「仕事ができないため、仲間にとけ込めない」とか「容姿が悪いので、人中に出られない」など劣等感に悩んでいる人は少なくないが、ここに、まとめて、劣等感の克服の仕方について述べてみたいと思う。
劣等感の底に横たわるものは、<自分もあのようになりたいが、それができない>という欲求不満である。
だから、欲求不満に耐えられる自信がある人や、欲求不満を自分で解決することができる自信のある人は、劣等感に悩むことはない。
そこで、劣等感から抜け出すためには、つぎのような態度でのぞむことが必要である。
第一に、劣等感や引け目は、誰にでもあることで、人付き合いの中で自分だけがもっているものではないと考え直すこと。
第二に、劣等感は、他との比較から生まれるもので、あまり深刻に他人と比較しないこと。
第三に、他人の優れた点と自分の劣っている点だけを比較しないで、自分の長所を発見し、優越感をもつこと。
たとえば、自分は字はへただが文章はうまいとか、美人ではないが、自分の目は人を引きつける美しさをもっている、というように考えることである。
第四に、自分の短所を気にせず、長所をぐんぐん伸ばす努力をすること。
長所を伸ばせば、優越感をもつようになり、他の劣等感は気にしなくなる。
第五に、虚栄心を捨てることである。
虚栄心は、誰にでもあるものであるが、他人により以上に認められたい、よく思われたいと、実力以上に自分を見せようとするから、とかく失敗する。
失敗すると失望し、劣等感をもつことになりやすい。
自分の能力相応の願望をもてば、それなりに他人が認めてくれるので、失望することも劣等感をもつこともない。
第六に、劣等感は自分の欠点を意識しすぎるところから生まれるので、他人は、自分が意識するほど、こちらの欠点に関心をもっていないことを理解することである。
そのためには、自分の欠点を忘れるために、ほかのことに注意力を集中することである。
とにかく、劣等感は、先にも述べたとおり、自分の能力を押さえつけてしまうことになるので、自分の能力を無駄にしていることになる。
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ある著名な哲学者は「人間は、人生の大部分をだめにするために費やしている」といっており、また、ある大学教授は、「われわれは、せいぜい頭の三分の一ぐらいしか使っていない。あとは遊ばせている」といっているが、劣等感に押しつぶされている人は自分の能力の十分の一ぐらいしか使わないで、90%を眠らせているということになるのではなかろうか。
もったいない話である。
劣等感をもったなら、「自分は、なぜこんなにも劣等感をもつのだろうか」と考え、自分をみつめれば、人間が人間に劣等感をもつなどということはナンセンスだとさとり、劣等感を処理する知恵もおのずから生まれてくるものである。