やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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呪いアプリー58話

2012-06-25 07:32:14 | 小説
頭前はほとんど寝ることが出来なかった。

住田もそうなのだろう、台所で朝食を作っている。

居間から流れるTVの映像をぼーっとした目で眺めている。

布団を折り畳み着替えを済ませた。

台所に居る住田に声をかける。

その時、信じられないことを聞く。

『昨夜10時ごろ、兵庫県豊岡市竹野町の長原正一さんの遺体が、自宅から発見されました。殺害したのは正一さんの父親である、長原喜助さん58歳。殺害の動機はまだわかっていません。正一さんは祈祷師という仕事をされており、県外からも多数の信者がおられたとか」

『父親が子供を殺すというのは余程のことでしょうが、殺害方法がナタで頭を割ったということで、残虐な事件ですね』

『現場に高倉アナウンサーがいます。中継で繋ぎます』

頭前は呆然とTVを見ていた。

何時来たのか、住田も立ち尽くしている。

「なんということだ・・・」

「同じです。頭を遣られている。。。。もしかして、私と出合ったことで彼は・・・」

「仕方ないことだ。しかしあの男の力でも無理ということか・・・」

「もっと注意しなきゃならなかった」

「得体の知れないものだ。注意のしようもなかろう」

「自分も守れないかもしれない。。。彼はそう言いました。私が連れて来てるとも。だとしたら、なぜ我々が死なない。。。。変ですよね」

「それだけあいつの方が、真相に迫っていたのかもな。能力があるというのは・・・恐ろしいことだ」

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呪いアプリー57話

2012-06-24 22:25:26 | 小説
頭前の思惑ははずれ、楢先と言う名字は1件も無かった。

「もしかして、この土地で暮らしていないんじゃないか?一旦ここに来ただけで、違う場所に行ったとか」

「違う場所ですか・・・」

「そうだな・・・待てよ。九重桜と言ったよな。ここのえざくらって、奈良公園も有名だよな。もしかしてあの看護師が、勝手に常照皇寺だと思い込んだのかもしれない。」

「奈良公園ですか。。。行ってみますか?」

「今からだと夜の公園を徘徊することになる。とりあえず家に戻ろう。練り直しだ」

住田の家で、もう一度考え直す。

「とりあえず明日もう一度確認するが、今日の夜勤で下田というやつがいる。あいつに奈良公園近辺の病院に、楢先という先生がいないか調べさせる」

「いいんですか?」

「あぁいいさ。こう言う時に後輩は使わないとな」

「もしもし・・・・」

住田が電話をしている間に、頭前はもう一度京都の九重桜の周辺を調べた。

病院はすべて聞いてまわった。

住所も調べたが、該当も無い。

では他に何を知らべればいいのか。。。

もう一度、清浄師に聞いてみよう。

携帯を握りしめた。

20回近い呼び出し音が響く。

しかし清浄師は出なかった。

少し胸騒ぎがする。

「住田さん。清浄師に連絡がとれない」

「清浄師?もう寝たんじゃないのか」

「23時ですからね。。。でも親父さんぐらい出てもいいと思うのだけど」

「そうだな。最初は親父さんが出たしな。明日もう一度電話するしかないだろう」

「そうですね。ここからどうのとは言えないし」

どこか落ち着かないが、寝ることにした。

全く寝れそうにないが、目を瞑るといろいろなことが目まぐるしく浮かんでくる。

ただ恐怖はまだなかった。

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呪いアプリー56話

2012-06-23 20:25:12 | 小説
京北の中を無闇に探すわけにはいかない。

まずは病院を幾つか当たった。

京北病院など、大きな病院からだ。

しかし楢先と名乗る人物は存在しない。

個人病院か小さな診療所も当たったが、連絡がついたところには居なかった。

「こりゃなかなか骨が折れるな」

住田が髭をなでる。

京都の街は、盆地のため日が沈むのも早い。

「もう今日は諦めるか。。。。」

住田がそう言っている。

地図を眺めながら、頭前は疑問にもうことを告げた。

「京都ってほんと神社仏閣が多いですよね。この場所にも八坂神社と金刀比羅宮が近い場所にある。」

「あぁなんせ京都だからな。昔は日本の中心だ。そりゃ神も仏も集まるさ」

確かにそうかもしれない。

多くの信者を集めるには、人が集まる場所に存在感を示さねばならない。

信者が崇めてくれるには、信者の住んでいる場所に分社を置く必要もある。

「しかしこれだけあると、どの神を崇めたらいいのかわからなくなりますよね」

「そりゃそーだが、おまえだっていろんな神社に行くだろう。別にこっちの神社に行ってあっちに神社に行ったって構わん。その時その時に人は崇めるのは違うもんだ」

「そうですね。でも。。。氏神様というのはいるだろうし、お寺だと菩提寺というのもあるから、必ず決まった場所には戻るんじゃないですか」

「そうだな。。。なかなか良いとこ衝いているな。ちょっとまてよ。楢先の故郷を調べてみる」

住田はどこかに電話した。

「菩提寺はわからんし、故郷もわからんな。。。そうだ!」

もう一度住田はどこかに電話した。

「楢先先生と言うのは、もう高齢だそうだ。もしかして引退したのかもしれないらしい。さっきの診療所の看護師に聞いた」

「そうですか。高齢者ならやはり、自分の地元に帰った可能性も捨てきれませんね」

「そうだな。歳をとってから引っ越しするとなると、患者として病院に入るか介護施設に入るか、実家に戻るかか」

「とりあえず電話帳を調べましょう」

「電話帳に載ってるかな」

「高齢者ならたぶん家電話は着けてますし、下の名前はわからなくても電話帳に載せている可能性は大です」







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呪いアプリー55話

2012-06-22 07:18:41 | 小説
白尾山に付くと、もう夕暮れだった。

一旦家に戻るかという話も出たが、やはり二人ともさっきの清浄師の行動が気になる。

事は急ぐ必要があると感じていた。

住田が調べていた住所近辺を探したが、それらしい家もない。

「確か先生と言ってたな」

「そうですね。。もしかして学校とか・・・」

藁葺き屋根の大きな家が、小さな集落を構えている。

周りは山ばかりで、田んぼや畑しか他にはない。

ここはかやぶきの里という名でも呼ばれているらしい。

地図で調べるとすぐ近くに小学校があった。

もしかしてここの先生なのだろうか。

学校を訪ねてみるが、楢先という人物は知らないらしい。

今居る場所よりも少々離れてはいるが、中学校も高校もあるらしい。

とりあえず電話で尋ねてみるが、やはり楢先はいない。

「他に先生と言えば、医者だな」

幾つかの診療所が目に付いた。

しかし医者は、どちらかというと非科学的なことに否定的なはずだ。

でも・・・数々の奇跡を目撃する立場でもあるだろう。

「ここまで来たんだ。尋ねてみよう」

近くの診療所を訪ねた。

年配の看護士が、見知らぬ客に警戒しているようだった。

名刺を差し出して尋ねる。

「あぁ、その人ならお医者さんですよ。でももうここには居ません。今はもう少し南の九重ザクラがある町にいるらしいですよ」

「九重ザクラ・・・あの常照皇寺のあるところですか?」

「そうです」

医者だと言うことに間違いない。

二人は礼を言うと、すぐさま京北に向かった。








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呪いアプリー54話

2012-06-21 07:35:56 | 小説
どこか吹っ切れないものはある。

死ぬ覚悟なんて、出来ているわけがない。

目標しか見えていないときは大丈夫だろう。

しかし一旦息を抜いたり、周りを見渡した時に逃げたくなる。

それをなんとか押しとどめて、今日までやってきた。

これは住田も頭前も同じだ。

遺書なんてかっこつけて書いたとも言える。

しかし、現実に何かの渦に巻き込まれているとすると、本当のことになるかもしれない。

清浄師の言葉に。。。

『良くない者を連れて来た・・・』

なんだろう。

「頭前。さっきの清浄師が自分よりも上だといった3名のうち、2名はわかってる。このどちらかにこれから直ぐに会いに行こう。何かわかるかもしれないし、、、何より俺達も危機から救われるかもしれないしな」

「清浄師の言葉を信じるんですか?」

「信じるも何も、災いは早めに断ち切るほうがいいからな:

二人はまず白尾山の楢先という人物に会うことにした。

この人物は住田の資料にも載っていたが、さほど注目をしていなかった人物だ。

「とりあえず現地でアポとろう」

先程清浄師が消えていった方角と、反対に車を走らせる。

何かから逃げる清浄師とは逆。

何かに向かっている自分達がいる。

特別な能力が無いということは、幸せなのかもしれない。

つくづくそう思った。

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