JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

山口舞選手

2012-08-30 01:18:50 | 選手紹介
・基本情報
背番号4番、176cmのライトアタッカー

・スパイク
所属チームではブロードを得意とするセンターなので、代表でもライトからブロードに入ります。その際、まずはライトからセンターに切り込むBセミの助走で右から中央に動き、そこから鋭角的にライトに戻るようにしてCワイドかLを打ちます。ライトアタッカーなのに、Bセミへの切り込みに引っ掛けてブロードに走るため、ほぼ毎回が一人時間差になり、相手ブロッカーを混乱させます。もちろんBセミへの切り込みも上手です。S1でレフトから打つときには、Bクイックに入るか、センターのBクイックの後ろからAセミにブロード助走で入ります。ロンドンのドミニカ戦の第3セット後半とロシア戦では、S1でサーブレシーブに入らずにレフトの端からCワイドまで走る攻撃も見せました。また、どこから打ってもフェイントとブロックアウトを得意としますが、強打すべき時も非力です。ライトオープンやレフトオープンやバックライトなどの攻撃は中学生レベル。2段トスも打てず、後衛では役立たずの場面も目立ちます。

・レシーブ
サーブレシーブに入ります。ただ、非常に不安定で、リベロの佐野選手とレフトの木村選手に負担をかけています。スパイクレシーブは非常に良く、読みもなかなか優れています。フェイントを打たれると分かったら、打たれる前に落下点に入ることもあります。

・トス
所属チームでは、オーバーでクイックやブロードに上げたりとなかなか良い動きをしています。しかし代表では2段トスを任されていないので、なかなかトスを見ることはありません。たまに見せるレフトオープンへのトスは普通の2段トスという感じです。

・ブロック
センター出身のため、かなり綺麗なブロックをします。位置取りが良く、また下半身が流れても肩から上はしっかりと力が入っています。ただ、やはり180cm後半のブロッカーと比べると、全体的に小さくまとまったようなブロックになってしまっています。

・サーブ
やや斜め助走のジャンプフローターを打ちます。腕だけの力でジャンプの推進力をボールに平行に伝える感じで、威力が全くなく、ほとんどAパスを返されてしまいます。

・JMが選ぶ思い出のシーン
WC2011アメリカ戦で、ライトから切り込んで切り返してブロードに走る囮で、ことごとくレフトを1枚ブロックで打たせたシーンです。チーム作戦と自身の動きが完全に融合していました。

2 コメント

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山口の一人時間差 (trefoglinefan)
2012-11-10 11:43:32
 JMさん、数多くの記事を楽しく読ませて頂いています。私は山口の一人時間差が好きです。コンビはかり言われますが、本当に相手を惑わす動きが多いのが、見ていて本当に面白いですよね。
 スピードがありながら一筋縄ではいかない動きもさることながら、私がよく驚嘆するのは、高い身体能力から生まれる滞空時間のやたらと長いジャンプで、ジャストタイミングで打たずにわざと無理な体勢で打って、相手のタイミングを狂わせるプレイです。
 どんな選手も、きれいで格好いい、力強いスパイクを打ちたいでしょうが、山口はそのようなことを全然考えないで、下手くそに見えることも非力に見えることも厭わない、といった感じですよね。そういうところが私は好きなのですが、実際には嫌われている要因かも知れません。
 山口は年齢的に最後の五輪でしたでしょうから、同様の上手い選手が出てくることを期待したいのですが、なかなか後継者も居ないのかなと思うと、何だか淋しいです。

 
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trefoglinefanさん、 (JM)
2012-11-10 15:13:12
コメントありがとうございます。

おっしゃるとおり、山口舞選手の滞空時間の長さは半端ないですね。そのため、ブロードでも、Cワイド近くでジャンプし、空中でかなりの距離を移動して、ブロックを外してLで打っていくこともあります。こうすると、相手のバックレフトを守る選手は「タイミングがズレたからフェイントだ」と思って前に構えます。その逆モーションをついて長いコースに打ったりしますよね。これは凄いプレーですし、そもそもこのブロードに入る前にはBセミへの切り込みの囮助走まで入れているわけですから、非常に厄介な攻撃だと思います。

全日本では山口舞選手がBクイックに入るシーンは少ないですが、山口舞選手のBクイックも滞空時間の長さを活かした良いプレーに見えます。と言うのも、山口舞選手は速いBクイックに入っていきながら、空中で留まってトスがレフト側に流れるのを待ち、そこからブロックの脇を抜いて相手のバックライトの方向に打つことがあります。いわゆるBクイックの引っ張りですね。すると、バックライトには相手セッターがレシーブに入るので、セッターがレシーブしてしまい、2段トスになります。こうすることにより、相手チームの攻撃を単調にできます。

最終的に山口舞選手は不動のライトスタメンにはなりませんでしたが、新鍋理沙選手と山口舞選手というタイプの異なる2人を併用し、相手チームに2倍の分析と対策を強いる形は本当に良かったと個人的に考えています。2012年の山口舞選手は、遅れてきたセンターブロッカーにフェイントを当てるプレーと高速化されたBセミを新兵器として携えてきましたが、この2つがやや不発だったこととそれ以外の山口舞選手のプレーがかなり対策されてしまったことが残念でしたね。

ただ、諸外国のライトと比べて身長もサーブもレシーブもバックアタックも劣る山口舞選手がここまで通用したという事実はこれからの強化において非常に参考になるはずです。センター出身のレフトがBクイックに入る形など、山口舞選手の応用で様々なパターンが作れます。山口舞選手がグラチャン2009の韓国戦で流星の如く現れたのと同じように、誰かがWGP2013であっと驚く動きを見せてくれるかも知れませんね。まずはVリーグに注目したいと思います。
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