制定の過程で「私たち抜きに私たちのことを決めないで(Nothing about us without us)ということが繰り返し訴えられました。
Q5-災害時の犠牲者を減らす取り組みとして、今後必要なことは何でしょうか。
A1-災害が多発する日本で、地震や津波による犠牲者を避けることはできません。
しかし、それが2倍になるというのは天災だけではなく人災が重なる結果です。であれば、それは減らせるはずです。
A2-東日本大震災の調査データーからは、震災直後、障害者ら要支援者のもとに救援に駆け付けた多くは近隣住民だったことが分かっています。
これは、住民と障害者ら要支援者が日常的につながることで犠牲者は減らせることを意味しています。
A3-「分ける」発想とは別に、避難所の中に要支援者コーナーを設けることも必要なことかもしれません。中略
こうした「分けない」視点と障害者支援の拡充が今後大切になります。このことは災害の問題を考えながら、「共に生きる」という、あるべき地域づくりにもつながるのではないでしょうか。
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