Sea side memory (6)

2006-10-17 | 自作小説:Sea side memory
駅に着き、電車から降りた。当然だが、あの日と何も変わっていない風景だった。ただ、あまり輝いていない。君がいないせいもあるだろう。あの日、隣には君がいた。初夏の日差しは、まだ痛々しいものではなく、それでいて、充分な希望を抱かせるものだった。それが、僕の心を期待で膨らませていた。

 -どうして、海に行きたいの?
 -なんか、青春ぽいから。
 -テレビ的な感じね。
 -水着ってことは、一緒に行ってもいいってこと?
 -デートの誘いでなければね。
 -それって、ホシも青春したいってこと。
  テレビ的に海に向かって走ったり、浜辺で遊んだり。
 -違うわよ。ただ、、、
 -ただ、、、何?
 -海が見たい。ひとりでもいいけど、あなたとでもいいわよ。
 -俺も、ひとりでもいいけどね。
 -じゃあ、一人で行けば。
 -いじわるだね。今度の日曜でいい?
 -次の週の土曜日じゃだめかしら?
 -OK。

改札口を抜けると、左隅にタクシー乗り場があったが、そこに、タクシーは止まっていなかった。お客が来るはずもない季節なのだ。そのせいか、駅前の店も、コンビ二以外は全部閉まっていた。来てはいけない季節なのかもしれない。夏は終わった。ただ、僕には来なければいけない理由がある。

                        つづく

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