人付き合いが怖い仕組みはセロトニン受容体
坐禅の呼吸法と関連付けて、セロトニン自己受容体の増減を考えてみましょう。
坐禅の呼吸法がセロトニン神経を活性化させます。
この活性化を「絶えず」継続していると、セロトニン自己受容体が繰り返し刺激されることになります。
その結果、自己受容体を発現させる遺伝子にフィードバック制御がかかり、オフの側にスイッチされます。
やがて、セロトニン自己受容体の数が減少し、それは、自己抑制機能の減少につながります。
このような構造的な変化の結果、セロトニン神経の活動レベルが恒常的に高く維持されることになります。
このことを、道元は只管打坐の仏法としてわれわれに伝えています。
ただひたすら坐禅を毎日継続すること、それだけで良いし、それ以外に最良の道はない、と説いています。
また、坐禅をやめれば、元の木阿弥ということになってしまいます。
この経験的に得られた真理は、人付き合いが怖いか否かにつながるセロトニン受容体の遺伝子によるオン・オフ制御ときわめてよく対応します。
只管打坐はセロトニン自己受容体の遺伝子をオフにし、自己受容体の数を減少させ、結果として、セロトニン神経の活動レベルを恒常的に高いレベルに維持させることになります。
これが、道元の「只管打坐の仏法」に関する神経科学的な解釈です。
毎日30分が基本
誤解がないように、もう少し具体的に説明しておきましょう。
「絶えず」セロトニン自己受容体を刺激し続けるということは、24時間連続してという意味ではけっしてありません。
30分間のリズム運動を毎日、継続することが必要で、かつそれで十分なのです。
継続して刺激し続ければ、必ず、自己受容体にフィードバックがかかります。
それは、興奮を抑制に逆転させますから、むしろ、期待した効果とは反対になってしまう可能性があります。
やりすぎは禁物。
頑張り過ぎは疲労によるマイナス効果も招きます。
30分という時間は、呼吸法時の脳波測定から、セロトニン神経を活性化する最適の時間と判定されました。
それ以上では、逆に自己抑制のフィードバックが出現し、反対の効果になると考えられます。
したがって、早朝にお線香一本分が燃え尽きる時間、坐禅をすれば十分なのです。
ただし、それを毎日繰り返すことが、セロトニン神経をきたえるのには不可欠です。
そして人が怖いという気持ちが雪解けのように解消されていきます。
そして、約100日継続すれば、やがてセロトニン神経に構造的な変化が現れ、恒常的に高い活動レベルが維持されるようになります。