「餅」は民俗学でいうハレの日(非日常、とくに神祭など祝いの日)の食べ物で、稲作農耕の食文化の一つとして伝えられました。 古い日本では「モチヒ」と言い、「餅」は糯もち米(粘りの強い米)や黐もち(ヒエなどをねって粘りをだしたもの)、「ヒ=飯」は穀物を煮たり蒸かしたりした食べ物のことで、その二つの単語を合わせた言葉です。 また、「餅」という言葉の由来は、「モチヒ」を省略したものや、搗いた餅を「満月」(現在の鏡餅)のように形作ったからとも言われます。 漢語の「餅へい」は小麦粉をこねて丸く平たく焼いた食品のことですが、日本では独自に「もち米などを蒸して搗いた食品」に限定しています。 その餅を神祭や通過儀礼の食品としたのは稲霊信仰によるもので、餅を食べることで神の霊力を体内に迎え、生命力の再生と補強を願ったといいます。 また、年間で最も重要な神祭のお正月を年玉(年魂)と言い、昔は家族や縁の人に餅を配る風習が各地にあり、戦後の食糧難時代にも搗きたての餅を近所に配り歩く家庭が少なくありませんでした。 1970年代以降、日本では食生活や住居様式の変化などから、都市では自宅で餅を搗く風景はほとんど見られなくなりましが、保育所や幼稚園の餅つき体験、商店街や町内会のイベント、各種記念行事などの祝い事には、今なお餅つきが盛んに行われています。
ちなみに、年末の12月29日は「苦を搗(つ)く」音韻から九日餅(くんちもち)と呼び、年の暮れの数日間のうちその日だけは餅をついたり、購入を避けたりする風習がある一方で、二九を音韻からフク(福)と読み29日を迎える地域もあるそうです。
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