醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1507号   白井一道

2020-09-01 12:39:07 | 随筆・小説


 
 安倍政権は何をしたか 3


 
 2020.9.1  ネチズン・カレッジより  加藤哲郎 一橋大学名誉教授

 アメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学のデータでは、8月30日現在、新型コロナウィルスの感染認定者は世界全体で2481万2440人となっています。亡くなった人は83万8704人に上っています。感染者が最も多いのはアメリカで593万9591人、ブラジルが380万4803人、インドが346万3972人、ロシアが98万2573人、ペルーが62万9961人、亡くなった人が最も多いのはアメリカで18万2217人、ブラジルが11万9504人、メキシコが6万3146人、インドが6万2550人、イギリスが4万1585人です。
 イギリスBBCの表現を借りれば、「感染者が最初の10万人に達するには67日かかったが、次の10万人確認は11日、その次の10万人確認はわずか3日しかかからなかったのだ」。WHOのマーガレット・ハリス医師は、「私たちは今なお、加速を続ける激しい、そしてきわめて深刻なパンデミックのただなかにある」と話した。「世界のあらゆるコミュニティーでパンデミックは続いている」。「人間が密集すればウイルスは伝播する。この真実があるからこそ、いまパンデミックの震央になっている中南米の状況が説明できる。インドでの感染者急増も同様だ。香港が感染者を隔離施設に収容しているのもそのためだし、韓国当局が市民の銀行口座や携帯電話を監視しているのも同じだ。だからこそ、欧州各国やオーストラリアは、ロックダウン(都市封鎖)と感染封じ込めのバランスをいかにとるかで苦労している。そして私たちは、以前の日常生活に戻るよりは、「新しい普通」、「新しい日常」を模索しているのだ。「このウイルスは惑星のあちこちで広まっている。私たち一人ひとり、全員に影響している。人間から人間へと伝染し、私たちがみんな結びついてつながっていることを浮き彫りにしている」。ロンドン大学セントジョージ校(医学専門)のエリザベッタ・グロッペリ医師はこう言う。「旅行や移動だけでなく、一緒に話したり、一緒に時間を過ごしたりする。人間とはそういうものだ」。一緒に歌を歌う。ただそれだけの素朴な行動が、ウイルスを広めてしまう(BBCニュース、8月11日)ーー同じ島国でも、イギリスと日本の公共放送の報道の視角は、ずいぶん違うようです。インドでは、8月末に感染者がⅠ日8万人に達しました。日本でも「第二波」は、確実に起こっていました。経済再開を急ぐ政府が、認めたくないだけです。
 世界のパンデミックのさなかに、日本では、安倍晋三長期政権の終焉、国民にとっては大きな、自民党内ではなぜかいつもの、政局・政変です。「ようやく辞めた」というのが率直な印象ですが、病気を理由にした政権放り出しで、この8年近い「ファシズムの初期兆候」の残滓はあまりにも大きく、簡単に反転するとは思えません。外交・安全保障はもとより、内政の構造も、新型コロナウィルスよりずっと前から、「安倍ウィルス」に感染し、蔓延していました。まずはアベノミクス、金融・財政政策をテコに経済成長をめざし、デフレを終わらせ雇用・賃金も保障するとしましたが、非正規雇用だけが増えて格差は広がり、国際競争力も労働生産性も下がるばかりで、トリクルダウン効果はあがりませんでした。消費税を選挙の道具にし、原発再稼働から原発輸出までを推進し、挫折しました。集団的自衛権を認めて新安保法を強行し、森友学園・加計学園・桜を見る会・黒川検事長定年延長問題、河合前法相夫妻公選法違反事件など「権力の腐敗」「政権の私物化」としかいいようのない不祥事が続き、ついには、公文書までが隠蔽され、改竄されました。マスコミの中に「アベ友」をつくり、テレビ番組からSNSにまで批判言論つぶしの監視を進めました。最期まで東京オリンピック開催にこだわり、緊急医療資源にまわすべき膨大な財源が費やされました。かけ声だけの「安倍外交」は、拉致問題もロシア領土交渉も暗誦にのりあげ、中国・韓国との関係もぎくしゃくして、アメリカのトランプ大統領から高価な兵器を買わされるだけでした。核廃絶にも沖縄米軍基地問題にも、むきあおうとはしませんでした。
 本サイトは、日本の新型コロナウィルス対策失敗の大きな要因を、安倍内閣「健康・医療戦略」に求めてきました。アベノミスクの第三の矢「成長戦略」の一環で、ガン特効薬やゲノム解析に投資して「高度先進医療」技術を海外輸出し、他方で医療費削減・病院再編の効率化、保健所やベッド数削減を進めてきました。2009年の新型インフルエンザのパンデミックに対して、ちょうど自公政権から民主党政権への政権交代期にあたり、感染症「専門家」が医療器材の備蓄やPCR検査の拡大等も提言しましたが、第二次安倍内閣が「悪夢の民主党政権」を全否定して、先進国では最低レベルの貧困な装備・人員で、2020年の新型コロナウィルス・パンデミックに遭遇することになりました。そのツケが、中国武漢での蔓延からクルーズ船「ゴールデン・プリンセス号」封じ込めの初動の不手際から、PCR検査の絶対的不足、医療崩壊寸前までいった院内感染・受入病院の経営圧迫、休業補償を伴わない自粛・休業要請、果ては「アベノマスク」からステイホーム動画、感染拡大下のGOTOトラベル・キャンペーンのような愚策を産み出してきました。一方で病院・保健所・ベッド数を削減し、他方で後手後手の感染症対策ばかりの、「安倍ウィルス」に汚染された「健康・医療戦略」が改められない限り、日本の「経済成長」主導のコロナ対策は続きます。安倍首相がいなくなっても、「安倍ウィルス」に汚染された官邸官僚主導政治、権力私物化の構造、国会無視の自民党「一強政治」が継続される限り、私たちは「コロナウィルス」と「安倍ウィルス」に対する、二重の感染対策を求められます。



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