醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  299号  白井一道

2017-01-21 13:15:09 | 随筆・小説

 岐阜県多治見の酒「三千盛」の「小仕込純米」と
              新潟県塩沢のお酒「高千代純米大吟醸」を比べ楽しむ


侘輔 2017年一月の酒は、岐阜県多治見の名酒「三千盛」の熟成酒と新潟高千代酒造の新酒とを比べて味わってみようと思うんだけどね。
呑助 「三千盛」は岐阜県多治見の酒ですか。
侘助 多治見というと思い出すのが何かな。
呑助 それは何と言っても陶器の産地、多治見焼でしょうかね。
侘助 美濃焼と言われるものかな。特に志野とか、織部といわれる模様が有名かな。欧米にも知られる名品があるらしいよ。
呑助 織田信長の経済政策が生んだ陶器だったような記憶が薄っすらと残っていますよ。
侘助 高校生のころの日本史の記憶かな。古田織部が活躍するのは桃山時代だからね。
呑助 志野のぐい吞みでいただく、三千盛はきっとおいしそうな感じがしますね。
侘助 酒は酒器によって美味しさが違ってくるという人がいるからね。
呑助 お酒はイメージと雰囲気で味が変わると思いますよ。
侘助 確かにそんな気がするね。
呑助 ところで「三千盛」の熟成酒というのは何という銘柄のお酒なんですか。
侘助 「小仕込純米」という銘柄のお酒なんだ。
呑助 「小仕込」というのは何ですか。
侘助 「小仕込」というから四五〇ℓのタンクで仕込んだお酒なのかなと思うでしょう。
呑助 そうですよね。
侘助 そうではなく、「小仕込」とは大吟醸を三千盛さんにあっては、意味しているようなんだ。
呑助 へぇー、そうなんですか。
侘助 「小仕込純米」とは、三千盛さんにあっては、最高品質のお酒をいうらしい。一九七〇年代に造られた銘柄のようなんだ。そのころ大吟醸と銘打っても伝わらなかったから「小仕込」で丁寧に造られたお酒ですよと、言う意味を消費者に伝えようとしたようなんだ。
呑助 そうなんですか。最高品質ということは、何ですか。
侘助 まず、酒造米が兵庫県北西地区産の山田錦、精米歩合四〇%、炭による濾過はしていない。おおよそ十カ月寝かせて出荷している。雑味が落ち、味がのってくる。熟成し美味しくなったお酒ということのようだ。
呑助 「三千盛」のお酒は軽快ですっきり、切れのいいお酒という印象でしたよね。
侘助 そうだよね。大吟の酒であっても、飲み疲れすることのないお酒かな。
呑助 確かに大吟のお酒の場合、たくさん飲めないという印象がありますね。
侘助 うん、そうだね。だから「三千盛」の大吟「小仕込純米」という銘柄の大吟醸の酒は飲み飽きすることがないお酒なんじゃないかな。
呑助 最近、話題の少なくなってきた山口県岩国のお酒、「獺祭」と似たようなお酒なんですね。
侘助 きっと似たような味わいのお酒だとおもうけれどね。なにしろ、720mlで二千円もするお酒だからね。
呑助 「三千盛」のお酒は1.8ℓの大吟醸であっても割安感のあるお酒ですよね。
侘助 そうだよね。確かに割安感のあるお酒だから、その蔵が高い値段を付けているお酒だからね。

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