醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  772号  田酒  白井一道

2018-06-26 14:02:50 | 随筆・小説
 
 
  青森の名酒「田酒」

    


侘輔 ノミちゃん、日本三大歓楽街というとどこかな、知ってるかい。
呑助 どこでしょうね。東京の歌舞伎町は東洋の歓楽街でもあるわけでしょうから、まず第一の歓楽街は新宿・歌舞伎町でしょうね。第二はやはり大阪でしようかね。大阪というとキタでしようか。それとも札幌・ススキノあたりでしようか。第三は福岡・中州でしようね。
侘助 札幌・ススキノが大阪の歓楽街を凌いでいるらしいですよ。
呑助 あっ、そうかもしれませんね。
侘助 先日、日本を代表する札幌の大歓楽街・ススキノがえらく寂しくなっているという話を聞いた。
呑助 へぇー、そうですか。
侘助 飲屋ばかりの入ったビルのネオンは点いているが三割ぐらいの店が営業していないらしい。
呑助 もしかしたら、消費税増税の影響でしようかねぇー。
侘助 そんなことはないとは思うんだけどね。今、全般的にデパートを初め、消費者の動向に大きな変化が現れてきているらしい。
呑助 日本酒にはどのよう
 な変化がでてきているでしょうか。
侘助 もう、十年も前の話になるけれども、野田に大きな酒問屋A商店があったけれども店を閉めた。
呑助 代変わりしてから徐々にダメになったと聞いていますよ。
侘助 そうらしい。小売店に対して横柄だったと。
呑助 小売店に横柄じゃ、売って貰えないですね。
侘助 確かにね。東京に全国展開している地酒の酒問屋・小泉商店がある。
呑助 山形の「出羽桜」や石川の「手取川」を持っている酒問屋ですね。
侘助 うん。そうだ。その酒問屋から去年、抜け出た酒蔵がある。青森の酒蔵「田酒」を醸す西田酒造だ。酒問屋に酒を卸すことを辞め、直接酒販店に卸すことにしたようだ。
呑助 一切、問屋に酒を卸さないんですか。
侘助 そうらしい。日本全国にある百三・四十店の酒販店を特約店にしてここだけに酒を卸すようにしたらしい。一切、問屋との付き合いを止めてしまった。それでも生産が追い付かないようだよ。
呑助 青森の「田酒」ですね。
侘助 「田酒」というと浅草の居酒屋「松風」を思い出すんだ。「田酒」と「出羽桜」を一杯づつ飲むとそれ以上売ってくれない店だよ。
呑助 そんな居酒屋があるんですか。
侘助 珍しい居酒屋なんだ。「田酒」は飲み飽きしない酒なんだ。綺麗で咽越しがいいんだ。
呑助 はっきりした個性のない酒なんですね。
侘助 そうなんだ。自宅で一人、飲む酒にしては物足りない、そんな感じを私は持っているんだけどね。それが料飲店で飲む酒にしては具合がいいのかもしれない。何しろ、すいすい入っていくからね。料飲店では使い勝手いいお酒のようなんだ。
呑助 料飲店用のお酒なんでしようね。
侘助 酒質が確かに「獺祭」に似ているようにも感じるな。軽快で飲み飽きしない酒だから。「獺祭」も「田酒」も酒問屋に卸さず、特約店の酒屋に卸す。消費者はコンビニやスーパーで日本酒を買うことをしなくなってきている。専門店で日本酒を買うようになってきている。

































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