:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ シンフォニー「罪のない人々の苦しみ」の作曲者キコとは何者か

2015-04-09 14:08:42 | ★ シンフォニー 《日本ツアー》

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

シンフォニー「罪のない人々の苦しみ」の作曲者キコとは何者か

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 前回のブログ(4月5日アップ)と今回のとを合わせると、私がこの企画の説明のために用意したパンフレットの内容と一致する。

 

3月21日マドリッドのリハーサルを鋭い目で見つめるキコ

 本名フランシスコ・ホセ・ゴメス=アルグエイヨ・ヴィルツ (Francisco José Gomez-Argüello Wirtz) は、1939年1月9日にスペインのレオン市に生まれる。マドリッドの聖フェルナンドアカデミーで美術を学び、絵画と素描の教授資格を取得した。1959年に20歳の若さで絵画の国家特別賞を受賞し、スペインの画壇にデビューする。

 キコのその後の生涯の軌跡について述べる前に、先ず彼の業績を要約すると、概略次のようなことが言える。

 多数の絵画作品の他、ヨーロッパ各地の教会に宗教壁画を描き続けている。特筆すべきは、2013年に中国政府に招聘されて、上海の聖フランシスコ・ザビエル司教座聖堂の内陣に中国政府の資金で大きな壁画を描き、いまそこに大勢の中国人が彼の絵を見に訪れていること。

 彼はまた、世界各地の教会と神学校の建築を手掛け、宗教建築の新しい様式創出に意欲を燃やしている。ユダヤ教の国イスラエルのガリレア湖岸の丘に、キリスト教施設としては建国後初めて巨大なコンヴェンション施設「ドームス・ガリレア」を建設し、2000年の聖年に聖教皇ヨハネ・パウロ2世によって部分的落成式が執り行われたが、完成後は年間数万人のユダヤ人が訪れる宗教交流の場となっている。

 音楽の分野では、彼自身ギタリスト・歌手であるが、彼が作曲した180曲以上の宗教曲は広く世界中で歌われている。そして、彼の音楽活動の頂点には、今回日本で初演さえるシンフォニー「罪のない人々の苦しみ」がある。このシンフォニーはイスラエル、バチカンをはじめ、2012年にはニューヨーク、ボストン、シカゴなどアメリカ3大交響楽団の本拠地のコンサートホールで好評を博し、2013年にはポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所正門前広場で1万2000人の聴衆を前に野外コンサートを開き、ルブリンの他、ブダペストのオペラハウスでも演奏されている。

 2015年3月には新しい指揮者にチェコのトーマス・ハヌスを加え、マドリッドのスタジアムで8000人のコンサートが開かれ、5月にはイスラエルのキコが設計したドームス・ガリレアで世界中からユダヤ教のラビ(教師)を招待して演奏する(そこには東京のユダヤ教会堂のラビも参加する)。

 来年は「3.11」の5周年目に当たり、5月7日のサントリーホールと、5月9日には福島でも、「追悼と復興支援のチャリティーコンサート」を開催する予定。

 ここでキコの人物像に戻るが、彼は青年時代無神論者であった。深刻な実存的危機の後、回心の経験を経て、自己をイエス・キリストに奉げる。

 1969年、彼は文化省からリヨン(フランス)で催された宗教芸術の世界展のスペイン代表に指名され、同じ年、キコはオランダで自分の作品展を開催した。

 こうして画家としての輝かしいキャリアーをスタートさせた彼ではあったが、地上の最も打ち捨てられた人々の苦しみの中にキリストの現存を確信すると、思い切って絵筆を折り、1964年にマドリッド郊外のスラム街の最も貧しい人たちの間に身を沈める。

 その後、キコはカルメン・エルナンデスと言う女性に出会い、彼らが住んだ極貧の人たちの環境の中で、時代の要請に叶った信仰生活の方法論を見出し、小さなキリスト教共同体の形成に道を開いた。

 こうして、最初の共同体が貧しい人たちの間で生まれたが、十字架に架けられたキリストの愛が見える形を取ったこの小さな共同体は、マドリッドの大司教の庇護のもとで成長し、やがてローマと他の国々に移植されていった。「洗礼の恵みの豊かさ」の再発見に始まる成熟した信仰への「道程」は、今や全世界に展開している。キコ・アルグエイヨ、カルメン・エルナンデスとマリオ・ペッツィ神父の3人は、5つの大陸の100か国以上で活動している「新しい求道者の道」の責任者チームを構成している。

 キコは画家として、建築家として、作曲家としての他、今ま さに宗教家としての円熟期を迎えようとしている。著書に「ケリグマ」=福音の告知=がある(邦訳あり)。

 

指揮者トーマス・ハヌスの横顔

 

マドリッドのスタジアムでリハーサルを指揮するハヌス

  ユダヤ人の母から1970年に生まれたトーマス・ハヌスはチェコ共和国で最も重要で最も刺激的な指揮者の一人。ブロンの「音楽と演劇アカデミー」でジリ・ベローラヴェク (Jiri Belohlavek) に師事し、1999年のケトヴィチェの国際指揮者コンクールで入賞してデビューした。

 トーマスはバイエルン国立歌劇場で2009年に「イエヌファ」を指揮し、2010年にはマルチン・クジェイの監督する「ルサルカ」の新作に招かれ、以来、「ルサルカ」と「イェヌハ」の再演のため毎シーズン同劇場で指揮することになった。また、2012/2013年のシーズンには新作の「ヘンゼルとグレーテル」を指揮したほか、デンマーク王立劇場でドヴォルザークの「ルサルカ」、マドリッドの王立劇場でロッシーニの「セビリアの理髪師」、ドレスデンのセンペルオペラでプロコフィエフの「ピーターと狼」、などを指揮している。さらに、バーゼル劇場、ベルリン・ドイツオペラ、オペラ・ド・リヨンでもデビューを果たした。

 シンフォニーの指揮者としては、ブレーメンフィルハーモニー、ロシアの国立フィルハーモニックオーケストラなどでも活躍しているほか、プラハの「春の音楽祭」、プラハラジオシンフォニー、シュトゥットガルト歌劇場オーケストラ、マドリッドシンフォニーオーケストラ、BBCシンフォニーオーケストラ、ニューヨークモーツァルトフェスティヴァルなどでの出演がある。

 日本との関係では、指揮者としてデビューして以来、すでに数回にわたり来日し、各地で演奏している。2016年には2月28日から3月11日まで、新国立劇場で同劇場のオーケストラと合唱団によるヤナチェックの新曲「ジュネファ」を指揮することがすでに決まっている。そのあと、一旦日本を離れるが、5月1日から再度来日して、キコのシンフォニーのリハーサルと本番に備える。 

 

オーケストラと合唱団

 今回、トーマス・ハヌスと共に来日するオーケストラと合唱団は、キコの思想に共鳴したイタリア人とスペイン人のプロフェッショナルな音楽家たちによって編成されたもので、普段からキコの薫陶を受けている彼らの信仰生活から生まれる精神性とハーモニーによって、このシンフォニー「罪のない人々の苦しみ」が要求するスピリチュアルな深みを、見事に描き出している。

 これは、単なる洗練された演奏技能だけでは決して表現し切れない曲の魂に関わる一面であり、キコが世界中どこであれ、常に自前の演奏家集団を連れて歩くのはそのためであると考えられている。

 

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★ 「犠牲者の冥福を祈り、被... | トップ | ★ 2015年 4月の野尻はまだ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
シンフォニー (サカイ ケイジ)
2016-07-02 12:23:40
5月7日サントリーホールで素晴らしいイヴェントを体験しました。私の所属するカトリック教会で、CDによる鑑賞と
ケリグマの本を紹介したところ、参加者はみな感動の極みでした。惜しむらくは、1.各楽章にいくつかのソロが入るが意味が分からない2.合唱の歌詞が部分的にも。
日/英/独分いずれかで是非理解したいがどうすればよろしいでしょうか。familie-sakai@nifty.com
返信する
Unknown (谷口幸紀)
2016-07-03 10:32:55
サカイ ケイジ 様
私の手元に指揮者用の総楽譜があります。
ソロ、コーラスの歌詞もその中にあります。
まだ、取り出して整理はしていませんが、何とかなりそうです。ちょっと時間をください。
谷口幸紀
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

★ シンフォニー 《日本ツアー》」カテゴリの最新記事