ジュルのしっぽ-猫日記-

おっとりネコ・ジュルとのほげほげした毎日。

【特編】ジュルとノラの仲間たち

2006-07-05 | ほげほげ日記
ジュルとノラ生活を共にしてきた仲間ともお別れ。これは、もうひとつのジュルの物語。

ここは東京・下町。
車10台がやっと停められる程度の
どこにでもある小さな砂利の駐車場。

ここが、ジュルの出身地。
右手前に建つ空き家前に放置されたままのマットレスがジュルの定位置。
ダニの温床でもあるはずのマットレスに、いつも同じ格好でグッタリしてた。


この駐車場のボスは、ここら辺一帯をなわばりにする大ボスだという。
名前なんてない。

“ウンモォ~、ウンモォ~…”と牛のような低い鳴き声を響かせて、
どこからともなく、巡回にやってくる。
太く長く、そそり立つしっぽ。
大ボスともなると、たしかに近寄りがたい迫力がある。

ジュルのほかに、この駐車場に住みついているノラネコは4匹。
アラレちゃん、モモちゃん姉妹と、そのこどもたち。
これがその姉妹。

あるオバちゃんが借金で家を追い出され、
しかたなく、自分で世話をするつもりで、
この駐車場に4匹のネコを放った。
うち2匹はオスで、いつの間にかどっかにいっちゃったそうだ。
うち2匹が、この姉妹。とっても仲がいい。

その姉妹が揃ってこどもを生んだ。
ララちゃんとミミちゃん。
なんとか生き抜いてこれたのは、この2匹だけ。

去年の7月。
ジュルと出会った頃は、こんなにちっちゃかった。


 
いまじゃ、こんなに立派になった。見比べると面影がある。

そのオバちゃんが、ほぼ毎日朝夕2回、ゴハンを持ってくる
通称“ガラッパチ”と呼ばれる近所でも有名なオバちゃん。
エサやりを注意されると、
ガラガラ声で、「この子゛たちだってねぇー、生きでんだよぉ!」って、逆ギレしちゃう。
「アラ゛レ゛ェ~!ナナ゛ァ゛~!」と呼ぶと、
みんなそろって、しっぽをまっすぐに立てて、ガラッパチに走り寄っていく。
ジュルはいつもポツンと1匹だけで、その姿をグッタリしながら、
ぼぉ~っと眺めているだけだったっけ。


「こんにちわ。子猫の写真、撮らせてもらっていてもいいですか?」
「あ゛~?いいよ。あんだたち、ネコ好きなの?」
そんな挨拶から話をするようになっていった。
周りの住民とのトラブル、放置せざるをえなかった事情とか。

ジュルを保護してからしばらく経って、ノラネコのことをいろいろ考えはじめ、
ただのエサやりがダンナがいっていたとおり、
ノラたちにとってよくないことなんだとわかるようになった。
ガラッパチとは会うと必ず会話するようになっていたから、思い切って切り出してみた。
「子ネコ1匹、最近見なくなっちゃいましたね…。」
「あの子゛ねぇ…。どこ行っちゃっだのがねぇ…。」
「秋頃にまた、産まれちゃうんですかね…。赤ちゃん。」
ビクビクしながらも、ちょっと強調。
「あの子だちも、生きでるからねぇ…。」
いつものきまり文句に力がなかった。
「不妊手術って、いま日帰りでできるんですよ。この前、うちのネコ、受けてきたんです。
すぐ終わっちゃうんですね。わたし、ビックリしました。」
「へぇ…、大しだもんなんだねぇ…。」
ゴハンを入れてきたビニール袋をカシャッカシャたたみながら、
ガラッパチには聞き流されちゃった…。

駐車場のまわりにも、ジュルの仲間たちがたくさんいる。
道を挟んだ真向かいの空き家にいるのがチャトラくん。

なんでも、空き家の隣のオバちゃんの話では、ジュルのことをいつも狙っていたとか。
「また子猫が増えたんじゃあ、かなわないわよぉ~」って困ってた。
チャトラ、おまえなんかにジュルはやらないよ。

そのオバちゃん家のお隣の雑貨屋さんは、ネコ好きな方のおうち。
いつもお店の横に置いたトレーに、ゴハンを盛ってある。
ジュルもよく、ここまでトコトコ歩いていって、
ゴハンを食べている姿を何度か見かけたことがある。
そのおうちのネコが、この子。

いつもこうして、ジュルのことを見守ってくれていたんだね。
ありがとう。

ちょっと離れたところには、猫屋敷といわれているおうちがある。
ここにはパッと見ただけで5~6匹いるから、本当はもっといると思う。
お庭にある立派な木の枝で、みんな日向ぼっこしている。


大通り向こうには、長老がいる。
ダンペイといってかわいがられている。

赤ちゃんの頃、両目が見えない状態で捨てられていたのを、
近所のオバちゃんが3度の手術を受けさせて、
なんとか多少は見えるようになったお爺ちゃんネコ。

個性の強いネコだけでも、まわりにこんなにいる駐車場。
ジュルの定位置、いまじゃあ、こんなに荒れ放題だよ。


わたしのこんなにすぐそばで、
どこにでもあるちいさな駐車場でさえも、
こんなにたくさんの命や時間が流れてる。
これまでわたしたちは、
どれだけの命や時間を、失ってきたんだろう。






1ヶ月ぐらい前のことだった。
駐車場でガラッパチに、また会った。
わたしたちの方には顔も向けず、ゴハンをあげ続けながら、
ちょっと照れくさそうに、こう言った。
「いじめるヒトも゛いたがらねぇ…。
いまさらな゛んだけど、これ以上かわいぞうな子を増やしだくないがら、
この前ぢゃんと、この子だちの避妊手術をしてぎたんだよぉ。
大変だったよぉ~、暴れてさぁ…。」

うれしくて、うれしくて、言葉が出なかった。
あのガラッパチが、ちゃんと手術を受けてくれたなんて。
いまさらなんてことないよ、ガラッパチ。
もうこれ以上、失わないようにすること。
それが大事だよね。
ね、ジュル。