じょじょりん文庫

読書好きで雑読。ゴルフ好きでへたくそ。
気の向くままに本ネタとゴルフネタを書かせて頂いています。

自壊する帝国 佐藤優

2008-11-11 | ノンフィクション
自壊する帝国 (新潮文庫 さ 62-2)
佐藤 優
新潮社

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ラスプーチンこと佐藤優さんの文庫新刊です。
この本では、著者が外務省に入ってソビエト連邦課に配属になり、イギリス陸軍の語学学校でロシア語を学び、1987年から8年弱、モスクワで過ごすことになったその記録である。

ちょうどベルリンの壁の崩壊が89年、91年末のソビエト崩壊といった丁度激動期にソビエトで外交官生活をしていたその記録であるから、007やマンガでしかなじみのないKGBだとか、バルト3国とモスクワとの想像以上の隔たりなど、迫力のある記述ばかりだ。

著者はモスクワでサーシャという天才肌のラトビア人と知り合いになり、サーシャの紹介を始めとして後年自己に災悪をもたらすこととなるロシア中枢部に至る人脈を築いていく。
学者肌の著者が、情報のために情報源勤務の女性職員にシャンパンや口紅の付け届けをしていたことなどが述べられており、その気の回りようには驚いた。
91年のクーデターでゴルバチョフ書記長の安否が不明になったときも、著者の人脈で書記長の生存が確認されたくだりなど、諜報活動従事者の徹底したすごさを感じる。

サーシャをはじめ、当時のソ連人には、女性に狂ったり酒に溺れたりして自己を破壊し、あたら才能を無駄にしたりする人物が多かったようであるが、著者はそういった人物とさえうまくつきあっていたのに、日本に帰ってなぜあんなことになってしまったのか、不思議な気分がする。

私も外国暮らしの経験があるが、外国暮らしが長くなると、日本人のモノの考え方や感じ方に鈍感になってしまう側面があり、著者もそうした穴にはまったのではないかという気がする。
それにしても、どこの国に行ってもすぐに現地の人とコミュニケーションを取って仲良くなってしまう著者の語学力と、精神的パワーには驚きを禁じ得ない。私は英語ですら、現地の人と話をするのは帰国間際でも気が重かったことを思うと、羨望の念を抱く。

しかし、イギリス陸軍に、ちょっと秘密めいた語学学校があることを初めて知った。
どこの国も防衛には力を入れているのだなとあらためて感じた。

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