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『新装版 剣客群像』 池波正太郎

2020年03月18日 22時12分00秒 | ■読書
「池波正太郎」の短篇時代小説集『新装版 剣客群像』を読みました。


時代小説が続いています… 新装版 夜明けの星に続き「池波正太郎」作品です。

-----story-------------
師匠の遺した剣の秘伝書を、三人の弟子が追う『秘伝』
自分より強い男の妻になりたいと望む女武芸者のもだえが切ない『妙音記』
清廉潔白で慎み深いあまり、変わり者と呼ばれる『弓の源八』
武芸にかけては神技の持ち主でありながら、世に出ることなく生涯を送った武芸者八人の姿をユーモラスに描く円熟の短篇集。
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1960年(昭和35年)から1969年(昭和44年)に文芸誌に発表された作品を収録した短篇集です… ユーモラスな作品が多く、肩の力を抜いて愉しむことができました。

 ■秘伝
 ■妙音記
 ■かわうそ平内
 ■柔術師弟記
 ■弓の源八
 ■寛政女武者
 ■ごろんぼ佐之助
 ■ごめんよ
 ■解説 小島香


『秘伝』は、戦国末期に剣の師匠の秘伝を巡って争った兄弟弟子の物語。

日本無双の剣士を名乗る「岩間小熊」の評判は高まり、ついに「根岸兎角」と勝負することになった… この二人、ともに「諸岡一羽斎」の弟子である、、、

「一羽斎」が死んですぐの時に「根岸兎角」が秘伝の書を盗んで逃げたため、「岩間小熊」が追いかけてきたのである… 勝負は「岩間小熊」が勝ち、秘伝の書を「兎角」から奪い返した。

だが、この書には何も書かれておらず白紙なのであった… 秘伝は技(剣のテクニック)ではなく、心の持ち方・人間の研究だったんですね、、、

行動的な二人の兄弟子の対決の陰にいて剣を振るうことない「土子泥之助」こそが真の承継者だったんですよね。


『妙音記』は、江戸初期に、柔術を極めた武家の一人娘の物語。

「佐々木留伊」は自分を打ち負かすほどのものでなければ結婚しないといい、叔父を呆れさせている… そして、「留伊」に挑んで勝てた者がいまだにいない、、、

次に指名されたのは「小杉九十郎」であった… この勝負で「留伊」は、身体からある音を。

放屁が一組のカップルを育んだという、微笑ましい展開でしたね… 「佐々木留伊」は実在の人物のようですね。


『かわうそ平内』は、時代は元禄、「かわうそ平内」こと「辻平内」の飄々とした姿を描く物語。

「辻平内」は無外流という剣術を遣うらしいが誰も見たことはない… 近隣では、その容貌から「川獺(かわうそ)先生」で通っている、、、

この「平内」「杉田庄左衛門」「杉田弥平次」の兄弟が訪ねてきた… 二人は敵討つ身である、相手は「山名源五郎」

優れた剣技の持主でありながら、それを感じさせず、40歳にも関わらず60~70歳に見え、カワウソのような顔つきをしているという、およそ剣豪ばなれしているのだが、独特の魅力がある「平内」の活躍が爽快な物語でしたね… 「平内」って、こうあってほしいという剣豪象のひとつだと思いますね。


『柔術師弟記』は、柔術を極め技に溺れた弟子を持った師匠の苦悩と師弟愛の物語。

「関口八郎左衛門氏業」は愛弟子の「井土虎次郎」の豹変振りに困惑していた… 手塩にかけたこの愛弟子が、あろうことか無断で他流試合をし相手を死に至らしめているという、、、

ある日、「関口八郎左衛門氏業」は覚悟を決める… 慢心の末、気味の悪い怪物的存在になり果てた「井土虎次郎」を殺めることを。

死の床に横たわる「関口八郎左衛門氏業」が、愛弟子の「井土虎次郎」と稽古に励む夢を見ながら旅立っていく場面に師弟の情愛を感じましたね。


『弓の源八』は、自らを厳しく律し、仙人のような境地にまで達した弓名人の生涯を描いた物語。

「子松源八」は年少のころから弓に才を見せたが、兄が松江藩の汚職事件・棚橋くずれに連座して牢に押し込められ、「子松家」が取り潰しになると、「源八」は田舎の村に引っ込んだ… 兄の所行を恥じていた「源八」だが、「おりつ」という寡婦と知り合い少しずつ変わってきた、、、

世間からは奇人と思われていた「源八」の桁外れな律儀な生き方… 金と名誉が好きだからこそ、自ら選択した生き方だったんですよね、共感しました。


『寛政女武者』は、素性を隠し女中をしている手裏剣名人の切ない生の物語。

「牛堀九万之助」の女中「お久」と弟子「松岡弥太郎」が男女の仲になった… だが、この「松岡弥太郎」「坂口兵馬」と、二人で誘いをかけて、どっちが先に「お久」をものにできるか賭けをしていたのだ、、、

女であるからこそ、男以上の意地を通した「お久」は、手裏剣の使い手で豪の者だった… それ故に死ななければならない女の哀しさ、口惜しさがみなぎる哀切極まりない物語でしたね。


『ごろんぼ佐之助』は、新撰組隊士「原田佐之助」の生涯と明治期の後日談を描いた物語。

後年、新選組隊士として有名になる「原田佐之助」… 伊予松山では悪漢として幼いころから有名であった、、、

これは、「佐之助」が自分で用人の落胤と思っていたことから態度が尊大になり、それが外に吹き出したためである… 時代は流れ始めており、「原田佐之助」も脱藩して、江戸へと来ていた。

一本気な男の微笑ましさ、好ましさが伝わる一篇でした。


『ごめんよ』は、江戸末期に剣技を極めた幕臣の江戸から明治にかけての生涯を描いた物語。

「青山熊之助」が十二の時、一緒に行動していた弟「源次郎」が目の前で浪人にいたぶられる事件が起き、「熊之助」にある決意をもたらす… それは剣術を学ぶというものである、、、

「熊之助」「山崎平」に入門した、「山崎」は空鈍流の剣術をやっているという… 「熊之助」「山崎平」に弟子入りしてから、相当な修行を積む。

その実力を見抜いた「伊庭八郎秀穎(ひでさと)」は、「熊之助」を京へ送り洛中見廻組と行動を伴にさせることに、、、

剣技を極めた男の最期の言葉は、弟「源次郎」への「ごめんよ」という言葉… 共感しちゃいましたね。


ユーモア感のある作品が多かったのが印象的でした… その中でも『秘伝』『妙音記』『かわうそ平内』『寛政女武者』が特に印象に残りました。


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