じょじょりん文庫

読書好きで雑読。ゴルフ好きでへたくそ。
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国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて 佐藤優

2008-11-05 | その他
国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫 さ 62-1)
佐藤 優
新潮社

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2001~2年、鈴木宗男氏と田中真紀子氏の戦いに、巻き込まれたのか入っていったのか分からないが関与して、背任、偽計業務妨害で逮捕・起訴されてしまった外交官の佐藤優氏の当時の回想録だ。

私も当時ニュースで見ていて、鈴木氏と佐藤氏が癒着して、税金を使ってロシアでうまいことやっていた、なんて報道をそのまま信じたりもした。
もともと鈴木宗男氏という人が、中川一郎氏の秘書だったのに、中川氏が亡くなると息子と争って選挙に出ると言いだし、どっちが地盤を引き継ぐかといった争いになったとか、あまり上品でないとか、ごり押ししそうだとか、そういったイメージがあったことも鈴木氏を擁護する意識を持ちにくかった一つかもしれない。
佐藤氏に関しても、「ラスプーチン」というのは、インパクトが強かった。

ラスプーチンというのは、ちょっと怪しい宗教家で、ロシア最後の皇帝ニコライ二世の皇后アレクサンドラに取り入って(皇太子の血友病の発作を祈祷で治した、とされている)皇后経由で政治に口を出し、国をロシア革命に追い込む一つの要因になったと言われている人物だ。
私は、ラスプーチンと聞いたとたんに、佐藤氏という人が、鈴木宗男氏を利用して自分の意見を国政ないしは外交に反映したいと考えていると思われているから、ラスプーチンと言われるのだろう、と思っていた。

本を読んでみると、佐藤氏は、外交官というよりむしろ学者だ。
とてもラスプーチンという言葉から想像されるような、政治や外交に対する山っ気はないように思える。
チェコ語を勉強したくて外務省に入り、ロシア語を勉強することになり、旧ソ連留学中に培った語学力と人脈を駆使して北方領土問題に取り組み、やはり北方領土問題をライフワークとする鈴木宗男氏と共に仕事をするようになり、親しくなったそうだ。

結果として、当時人気のあった田中外務大臣と事を構えたことや、択捉島に進出したディーゼル機関の業者が鈴木氏や佐藤氏と懇意であった商社になったことや、交流の家に鈴木氏の名前がつけられたことなどから、一挙に国民の非難を浴びることとなっていったのだが、本当のところはわからない。

佐藤氏の本だけを読んでどうこう言えないけれど、少なくとも、佐藤氏の人間性は、私がテレビで見て感じたような名誉や出世にどん欲な感じはまったくない。鈴木氏から受ける印象と混同したのかもしれない。学者肌の人でも名誉が好きな人はいるが、本の中の言葉や思索について、そういった色気が全く感じられなかったのは、意外なことであった。

作中では、特捜検事との息詰まる駆け引きも述べられているが、一般国民には特捜検事の捜査の実態など分かる機会もないので、とても興味深い。

次は、ソ連留学時のことが主に述べられている「自壊する帝国」を読んでみようかと思う。

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