グノーシス思想の出発点は、二つの神的原理の原初的な、あるいは
派生的な二元論である。この世界が存在するよりもはるか以前に、
善神と悪神との対立、天の光と地獄の闇との対立が存在した。
原初的な二つのの力の闘争において、悪霊の力が、形をとった天の光
にうちかった。この闇の勝利によって、可視的な世界の存在が始まった
のである。
というのも、悪魔の力は、なんとしても、征服した「光」を
所有し続けようとして、そのために、世界を造り、世界の中に人間を造っ
たのである。人間の身体が、征服した天の光をとじこめるための牢獄として
用いられたのである。そのために悪霊たちは、(光の)本来的な姿を引き裂き、
上なる世界から引き下ろして箇々別々の光の花火へと変えてしまう。
悪霊たちは、この霊的な実体から成り立っている個々の光の断片に、その
故郷である天国を想い出させまいと「忘却の美酒」を与え、かつ霊的な魂を
とじこめる牢獄として用いられる個々の人間の身体の中に、そうした光の
断片を呪縛したのである。
「黙示文学とグノーシス」
*「忘却の美酒」とは意識産業が垂れ流す3S。
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