醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1327号   白井一道

2020-02-13 11:06:24 | 随筆・小説



   徒然草152段 西大寺静然上人



原文
 西大寺(さいだいじ)静然上人(じやうねんしやうにん)、腰屈(こしかが)まり、眉白く、まことに徳たけたる有様にて、内裏(だいり)へ参られたりけるを、西園寺内大臣殿(さいをんじのだいだいじんどの)、「あな尊の気色や」とて、信仰の気色ありければ、資朝卿(すけとものきよう)、これを見て、「年の寄りたるに候ふ」と申されけり。
 
現代語訳
 西大寺(さいだいじ)静然上人(じやうねんしやうにん)は、腰が曲がり、眉が白く、実に徳を積まれたご様子で宮中へおいでになられたのを見て、西園寺内大臣殿(さいをんじのだいだいじんどの)は、「なんと尊い気品であるか」と、仰ぎ窺うような様子だったので、資朝卿(すけとものきよう)が静然上人(じやうねんしやうにん)を見て、「お年をめされましたね」とおっしゃられた。 
 
原文
後日に、尨犬(むくいぬ)のあさましく老いさらぼひて、毛剥げたるを曳かせて、「この気色尊く見えて候ふ」とて、内府(だいふ)へ参らせられたりけるとぞ。

現代語訳
後日、むく毛の犬のみすぼらしく老いさらばいて、毛が剥げている犬を「この気品尊く見えている」と内大臣殿の邸に贈ったということだ。

 皮肉ということ   白井一道
 『悪魔の辞典』より
老齢(age)
すでに犯すだけの冒険心が持てなくなっている悪徳を悪しざまに言うことによって、いまだに失わずに持っている悪徳を棒引きにしようとする人生の一時期。

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