本稿は、2013年12月14日に東京で開催された、日本・東南アジア諸国連合特別首脳会議(the ASEAN-Japan Commemorative Summit in Tokyo, the special summit of ASEAN-Japan)を前に安倍晋三総理が読売新聞の英字紙The Japan Newsに寄稿された論考、および、同論考に対する同紙記者による解題記事の翻訳です。画像は、<美しい日本>の再生を期す安倍総理にちなみ、弊ブログでは、美と再生の女神、<木花咲耶姫>と同一神格のほしのあきさんの凛々しい騎乗姿を投入しました。今年の干支でもありますしね(笑)
尚、安倍総理の寄稿は掲載前日の12月12日になされたもの。
けれども、論考と解題記事の掲載はいずれも12月13日付けです。
前者「ASEANと日本の将来像:A future vision for ASEAN and Japan」は--外交戦略に関する一国の宰相のある程度まとまった見解の表明ということもあり、安倍政権を支持するにせよ批判するにせよ、<読者>はそのテクストの全文を踏まえるべきであろうという--その論考の性格からして全訳で、後者「安倍首相アジアを語る、日本とASEANは平和の維持具現に向けて積極的役割を果たし得る、と:Prime Minister Abe on Asia / Japan, ASEAN can play ‘proactive role for peace’」は妙訳でご紹介します。
ちなみに、「全訳」をウェブ上にアップロードすることでThe Japan Newsに対して心ならずも与えるかもしれないダメージ(←不可算名詞の「damage:被害・損害」です。可算名詞の、よって、普通は複数形の「damages」は「損害賠償額・損失額」の意味ですよぉー!)をミニマムにすべく、出典テクストのリリースから20日間は記事エントリーを控えさせていただきました。また、同紙の解題記事は「要を得て簡潔」、畢竟、付け足すことが皆無でしたので弊ブログ独自の解題は割愛させていただきます(←「手抜き」とも言う?)。The Japan Newsの関係者各位にはご容赦いただきたいと思います。ぺこり。
蓋し、安倍総理の英文論考は、世界から安倍総理に寄せられている--あるいは、12月14日夕刻の帝国ホテル、同特別首脳会議の祝宴(at a Gala Dinner of the special summit of ASEAN-Japan at the Imperial Hotel in Tokyo)でASEANの貴顕を魅了したAKB48に現在、世界から寄せられている熱い眼差しにも匹敵するほどの--期待の大きさ、そして、それに応えてきた安倍総理の誠実さと力量を痛感させるもの、鴨。ということで、「世界から安倍総理に寄せられる期待の大きさ」に関しては下記拙稿もご参照いただければ嬉しいです。
・安倍総理、ニューヨークに行く
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/f1d408b40b4c30c978c1983c8cc9a7c3
いずれにせよ、「世界から安倍総理に寄せられているポジティブな視線」は、例えば、朝日新聞の下記の「難癖社説」(←「イソップの酸っぱい葡萄」型社説、あるいは、「引かれ者の小唄」型社説とも言う?)の如き「批判のための批判」とはほぼ対極にあると言ってもいいの、鴨です。蓋し、朝日新聞の下記の社説などは--人権や自由に「普遍的な価値」を認めることと、その「人権」や「自由」に具体的な内容を普遍的に認めることとは位相を異にすることを看過した--人権や自由に、現行の国際法や国際政治の確立した慣習と無縁とまでは言わないけれど、それらから演繹される内容を遥かに超える恣意的な意味内容をアプリオリに--要は、各国や各民族の実定法秩序を貫く社会統合イデオロギーの独自性を捨象して--密輸した上でなされた反日リベラルの戯言にすぎない。と、そう私は考えます。
▽日・ASEAN―価値観外交はどこへ
東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本が協力交流を始めてから今年で40周年になる。日本政府は10カ国の首脳らを東京に招き、2兆円規模の開発援助の供与を表明。平和と安定、繁栄などのパートナーシップを誓う共同声明を発表した。
安倍首相は就任後1年間、ASEAN外交に力を入れてきた。10カ国すべてを訪れ、今回の会議はその総仕上げという。成長著しい東南アジアの活力を日本経済に取り込みたい。中国の影響力の広がりに歯止めもかけたい。そうした思いが安倍政権を駆り立てているようだ。
だが、安倍政権が外交看板に掲げる人権や民主主義など「普遍的な価値」を広める意気込みは伝わってこない。中国との対抗心にはやるあまり、民主化や人権などの原則がおろそかになっていないか。・・・
発展段階も宗教、言語、民族も異なる多様な国々が集まるASEANには、一党独裁もあれば、政権交代を経験しない国もある。自由や人権に重きをおく国が多いとはいえない。そうした国々に「普遍的な価値」を説くには信念がいる。相手にとっては耳の痛い苦言であることが多いためだ。
日本と開発援助を競い、通商面のライバルとなっている中国が、そうした価値観で相手国に注文をつけることはない。だから、中国との競争を考えれば、なおさら言いにくいということではないのか。安倍首相は今回の会議では、中国を念頭に海や空での法の支配を訴えた。一方、この会議でも、これまでの外遊でも、人権の尊重や民主化を積極的に促す発言をした様子はみえない。・・・
黙っていては「普遍的な価値」は拡大せず、中国に対抗するだけの決まり文句にすぎないと受け止められるだろう。狭量な利益外交にばかり傾斜すれば、逆に、日本は本当にそうした価値観を尊重する国なのか疑われかねない。
(朝日新聞・2013年12月15日)
Exclusive: Prime Minister Abe on Asia /
‘A future vision for ASEAN and Japan’
Prime Minister Shinzo Abe / Special to The Japan News
In this special year of the 40th anniversary of Japan’s relationship with ASEAN, the Association of Southeast Asian Nations, I have invited the leaders of all ASEAN countries to join me in a special summit to celebrate our cherished partnership. Ever since I assumed the office of Prime Minister at the end of last year, I have been conducting strategic diplomacy looking over the entire globe, and ASEAN has always been at the center of my diplomacy as a special partner for Japan.
In promoting our partnership, I announced the Five Principles of Japan’s ASEAN Diplomacy in January this year during my visit to Jakarta, the very start of my one-year ASEAN ten-nation trip. In advancing the Five Principles, I visited all ten ASEAN countries in a single year in order to candidly discuss the way forward on ASEAN-Japan relations with ASEAN leaders and people. It is my great pleasure and honor to be able to host the ASEAN-Japan Commemorative Summit in Tokyo tomorrow that will no doubt be the milestone in concluding and celebrating this 40th anniversary year of ASEAN-Japan Friendship and Cooperation.
Taking this opportunity on the eve of the Commemorative Summit, I would like to highlight the significance of the ASEAN-Japan partnership.
独占寄稿:安倍首相、アジアについて語る「ASEANと日本の将来像」
本稿は安倍晋三首相からThe Japan Newsに特別に寄稿いただいた論考です
今年【2013年】は、ASEANと日本との関係が樹立されてから40周年の特別な年であります。その40周年にあたり、私はすべてのASEAN(the Association of Southeast Asian Nations)諸国の指導者・首脳の皆様を、ASEANと日本とが共に手塩にかけて育んできた相互の協力関係を言祝ぐべく特別首脳会議にご招待させていただきました。昨年末に、豊葦原之瑞穂国の宰相の印綬と職責を帯びて(assumed the office of Prime Minister)以来このかた、地球全体の事象をにらみながら私は戦略的外交を推進してまいりました。けれども、私のその外交戦略の中でも、日本にとっての格別なパートナーであるASEANが一貫して中心の位置を占めてきたことは言うまでもありますまい。ありますまい。
ASEANと日本との関係を一層深化させ拡大させるために、ASEAN全10カ国を1年がかりで訪問することになる、その最初の訪問地ジャカルタ滞在中の本年1月【2013年1月18日】私は、日本の対ASEAN外交5原則(the Five Principles of Japan’s ASEAN Diplomacy)を発表いたしました(★)。而して、その外交5原則を促進させるべく、私は同じカレンダー年に10カ国すべてのASEAN諸国を訪問したわけですけれども、それは一重に、ASEANと日本との関係を更に一歩前に進める方途をASEANの指導者の皆様、および、その国民の皆様と率直に議論するための訪問でした。畢竟、明日【2013年12月14日】、日本・東南アジア諸国連合特別首脳会議(東京)を主催させていただくことができますことは私の大きな喜びであり誇りです。そして、他の会議は知らず【関係代名詞thatの制限用法の語感をこう訳しました。】、この特別会議が、40年に及ぶASEANと日本との友好と協調の明確な証左となり、また、両者の関係を言祝ぐ画期的な道標になることを私は毫も疑いません。
而して、画期的かつ言祝がれるべき特別首脳会議の前日。この機会を使わせていただき、ASEANと日本との協力関係の重要さについて改めて確認させていただきたいと思います。
<続く>