目を閉じ、思い出に浸っている間に、列車は、トンネルの中を走っていた。
あの美しい輝きは消え、闇の中にいるようだ。
僕の座席の後ろに座っている少女が、はしゃいでいた。
その母親が、危ないと言って、少女を叱るような声が聞こえる。
窓から、身を乗り出したのかもしれない。
-わたし、暗いのって、好きじゃないの
-怖い?
-いいえ、不安になるの、裏切られてしまいそうな
君にも、あの少女のような時代があったのだろうか?
たぶん、あったはずだ。もちろん、この僕にも。
ひとつの不安もなく、見るもの全てが輝き、裏切りという言葉を知らない頃が。
でも、今の僕にとって、それは、手に入らない夢だ。
前方から、一筋の光が入ってきた。一瞬、目がかすんだ。
こんな風に、君の中にあった不安を吹き飛ばしてくれていたならと思った。
「おかあさん、海だよ。」
少女は、何かを食べているのだろうか、口ごもった声でいった。
初めて海でも見たのだろうか、楽しそうだ。
僕も海に目をやった。静かに波を打つ初秋の海があった。
少し前までは、人で賑わっていたことだろう。
しかし、今は、見捨てられたような寂しさを浮かべていた。
つづく
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僕の座席の後ろに座っている少女が、はしゃいでいた。
その母親が、危ないと言って、少女を叱るような声が聞こえる。
窓から、身を乗り出したのかもしれない。
-わたし、暗いのって、好きじゃないの
-怖い?
-いいえ、不安になるの、裏切られてしまいそうな
君にも、あの少女のような時代があったのだろうか?
たぶん、あったはずだ。もちろん、この僕にも。
ひとつの不安もなく、見るもの全てが輝き、裏切りという言葉を知らない頃が。
でも、今の僕にとって、それは、手に入らない夢だ。
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こんな風に、君の中にあった不安を吹き飛ばしてくれていたならと思った。
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少女は、何かを食べているのだろうか、口ごもった声でいった。
初めて海でも見たのだろうか、楽しそうだ。
僕も海に目をやった。静かに波を打つ初秋の海があった。
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しかし、今は、見捨てられたような寂しさを浮かべていた。
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