エクストリーム四十代のかもめ日記

野球を中心に、体力気力に任せて無茶をしがちな日常を綴る暑苦しい活動記。

引退試合という幸福~マリンで流した涙を数えて~(前編)

2020-05-17 21:57:57 | プロ野球
プロ野球選手の引退試合を見に行くというのはいいものです。
その選手が引退試合をやってもらえるほど活躍し、愛されたと
いうことも大事。そして、その試合にファンがちゃんと見送りに
行けるということも大事。
生涯最愛の選手の引退試合がまともに開催されなかったうえに、
その試合に行くチャンスも与えられなかった私にとって、引退と
いう淋しい場面ではあっても、引退試合というのは幸せの最高の
形の一つだと思うのです。

私が人生で初めて引退試合・勇退試合に行ったのは、2009年、
ボビー・バレンタイン勇退と小宮山悟引退の試合でした。

2009年10月6日、千葉ロッテマリーンズ本拠地最終戦。
その日は退任するボビー・バレンタイン監督への感謝イベントと、
共にユニフォームを脱ぐ小宮山悟投手の引退セレモニーが
ありました。
本当は仕事がてんこもりでそれどころではなかったけれど、
無理して有給休暇にして仕事を必要最小限で切り上げ、SS席の
チケットを握り締めて、夫婦そろって海浜幕張に向かいました。
天気は涙雨…。まずは現地ホテルにチェックイン。セレモニーが
夜の何時までかかってもいいように、現地泊です。
それからスタジアムへ行き、水浸しになったバックネット裏の
1塁側寄りの座席に座り、ビニールポンチョを着込みました。
なお、小宮山引退記念グッズは試合開始前に売り切れていました。
試合はロッテが追いついて2-2のまま進み、8回2アウトから
ロッテが連打で3点を勝ち越して9回を迎えました。
9回、いつ小宮山が出てくるかという期待と緊張感にざわめく中、
2アウトまでをシコースキーが投げ、とうとう小宮山が最後の
アウトを取りに登場。
ボビーが自らマウンドで小宮山を待ち、ボールを手渡しました。
けれど、シコースキーが残したランナーが2塁に…。
タイムリーは許容として、ホームランが出ると一気に1点差…。
2発打たれたら同点…。だがそれはつまり、ここを抑えたら
小宮山にセーブがつくという場面でもあるのでした。
ここで小宮山がセーブを記録すると最年長セーブ記録達成です!!
最高のエンディングへの期待と、最悪のシナリオへの不安が
交錯する…。結末やいかに!?

初球をいきなりズガーンと飛ばすセギノール。
ノー! ソッコー被弾かああ!? 球場にほとばしる悲鳴!!
だが、深く守っていたライト・サブローがフェンス際でガッチリ
捕球。ゲームセット! 小宮山に最年長セーブ記録がついた!
小宮山、ベンチを出てきたボビーと抱き合う…。超泣き!!
そして始まる小宮山引退セレモニー。すばらしきかなSS席、
ほとんど真正面でセレモニーを見ることができた。SS席を選択
してチケットを手配してくれたダンナに感謝。
雨でビショビショ、ポンチョも貫通してあちこち服が湿っていて、
ポンチョの中には上着、ネックウォーマーと厚着して、厳しい
寒さに耐え続けました!

涙声で「コミー!」と連呼した後は、ボビーの退団セレモニー。
ありがとうボビー、あなたはロッテを暗黒から光り輝く世界へと
引き上げてくれた恩人です。
たどたどしい日本語で(スポーツ新聞各社は「流暢な」と書いて
いたが…苦笑)千葉ロッテを愛する詩を読むボビー。
「ライネンからハ、ボクハ、MARINESの、FAN、デス」
どうしてだ、いくら金になるからとはいえ、あんたはどうして
そんなに千葉を愛してくれるんだあ!と、千葉県民でもないのに
思っていました。もう、自分の顔を伝うしずくの、どれが涙で
どれが雨粒かわからないぜ…。

ボビーも小宮山も姿を消し、我々もホテルへと戻りました。
が……さっむ~~!! 体温下がりすぎ。慌てて湯船に湯を張り、
あったまって出たはずが、芯まで冷えすぎていてすぐまた体温が
下がる。それでまた湯船に浸かり、結局3度も入浴しました。
スポーツニュースをハシゴしたけど、日ハムが優勝を決めたので
(というか、ウチが楽天に勝った瞬間に優勝が決まった)、
ボビーと小宮山のセレモニーのことはテレビであまり取り上げて
もらえなかったのでした…。

1995年、ボビーがロッテを2位にした時の突然の熱狂。
ボビーが去った時の失望。
2004年にボビーが帰ってくると聞いて、「知っていたら、
私も成田に横断幕持って駆けつけたのに!」と叫んだあの日。
そして、2005年の歓喜の思い出と、明るく楽しそうな球団に
生まれ変わった今のチームの姿。
語り尽くせない、ボビーへの感謝の思いをこめて…、私のロッテ
ファンとしての一つの時代が終わった10月6日でした。

          *

そして、2014年はロッテ黄金期の正捕手・里崎智也の引退。

野球シーズン終了の頃にはいつも、「貯まったファンクラブの
ポイント使わなきゃ~」と騒ぐハメになるので、かなり早めに
「海浜幕張の定宿がバカ安で、日焼けしないナイター開催の土日」
を狙って9月28日(日)のナイターのチケットをポイントで
手に入れ、ホテルも取っておきました。
 
そうしたら、里崎智也の現役引退発表…。
引退試合は、なんと9月28日! チケットは狂乱の争奪戦に
なりましたが、その日のチケット、取ってあるよ…!!
しかも座席はライトスタンド。最後の応援、任せてくれ…!
外野席の客は事前に紙吹雪を作っていくよう告知がなされ、私も
指定された寸法に新聞紙や裏紙などを切って万全に支度しました。
 
そして当日、試合開始18時なのに昼前に千葉マリンに着いたら、
チケットの引き換えは14時からで、ホテルのチェックインも
14時…。それで、里崎引退記念グッズ販売の行列の後ろにつき、
2時間並びました。店に入れた時点で、里崎引退グッズは半分
くらいの品が完売。残っていたのでTシャツを2種買いました。
いったん駅前に戻ってホテルにチェックイン。
ダンナと合流して17時にホテルからまたマリンへと出発。
ライトスタンドの指定席につき、カバンから紙ふぶきを出して、
撒きやすいよう袋の中で揉んでスタンバイしました。

スタメン発表――「1番、DH、里崎」に大歓声。
もう泣きそうになる私。いや泣いたかも。
2005年も、2010年も、ロッテの栄光の場には貴方がいた。
第1回WBC、まだ日本中が「なんなの、その大会」でしか
なかった頃、日本を栄光に導いてくれたのも貴方だった。
里崎智也、私史上最高の捕手…
でも、里崎の2打席を見て、あきらめはつきました。里崎らしく
プロの打席に立つことはもうできないんだなと思いました。
試合途中で、応援団が箱にギッシリ入った大量の紙ふぶきを
各列に置いていきます。作りすぎだよ、逆に大丈夫か…と、
思った予想は当たります。

試合は勝ち、セレモニーはめちゃ泣き。タオルを口に当てて
おうおう嗚咽していました。
でも、この現場で、サトのいる空間で泣ける幸福よ。
そして「応援歌が流れたら、そのタイミングで紙ふぶきを」と
応援団から指示があり、とうとうその時がやってきました。
ひやーーーこりゃすごい。
前が全く見えない大量の紙ふぶき。後ろからも新聞紙の塊が
投げつけられて背中にじゃんじゃん打撃。
でも自分の袋からも撒く! 撒く!
里崎が全然見えない、紙ふぶきが多すぎる!
でも、この日にライトスタンドに席を占めることを許された
我々の、これがロッテファンとしての光栄なる務め。
手持ちがなくなっても、足下は膝まで紙ふぶきで埋まって
いるから、足下から拾っていくらでも撒き散らす。
「あ、サト、もうあっち行ってるよ!」
紙ふぶきに視界が奪われ、我々が姿を見られないなんて
皮肉だけど、でも最後に里崎にもらう側でなく与える側に
なれる幸福。
ロッテファンのドすげえ紙ふぶきが、歴史に残りますように!
後でネット動画で見たら、画面がぼやけるほど超絶大量の
紙ふぶきで笑っちゃいました。

終わった、それ清掃だ~! …と、取り掛かったらさあ大変。
掃除にも使おうと思っていた紙ふぶきを入れてきた袋がない!
周囲からも「○○柄の袋を見つけたら知らせてくださーい」
「タオル、これどなたのですか~」「あっ、私のバッグも
ないよ~!」と次々に悲鳴。…みんな、足下の紙ふぶきを
掬っては投げ続けて、いっしょくたにさまざまな持ち物を
投げてしまったのでした。
大量の紙ふぶきを片付けながら、物が発掘されては持ち主に
返されていきます。その騒動の中、「これから里崎選手の
ライブが開催されますので、皆さん球場の外のステージに
お集まりください」のアナウンス。ずる~い、我々外野席組、
まだこれ当分掃除だよ~。
でも「だったらライブ行く」と出て行く人はいませんでした。
全員が全力で紙ふぶき掃除を続けていました。
 
ライトスタンドが片付いても、次はグラウンド!
グラウンドも紙ふぶきが散りに散っていて、掃除は終わら
ない。里崎のライブはビジョンに映してくれるということで、
それを見るしかない。任務が優先だ!
なだれを打ってグラウンドへ移っていくライトスタンドの
面々。完全に「スタッフ」で、素晴らしいなと思いました。
グラウンドもほぼ掃除が済んだ頃、やっと里崎のライブが
始まりました。最初に「今、球場内を掃除してくれている
外野席の方々、ありがとう」って言ってくれたから、多分、
清掃終了を待って始めてくれたんだと思います。

そしてグラウンドに体操座りしてサトのライブ(笑)を
堪能。我々や皆の片隅に置かれたゴミ袋を応援団らしき人が
見つけて「回収します」と集めていきます。ライブ中も、
ライトスタンドやグラウンドのゴミ袋をひたすら球場外へ
運び続ける応援団に頭が下がりました。
里崎がライブを「終電までには終わります」って言ってた
けど(実際はそこまで遅くなかったけど)、やっぱり現地泊
最高だ~。でも、月曜はホテルから出勤するんだけど。
 
ライブも終わり、本当に里崎の姿が球場から消えて…
私とダンナはホテルへ撤収。
もう、やりきったから、笑顔でね!
ボビーの再来日した2004年から里崎の引退の2014年
まで11年、本当に楽しかった。
里崎とともにボビーの時代は本当に終わってしまったんだな
と感じつつ、次の魔法使いの降臨を待って眠りにつこうと
思いました。

また死ぬほど長くなっちゃうから、いったんこれで前編として
おきます。このあとサブロー、井口、岡田、福浦と続くので…。
よく毎回、引退試合のチケットとれたな!
いや、そこにはからくりがあるのですが…そのへんは次回に。