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kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

わたしに会うまでの1600キロ

2015年10月04日 | 年間ベスト3
日時:10月4日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:B5版820円。

リース・ウィザースプーンって、最近の活躍作こそ観ていないが、割と早くから意識してきた女優さん。トンガリあごが印象的なのだが、ウチの奥さんには「ウィレム・デフォーの女版」と映るらしい。
よって、本作も「リースが幻のタスマニアデビルを探し求めて、1600キロを旅する映画」と認識されているかも知れない。(んな訳がない。)

さて、ワタシも山歩きが好きなのだが、何年も続けていると、「より高く、より遠く、より長く」とどこぞの宰相みたいなことを思うようになってくる。最近はどんどん歩く距離が伸びてきて、ロングトレイルにも興味が出だしてきた。果てしない荒野とか寂寥とした平原とか出てくる映画はそれだけでポイントが高いし、普通の映画でも背景の景色を歩いたら何時間かかるかなんて考えている。

よって、この映画は期待度が高かった。母を失い、自分を見直すために、リースがカリフォルニアからオレゴンまで砂漠と森林と雪山を3ヶ月かけて歩くのだ。何と憧れることか。(あまりにもベタな邦題なので、ワタシなら原題を生かして「ワイルド・ロング・トレイル」とするところだ。)

開幕早々、不注意でブーツを落としてしまう「山あるある」をしでかしてしまうリース。最初の頃はいかにも素人的なダメダメを連発してしまうリース。山好きにとっては自虐ネタとも言える内容で噴き出さずにはいられない。あの荒野で帽子をかぶらないなんて、とても考えられないが、そこは映画と言うことで目をつむろう。

1600キロを踏破する過程でリースは半生を振り返るのだが、この描写がとてもよく分かる。ワタシが山歩きをする時にはほとんど一人で、他人に会うことは少ない。たぶん山歩き1回あたりの平均出会い人数は0.3人くらいだ。3回に2回は誰にも合わない。(途中で何かあったら、おそらくどうにもならない「127時間」事態になる。)
ひとりぼっちで歩いている最中は、周囲の状況や自然に気を配りながらも、結構、あんな風に自分の半生を考え直していることが多い。何かとイヤなことも思い出すのだが、最後に目的地にたどりついた時にはそんなこともリセットされている。

今年の8月、炎天下、這う這うの体でたどり着いた山頂でお決まりのウィスキーを一口すすると、足元ではフンコロガシが一所懸命フンを転がしていたことがあった。何だか、フラフラの自分とフンコロガシの懸命さの取り合わせが無性におかしくて、一人でケタケタと笑いだしたことがあったが、この映画で主人公が見せる感情の発露なんか、ものすごくよく分かる。

効果音の使い方も印象的で、山にいるとあんな風にしか音が聞こえない。自然の営みだけでなく、遠くに聞こえるエンジン音とかもリアルだ。劇伴がほとんど排除され、生録の効果音だけが聞こえているあたり、70年代の映画っぽくていいなあ。というか、この映画そのものが70年代のロードムービーなんですけどね。出会う連中がほどよく個性的で、みんないい感じなんだよ。

音楽の使い方も良くて、「変な歌を聴くと頭から離れない」というぼやきもその通り。たぶん、これから「コンドルが飛んでいく」が頭から離れない。日本では別の面で有名な曲なだけに、ベタすぎるこの選曲は止めて欲しかった。(笑)まあ、ワタシは山で力尽きそうになるとマカロニ・ウエスタンか第三帝国楽曲を聴いて、アドレナリンを注入するのだが。

元々、セクシーさには縁の無いリースだが、化粧っけなしで余計なものがそぎ落とされた顔立ちは迫力があって、別の意味で色気を感じてしまう。トレイル前の自暴自棄ぶりとトレイルを通してたくましくなった後とのコントラストが素晴らしい。

これから山歩きをしたら、毎回、この映画を思い出すことになるだろうし、いつかはしてみたいこんな旅への憧憬を募らせていくんだろうな。山歩きをしている時は苦しくて仕方ないくせに、下山するとさみしくて、次の行き先を考えてしまうんだから。

ところで、この映画はR-15指定。主人公がドラッグをやって、行きずりのセックスに溺れるからだと思うが、それでこの映画の客足が鈍るとしたら、残念なこった。






題名:わたしに会うまでの1600キロ
原題:Wild
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン
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みんなのアムステルダム国立美術館へ

2015年04月11日 | 年間ベスト3
日時:4月11日
映画館:シネツイン
パンフレット:B5版700円

期せずして、先日の「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」に引き続き、美術館ドキュメンタリー映画2連発。当日、「バードマン」とどちらにするか悩んだが、ここで見逃してしまうと二度と見れないかも知れないのでこちらにしたのが正解。なかなか面白いぞ。

【以下、ネタバレ(?)あり】

2003年、レンブラントの「夜警」を所蔵するアムステルダム国立美術館が5年計画での改築を決定、収蔵品を保管庫に移動させるところから映画はスタート。工事もスタートするが、コンペで決定した改築プランを巡ってサイクリストの“心ある”市民団体が異議を唱え(アムステルダムはサイクリストが多く、美術館のロビーも自転車で通ることができる。)、市議会もそれに賛同して工事はいきなりストップ。

一方、改築にあわせて展示の充実を図り、ヨーロッパ美術担当の主任学芸員はオークションで新収蔵品の獲得を目指すが落札できず、アジア美術担当の主任学芸員は近畿の某寺にある金剛力士像の入手に奔走する。

美術館は建築家にコンペ案を再考させるが、続く混乱にあいそを尽かした館長が辞任。

新館長が着任して一旦は終息するかに見えた改築プラン問題が再燃。相次ぐプラン変更に建築家も「うんざりだ」と公言する。それでも何とか工事は再開するが、今度は内装工事で意見が衝突してしまう。著名な内装デザイナー事務所も露骨に嫌な顔をする。

そんな中、日本から到着した金剛力士像や仏像を主任学芸員は涙目で出迎える。

5年の予定が10年の工事になり、予算も大幅にオーバーしたものの改築工事も終え、開館日が迫るが、6000点の展示品を55日で展示することに。1日100点以上!
そして、いよいよリニューアル・オープン・・・。

とまあ、近いところで仕事をしているものにとっては悪夢の連続。新旧館長など改築を巡る市民団体との対立を「道路ありきで決めてどうする。」とか「民主主義のマッドハウスだ」とカメラの前で公言する。好きこのんでそんな映画を見るオレはマゾか。
しかし、その悪夢の連続が他人事なので面白くて仕方がない。

改めて言うまでもなく、「ナショナル・ギャラリー」とはアプローチが全く違う。同じテーマの映画を立て続けに観ると、その違いが鮮明に分かって楽しい。「ナショナル・ギャラリー」は美術品と美術館を巡る人々と活動を淡々と捉えていたが、こちらの主役は改築そのもので、完全にドラマチックなストーリー仕立て。

10年分のフッテージがあるのだから、多くの関係者を取材しているのだろうが、主に取り上げる人物を数人に絞り込んでいるし、カット割りなどを見ていると、編集し直したり、後撮りした映像もありそうな気がする。(逆に美術品を巡る話は少なく、この映画を観終わっても「美術館へ行こう」とはならない。)

さらにこの映画のメイキング映像も見たいなあ。当初、5年間の普通の記録映像だったものが、10年越しで大混乱のドラマを追いかけることになるだから、予算やスタッフの確保などカメラのこちら側でも色々と混乱があったに違いない。「ハート・オブ・アムステルダム 国立美術館の黙示録」なんてね。まあ、そのおかげで普通のドキュメンタリー映像で収束してしまうものが、全然違うドラマになったわけだが。

ところで、金剛力士像確保のために、大阪駅あたりから単線の電車とタクシーを乗り継いで行く山奥の廃寺は鳥取県にあるらしい。







題名:みんなのアムステルダム国立美術館へ
原題:The New Rijksmuseum
監督:ウケ・ホーヘンダイク
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2014年ベスト

2014年12月30日 | 年間ベスト3
映画好きなら毎年実施する今年のベスト映画

2014年もそこそこの本数を見ましたが、その中でベスト映画は・・・

ゴジラ
いくつになっても怪獣はいい!

ドン・ジョン
何かいい味わいの作品でした。ジュリアン・ムーアが好きですが、「マップ・トゥ・スターズ」を観るかどうか思案中。

ゴーン・ガール
何か後味の悪い作品ですが、語らずにはいられないという。(笑)

他は
フューリー」(いくつになっても戦車はいい!)
インターステラー」(いくつになってもアン・ハサウェイはいい!)

ワーストは
荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
もう敢えて語らないでおきます。

さて、来年は「シン・シティ」「マッドマックス」、リメイク版「日本のいちばん長い日」、オリジナル版「日本のいちばん長い日」ほか話題作が目白押しな上、「007」新作は遂に「スペクター」!!
楽しみな一年になりそうです。
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ゴーン・ガール

2014年12月20日 | 年間ベスト3
日時:12月18日
映画館:八丁座
パンフレット:A4版変形720円

映画好きを公言していると、飲み屋なんかでよくされる質問の1つが「今のオススメは何ですか?」
今なら間違いなく本作を推す。
好きとか面白いとかではなく、とにかく観ていないと何も話せない映画なのだ。

いつもならここで【以下ネタばれあり】と書くところだが、わずかな文字面を一瞬見ただけでも映画の面白さが一気に損なわれるであろうから、今回の書き込みは最低限にとどめ、何週間かしてから追記します。ああ、なんか楽。(笑)

幸せに見えた結婚生活を送っていたベン・アフレックとロザムンド・パイク夫妻。5周年の結婚記念日に犯罪らしき痕跡を残して妻が失踪、夫は警察に届け、捜索が開始されるが、夫婦間の不仲と夫の秘密が徐々に明らかになり、夫は第一容疑者に。真相はいかに。

よくありそうなストーリーなのだが、そのまま進まないのはこちらも折込済みで、「主人公(たち)の犯行もしくは自作自演」「第三者による犯行」「夢オチ・妄想系」のいずれかだろうと当たりをつけてみる。

毎年の結婚記念日に謎かけゲームをして、それが伏線となるあたり、同じフィンチャー監督の「ゲーム」を思い起こさせるのだが、あのトンデモな展開に一抹の不安が。

ストーリーの話題はここまでにするとして、そのキャスティングも良い。
ベン・アフレックの渾身のダメ男でくの坊演技のおかげで、怪しさがアップしているし、ロザムンド・パイクの美貌と良妻ぶり、そして表情のない眼差しゆえに、お約束事として勘ぐりたくなる。

その他の登場人物も個性的でイキイキとしており、特にめがねのキャリー・クーンが愛くるしい。他にも女刑事とか○○とか○○とか特に女性陣の顔ぶれが印象的。知った顔が少ないので、配役から来る先入観もない。

カット割りが早く、開幕当初はちょっとイラつくが、ストーリーの面白さにそういったこともやがて気にならなくなる。
80年代を彷彿とさせる音楽も良い。

クリスマスや年末年始のハッピーな雰囲気で観る映画じゃないけど、オチをしゃべりたいから、みんな早く観て。(笑)






題名:ゴーン・ガール
原題:Gone Girl
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク
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ゴジラ

2014年08月19日 | 年間ベスト3
日時:8月3日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版800円。超充実の内容。

この作品の公開にあわせ、1954年版初代「ゴジラ」がデジタルリマスターで上映され、運よくその試写会が当たった。すると来場者全プレとして過去24作品のクリアファイルをもらったのだが、これを家に持ち帰ったところ・・・

ウチの奥さん「これ観たなあ、これも観た、これも観た・・・」

と平成&ミレニアムゴジラはウチの奥さんの方がよっぽど観ていたことが発覚。
ということで、今回の「ゴジラ」は久しぶりに家族3人で鑑賞となった。

どう書いても未見の人にはネタばれになるような映画なのだが、結論から言えば、大傑作怪獣映画。
何十年も思い焦がれてきた「こういう怪獣映画が観たかった」と唸るような作品。1分たりとも息を抜く暇がない。怪獣が激突することに論理的な裏づけをしているから、ある意味、人間パートがなくてもドラマが成立したってところがすごい。

ワタシは人の目視線の怪獣映画、戦争映画の延長としての怪獣映画が大好きなのだが、そこの押さえ方が素晴らしい。遠くでかすかに起きる大災害、目の前でひしゃげる建造物、コントロールを失い墜落するジェット戦闘機、金門橋で大混乱に陥る米軍戦車、逃げまどう市民・・・最近、あまりお目にかかれない不安をかきたてるような無力感にあふれる映像がいい。

見えそうで見えない怪獣というのもいいし、ここぞで吼え、ここぞで火を噴くゴジラの溜めのカッコいいこと。結局、ゴジラは人間の味方でも敵でもなく、大自然の一部であるというリアルな存在感。

日ごろ、東宝ゴジラシリーズに辛口なウチの奥さんもなかなかの高評価。

早くも次作が楽しみなのだが、キングギドラにモスラ、ラドンも出るという。今回、ナゾの敵役がいたから面白くなったところもあるが、既知の怪獣の登場でどんな映画になるのか楽しみでもあり、不安でもあり。

ところで、怪獣ギャレス監督が関わったドキュメンタリー「HIROSHIMA」だが、ウチの職場の広島フィルム・コミッション担当に聞いたら、広島ロケで関与したという。
ギャレスがいたかどうかはわからないのだが、もしかしたらギャレスがウチの事務所に来ていたかも知れないと思うと、感慨深いなあ。
ちなみにパンフレットでは広島の祈念館を訪れたと書かれているが、これは広島平和記念資料館の間違いだろう。国立広島原爆死没者追悼平和祈念館というのもあるんだけどね。(←観光の仕事をしているもののこだわり)






題名:ゴジラ
原題:GODZILLA
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:アーロン・ジョンソン、渡辺謙
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ドン・ジョン

2014年07月19日 | 年間ベスト3
日時:7月17日
映画館:シネツイン本通り
パンフレット:B5版720円。インタビューが充実。

今、気になる男優といえばジョシュ・ブローリンとミヒャエル・ファスベンダー、そしてジョセフ・ゴードン=レヴィットのような気がする。

そのジョセフ・ゴードン=レヴィットの初監督作品。彼自身が演じる主人公は女にモテモテで、夜毎にクラブに繰り出しては好みの美女をお持ち帰り。人は彼を「ドン・ファン」をもじって、ドン・ジョンと呼ぶ。その一方で週末には実家に帰って家族と食事、教会にも真面目に通い、その週のエロ行為を懺悔する。

リア充の彼の趣味はポルノ(劇中では「ポルノ」と言っているが、日本では語義が少し違うので、こだわりとして、以下「エロ動画」と言います。)鑑賞。パソコンを前に自家発電にも余念がない。

そんな彼の前に絶世の美女スカーレット・ヨハンソンが現われ、一目ぼれ。彼女とのデートとエロ動画鑑賞との際どい二股生活が始まる。

このエロ動画鑑賞に対する薀蓄とこだわりが男の本質とも言うべきもので、ついつい笑ってしまうのだが、女性客の多い劇場はどうも温度が低く、笑い声がしない。ひょっとして、男の生々しい本音に劇場内はドン引き、ワタシは劇場の中で浮いているのか?そんなことを心配しだすと笑うのも気を使うじゃないか。

ヨハンソンに勧められて、夜学に通うようになった彼は、オバサン同級生ジュリアン・ムーアと親しくなる。
ワタシ好みのジュリアン・ムーアですよ!出ているとは知っていたが、どちらかの親役かと思っていたよ。
ジュリアン・ムーアといえば、この展開なら「ブーギーナイツ」のポルノ女優役を思い出さずにはいられない。(当然、パンフレットのインタビューでも言及されている。)

彼女はある出来事をきっかけに彼に70年代の洋ピン映画のDVDを手渡す。「私が出演した作品よ。」とでも言ったら、どうしようかと思ったが、さすがにそれはなかった。(笑)

やがて、ジュリアン・ムーアが彼の愛の伝道師役を果たすことになる。いいなあ、この展開。昔のソフトコアものみたいだ。(笑)

ストーリー自体はそんなに目新しいものでも、今さらスリリングなものでもないが(まあ、似たような話をよく聞くから。)、リア充に見えて実は単調な毎日の繰り返しは固定カメラで撮影し、新しい恋や生活の展開は長まわしや手持ちカメラなど凝った撮影とするあたり、監督としてのこだわりが感じられるなあ。ラストの新生活の幕開けも爽やかでいい感じ。

そういえば、ジョセフ・ゴードン=レヴィットって、我が青春のエミリオ・エステベスに似た雰囲気があるんだよな。童顔っぽい顔立ちでちょっと繊細な役柄、監督業への取り組みとか何となく通じるものがあるぞ。

ところで、スカーレット・ヨハンソンを彼女にするか、ジュリアン・ムーアと食事するか、どちらか選べるとしたら、ワタシは一瞬の逡巡もなく後者だな。(笑)







題名:ドン・ジョン
原題:DON JOHN
監督:ジョセフ・ゴードン=レヴィット
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、スカーレット・ヨハンソン、ジュリアン・ムーア
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2013年ベスト

2013年12月30日 | 年間ベスト3
毎年年末にアップしているその年のベスト映画。今年は引越しがあったため、1ヶ月ちかい空白期間があり、ちょっと少なめです。

さて、今年のベスト映画3本

ジャンゴ/繋がれざる者
始発の新幹線で名古屋まで観に行って、そのまま「第13回マカロニ大会」という濃厚さが一生ものです。(笑)

ゼロ・グラビティ
完成度の高さがズバ抜けています。

舟を編む
普通に感動して泣きました。

あと、「アルゴ」(出ていないからね!)、「テッド」(80年代ネタに爆笑!)、「パシフィック・リム」(怪獣対巨大ロボット!これだけで充分(笑))、「ローンレンジャー」(監督のダークサイドが炸裂(笑))なんかも良かったです。今年はジャンル映画が多くて、収穫の多い一年でした。

ワーストは
ワールド・ウォーZ」」
ゾンビ作って魂入れず・・・

来年はラインナップがまだ見えていませんが、新生「ゴジラ」なんか楽しみですね。毎年、新年には50本以上観たい!と思うのですが・・・
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ゼロ・グラビティ

2013年12月14日 | 年間ベスト3
日時:12月13日
映画館:バルト11
パンフレット:A4横版800円。味気ないビジュアル(当たり前だ)とインタビューが充実。

ワタシは作り手の思いが具現化したような、ワンシーンワンショットの長回しが好きだ。「史上最大の作戦」の自由フランス軍の戦いとか「ハードボイルド」のエレベーター移動を交えた銃撃戦とか「スネークアイズ」のオープニングとかはいつも引き合いに出している。

そんな中でも近年、映画の内容を併せて特に素晴らしかったのが、その年のベスト映画にも選んだ「トゥモロー・ワールド」の市街戦シーン。この監督アルフォンソ・キュアロン(眼鏡少年の冒険譚?何それ?)の宇宙を舞台にした無重力映画と言うなら、期待が高まらないわけがない。

しかも劇場で観た予告編にビックリ!これは一刻も早く観なくては!!しかし、広島で通常の3Dを観るべきか、はたまた正月帰省時に奈良でIMAX3Dを観るべきか・・・・

「両方観たらいいんじゃないですか。」とは友人の弁。

ストーリーは一言「無重力の宇宙空間で事故」というシンプルなものなのだが、とにかく、この映像がリアルで凄いの一言に尽きる。無重力空間の描写も凄ければ、慣性の法則でえんえんと体が回転し続ける描写も凄い。サンドラ・ブロックが本当に宇宙でロケして、隣にカメラがあったのではないかと思わせるほど。

CGが多用された映画ではあまりにディテールが鮮明すぎて、ウソくさく見えることが多いのだが、空気のない宇宙空間が舞台とあってはハッキリクッキリした画面も当然のこととして受け入れることができる。

ポポル・ヴーを思わせる神経を逆撫でするようなスティーブン・プライスの音楽も効果的。今、久しぶりにサントラを買う気になっている。

キャスティングもサンドラ・ブロックが一人で大奮闘。適度に知的で、適度にアクティブで、適度にダメなところがマーキュリーセブンやアポロ計画の頃のパーフェクトさと違い、21世紀の宇宙飛行士っぽい。最後に助かった彼女を見て、「よく頑張った!!」と完全に感情移入させてしまうところが、さらに凄いところ。

「プライベート・ライアン」を観たとき、「これから映像表現が劇的に変わる。」と実感したものだが、同じような驚きを覚えた。本当に映画館で視界いっぱいに観るべき映画。前方の観客が視界に入るだけで気を散らせてしまうくらい。あまりにも画面にのめりこみすぎて、長回しに気付かなかったシーンも多々ありそう。正月、奈良のIMAXで観初めかな。

ところで、ほとんど2名で展開するこのドラマ、実は3人目のキャストが管制官役のエド・ハリス。「ライト・スタッフ」「アポロ13」と宇宙映画に足跡を残し続けてきたが、声だけの登場なので吹き替えでは彼と分からないのが残念。







題名:ゼロ・グラビティ
原題:Gravity
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー

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舟を編む

2013年04月20日 | 年間ベスト3
日時:4月16日
映画館:シネツイン本通り
パンフレット:900円と割高なのだが、実際の辞書サイズで、一部に辞書用専門紙を使っているなど凝った凝った作り。言うまでもなく、こういったのは大好き。

私はものを作るのが好きだ。
私は印刷物を作るのが好きだ。
私は手を動かしているのが大好きだ。

原稿を書くのが好きだ。
言葉遊びが好きだ。
パロディが好きだ。
推敲するのが好きだ。

紙が好きだ。
切断するのが好きだ。
切り貼りするのが好きだ。

私はリスト作りが好きだ。
無意味とも思える文字の山を再度整列させるのは、ワクワクする。

私は校正が好きだ。
印刷所へ出張校正するときの緊張感などたまらない。

私は印刷物の納品が好きだ。
納品した途端、誤植が見つかったときなど自己嫌悪の極みだ。

私は印刷物を処分するのが好きだ。
無駄に作成されて廃棄されていく印刷物を見ると哀れで泣きそうになる。

「舟を編む」の静かさとは対極で書き始めたのだが、知人から面白いよと薦められて原作を読んでいた本作。辞書というか印刷物を巡る世界観がたまらなくて、ワタシにしては珍しく早々に劇場に足を運んだ。

辞書作りという世の中の人にはあまりなじみのない世界だが、手順を追って考えれば至極当然の作業を淡々と膨大な時間をかけて行うさまをエンターテイメントとしてしっかりと描き出している。

2時間超えの上映時間が心配だったが、原作のエピソードを過不足なく盛り込んで、全然飽きさせないし、松田龍平はともかく、不安のあった宮崎あおいとオダギリジョーも違和感がない。静かで派手さのない演出が心地よい。

ワタシは小さい頃から物を書いたりレイアウト作業をしたりするのが大好きで、出版社に就職したいと考えていたこともあるが、結局、今の職場で印刷物の製作に文字通り一から十まで携わっているわけだから、ある意味夢がかなったことになる。(もちろん、マカロニ大会も(笑))

実体験として印刷物を作る過程は苦あれば楽あり、楽あれば苦ありなだけにこの映画は全編、涙なしに見ることはできなかった。セリフの1つ1つ、些末なデティールすべてに納得できる。

ワタシは観光地図づくりに携わっているが、たった1枚ものの印刷物でも、ブレない基準をもって作業を進めることは難しい。それだけに明確な1つの方針で10年以上作業を続けることなど、飽きっぽく臨機応変すぎるワタシには不可能だ。そこに静かな執念を感じさせてくれる。(辞書一冊を5校など信じられない作業量!)

辞書専用の紙作りのシーンも発注者のこだわりとメーカー側のプライドが発揮されるいい場面。本物のプロと仕事すると、本当にあんな感じで気持ちいいのだ。

最後の「明日から改訂作業だ。」というセリフが最高なのだが、恒常的な印刷物を作っているとごく当たり前、本当に翌日どころか校了した瞬間から次の改訂作業が始まっている。松本先生も分かっているだが、日々、生きている印刷物を作っている以上、終わりはない。改訂作業は永遠であり、だからこそ悔いは残るしあきらめもしなくてはならない。ワタシとしては最後の出版記念パーティーで終幕で、あとは余談みたいなものだった。

ところで、宮崎あおいの役どころが板前ということもあって、料理と食事のシーンがふんだんに展開される。酒好きの空腹時にはなかなかこたえるよ。






題名:舟を編む
監督:石井裕也
出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、小林薫、加藤剛
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ジャンゴ/繋がれざる者

2013年03月10日 | 年間ベスト3
日時:3月9日
映画館:ミッドランドスクエアシネマ(名古屋)
パンフレット:A4版変形横型800円。タテ閉じなので、極めて読みにくいが、監督・キャストのインタビューをはじめ、トリビア知識などテキスト的には充実の内容。デザインも凝っており、値段の割にお買い得。

クエンティン・タランティーノがマカロニ・ウエスタン(イタリア製西部劇)、しかも「Django」を撮るというだけで、マカロニ・ウエスタン好きのワタシは期待感たっぷりだった本作。3月1日公開予定だったが、奇しくも3月9日には年1回の全国のマカロニ・ウエスタンファンの集い(などと書くとカッコ良さげだが、実際にはマカロニバカなオタクが夜通し濃い濃いおしゃべりを続ける)「第13回マカロニ大会」が開催されることとなっていた。
>>第13回マカロニ大会

今回は本作のことで盛り上がるに違いないと、年休まで取る心づもりで準備していたのだが・・・なんと広島を含めた中国四国のロードショーは4月6日から!!!全国公開の映画で、こんなバカな話があるか!(何でもアカデミー賞を取ったため、大都市圏での公開劇場が増え、そのあおりを喰ったらしい。確かに劇場側も調整に大変だったようで、広島の映画館でも3月1日からの上映スケジュールが3日前くらいまで出なかった。)

すでに試写を観たマカロニ・ウエスタンファン(通称ガンマンもしくはマカロニ野郎)からは情報がチラホラ入りはじめ、監督の来日にあわせ各メディアでも取り上げられていく。何しろ朝の7時半から公共の電波で「ジャンゴ~」のテーマソングが聞こえるのだから、異常事態だ。事前情報は出来るだけシャットアウトしておかないと、前作「イングロリアス・バスターズ」を観たときにヒトラーが殺されるというオチを直前の直前で雑誌から得てしまった失態を繰り返すことになってしまう。スチール写真や予告編を見るのは最小限、買った雑誌も一切読まないという徹底ぶりなのに、きっとマカロニ大会では周りのガンマンどもからはその話題だらけだ。ワタシだけ会話から取り残されてしまうという危機感(被害妄想?)だけが募っていく。

名古屋で開催されるマカロニ大会は午後2時から。すでに公開されている名古屋で午前中に見てから大会に飛び込めば間に合うかも知れない!!そこで名古屋の友人に会場から近い劇場と上映時間を教えてもらった。名古屋駅近くで9:10~12:00の回があるではないか。始発の新幹線に乗れば8時20分頃には到着できる!

ということで、5時起床、5時半出発、6時の新幹線始発でジャンGO!!となった。何とムダなエネルギー。(しかも、実際にはマカロニ大会参加の興奮から4時に目が覚めた。:笑)

映画を観る話までで、すでに通常並の文字数になってしまったではないか。

【以下本題ですので、ネタばれアリ。】

土曜の朝一番の上映にも関わらず、劇場はそれなりの客数。隣は名古屋のマダム二人連れ。って、何か間違っていないかい?レディが連れ立ってみるような映画じゃないはずだぞ。(案の上、途中から口を手で覆いながら観ていた。)

オープニング、この映画の元ネタである「続・荒野の用心棒」のテーマソング「Django」が流れ、いきなりテンションは急上昇。タランティーノ映画なので、もちろんサントラは事前に購入して予習しているのだが、あの曲を大スクリーンで聴くことができるとやっぱり興奮する。(ちなみにワタシの事前の妄想映像では、同曲にあわせて「キル・ビル」や「イングロリアス・バスターズ」のように黒いバックにタイトル文字だけが流れるシンプルなものだった。それだけでも興奮したが。(笑))

当初、黒人奴隷のジャンゴと賞金稼ぎのキング・シュルツがどうやって知り合い、話を持っていくのか気になっていたが、分かりやすい展開で10分足らずで本題に突入。ただ、そうは言ってもタランティーノ脚本、やたらよく喋る。先日発売された「続・荒野の用心棒」ブルーレイ・ブックレットにライナーを書かせてもらい、その中でも本作に触れて「無駄トークが続くマカロニ・ウエスタンなど想像できない。」と書いたのだが、その通りの展開となっていく。最初の保安官殺しのシーンも延々と続くのだが、本家マカロニ・ウエスタンだったら、殺した後にチラッと手配書を見せて5分で終了だろうな。(笑)

この無駄トークと延々感がタランティーノ映画の醍醐味であり、そのため映画も2時間45分という長尺になっている。マカロニ大会でマカロニ野郎どもと話していると、やはりここが賛否両論、評価の分かれ目。本気ともギャグともつかない無駄トークがどう転がるのかという期待感、先が読めずいきなりバイオレス描写に展開するかもしれないという不安感が交差し、じりじりと維持される緊張感に、ワタシはこの上映時間も長くは感じられなかった。KKK団の話とか3つのくぼみの話とか、ストーリーのこの転がし方にもはや円熟味さえ感じるほどだ。(単なる慣れという説もある。(笑))

前半のジャンゴとキング・シュルツの関係は「夕陽のガンマン」のようでもあり、「怒りの荒野」のようでもある。主役がキング・シュルツではないかと思うくらい。徐々にストーリーの主軸がジャンゴと黒人奴隷の話に移っていくと、話にもどんどん重みが増してくる。マカロニばりの残酷描写もエスカレート・・・といっても、鞭打ちとか罪もない弱者を殺すなんてマカロニ・ウエスタンでは日常茶飯事で、日中の奥さま洋画劇場で放送されていましたけどね。(笑)

音楽はいつものように既存のサントラをつなげる手法なのだが、これまで全然違うジャンルの映画音楽を場面ごとに違和感なく充てこんでいたのに対し、今回の選曲は「続・荒野の用心棒」のサントラが中心であるため、新鮮味に乏しい。また、これまでは一曲全部ではなく、サビの部分だけ使うことが多かったが、今回は割と一曲全部使うことが多く、音楽の使い方が変化してきたかのようだ。ジャンゴが修行しながら賞金稼ぎの腕を磨くシーンは「怒りの荒野」を丸々使っているが、これはちょっとベタすぎ。(ちなみに「怒りの荒野」は「キル・ビル」でクレイジー88との決闘にもほんの一瞬、使われたと思う。ユマ・サーマンが飛び上がる場面。)

ジャンゴが妻を救出するために大大大銃撃戦が展開され、そこでハッピーエンディングかと思いきや、そこはタランティーノ。最後の最後のもうひとヒネリは評価が分かれるところだろうし、「黄金の棺」の使い方もこれまたベタすぎ。まあ、そこも好きなんだけど。

ジャンゴがピンプばりのファッションで登場し、「風来坊」のテーマでしめるエンディングは、ものすごく違和感があるのだが、これもそこまでのハードで重苦しい雰囲気を切り替えるための計算の上だと思う。「デス・プルーフ」も「イングロリアス・バスターズ」もラストの引き締め方みたいなものが独特だったもんな。

本作がマカロニ・ウエスタンかと問われれば、やはり全然別の映画だ。(特に映画の風景と顔が全然違う。)主人公や音楽はマカロニ・ウエスタンかも知れないし、マカロニ風の映画と言えばその通りなのだが、それ以上にタランティーノ映画だし、傑作であることには変わりないと思う。

さて、観終わった後のマカロニ大会では、予想どおり本作の話で盛り上がり、部外者から「毎年、そんな新しい話題があるのか?」と不思議がられるマカロニ大会に新風を吹き込んだのでした。頑張って観た甲斐があった。(笑)

ところで、一昼夜、ほぼ12時間に渡るマカロニ大会で精根尽き果てた翌朝のガンマンとの会話。
ガンマン:「ジャンゴ/繋がれざる者」もう1回でも観れますよね。
ワタシ:もちろん!
ガンマン:今日の午後から、また名古屋で観てから帰ってみてはどうですか?

ジャンゴ、マカロニ大会、ジャンゴの連打はさすがに死にます・・・。







題名:ジャンゴ/繋がれざる者
原題:DJANGO Unchained
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイ・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・デカプリオ、サミュエル・L・ジャクソン
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