kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

シチリアーノ 裏切りの美学

2020年12月25日 | ★★☆☆☆
1980年代、シチリアのコーサ・ノストラを裏切り、裁判で証言した組織の大物ブシェッタを描く実録ドラマ。

パレルモでの抗争の激化が予想され、身の危険を感じたブシェッタはブラジルに逃亡し、豪勢な生活を送ってたが、パレルモでは親族や仲間が100人単位で殺害されていた。
やがてブラジルで官憲の手にとらえられたブシェッタはイタリアに送還され、実力派判事に協力することになる。

ここからコーサ・ノストラを一掃していく裁判劇になるのかと思いきや、実はil Traitor(裏切り者)のタイトルどおり、裁判ドラマより裏切者となった一人の男の半生が描かれる。

もちろん映画の半分は裁判シーンなのだが、起訴案件の全体像が分からない上、登場人物も多い。出廷者目線でドラマが進むから、どんな捜査が進展しているかも分からない。おまけにイタリアの司法制度が分からないから、どの局面での証言かも分からない。(法廷に檻があったりとなかなか興味深い。)

分からないことづくしなので、正直ドラマに乗れない。現実はこうしたものなのだろうが、そうやって思うと「グッド・フェローズ」みたいに多くの事件や関係者を整理して本質を分かりやすく語るのは、ハリウッドの圧倒的な力量だな。

また、主人公ブシェッタが裏切者になった理由として、今のコーサ・ノストラのやり方に抵抗感を感じたと語るのだが、身内の殺害以外にそのやり方が具体的に描かれないので、彼の信念がワタシには見えてこない。

裁判はいつの間にかフィナーレを迎え、ブシェッタもアメリカに移住したり、またイタリアに戻ったりと、完全に裏切者となったブシェッタの生涯を映画は追いかけることになる。

事前の予想以上に淡々とした映画でひと頃のにぎやかな犯罪組織映画を見慣れたものとしては、いささか食い足りなかったかな。






題名:シチリアーノ 裏切りの美学
原題:Il TRAITOR
監督:マルコ・ベロッキオ
出演:ピエル・フランチェスコ・ファヴィーノ、ルイジ・ロ・カ~ショ

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