王選手とイチロー選手の共通点は、一本足打法でプロ野球の世界で超一流の名声を得ていることです。
王選手の場合、合気道の教えを受けたことが「王貞治自伝」に記されています。
毎晩の素振りのトレーニングが、呼吸法と同じ腹筋のリズム運動となり、セロトニン神経をきたえたと考えられます。
「・・・ヘソから指二本ぐらい下の、いわゆる丹田といわれるところに力をいれると、ほかのどこに力をいれるよりもバランスがよく取れることを私は発見した」との記述があります。
こうした素振りを繰り返すうちに、左足が鉄杭のようにがっしりと大地に突き刺さり、打撃姿勢がきわめて安定したと言います。
イチロー選手の場合、野手として守備についているときも、常にいろいろな運動(儀式)を繰り返していることが確認できます。
もちろん、ウェイティング・サークルやバッター・ボックス付近で準備しているときも同様です。
決まった儀式―バットのグリップを何度も握り直したり、腕を大きく回転させるといった運動を行っています。
どうもこれら一連の儀式は、呼吸法として取り入れられているのではないかと、想像されます。
ある時、呼吸法の指導者たちと雑談をしていて、イチロー選手の一本足打法が話題になったのですが、あの体幹部の安定としなやかな腕の振りは呼吸法を実践しているに違いない、という点で一同うなずいたのでした。
要するに、両者の一本足打法が、リズム運動によってセロトニン神経が活性化された結果であり、象徴だと言いたいのです。
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呼吸法の実践は「頭のてっぺんから足の先まで柱がズーンと立つ」と表現します。
これはセロトニン神経が体幹部の抗重力筋を強めた効果の表れです。
まさに、一本足で安定した状態ではないでしょうか。
しかし、それだけでは説明が足りません。
さらに、肩から先の力が抜け、腕を自由に操れるようになっている必要があります。
セロトニン神経は、体幹部を強めても、末梢部の筋には影響を与えませんから、自在なバット・テクニックが可能となるのです。
一流のプレーヤーの中には、坐禅、合気道、古武道など、日本古来の武道をトレーニングの中に取り入れる人たちが増えてきています。
そこには、勝負における平常心を養うという側面も当然あると考えられますが、このように、腰を中心に体幹部をしっかりと安定させ、肩から先をしなやかに動かす技としても有用であることも、知ってもらいたいと思います。