自燈明・法燈明の考察

この時代に立正安国論について考えてみた⑦

 さて、立正安国論についてここまで考察を交えながら書いてきました。

 一つ言える事ですが、日蓮の立正安国論とは鎌倉幕府に対する諌暁の書ではありますが、そのままその内容を読み解いても現代には意味が無いと言う事です。また立正安国論とは諌暁の書ではありますが、日蓮の教学を明かしたものでもありません。だから教学として学ぶには、少し異質な御書だと私は思うのです。鎮護国家の仏教とは、平安時代までの公家や朝廷の仏教観であり、日蓮が生涯、人々の間で布教する鎌倉仏教の考え方とは異なるものなのです。

 考えても見て下さい。日蓮が立正安国論で仁王経、金光明経、法華経を多用したのは何故なのか。それはこれら経典が「鎮護国家三部経」であるからです。つまり日蓮の立正安国論は鎮護国家の考え方に基づいて、そこに天台教学の考え方である法華経最大一による解釈を加え、当時の幕府の宗教政策に対して諌暁したものなのです。

 それに対して幕府の重臣の北条重時や鎌倉仏教界の中心者である忍性房良観が、それぞれの思惑の中で、自分達の既得権益が壊される事を恐れ、その為に日蓮に対して迫害を加えて、彼の人を亡き者にしようとしました。

 だからこの様な立正安国論を読み解くにしても、政教分離で政治と宗教の分離が言われ、民主主義の政治形態の現代に、しかも「鎮護国家の仏教」という思想すら無い現代において、そのまま立正安国論をただ読み解く事にどれだけ意味があると思いますか?

 ただ一つ、日蓮の立正安国論から読み取るとした場合、それは為政者は治世の根本の目的を間違えてはいけない。そういうメッセージなのではないでしょうか。

 鎌倉幕府は仏教を「京に負けない文化都市鎌倉」の構築の為に利用しました。しかし当時の政治から見た場合、仏教とは鎮護国家の為のものでした。つまり鎌倉幕府は仏教への認識を間違えていました。しかしその間違えた思惑にのって利権を貪ったのが、忍性房良観を始めとした当時の鎌倉仏教界の有力僧たちです。日蓮の立正安国論で指摘した内容が的を得ていた事から、北条重時(極楽寺入道重時)や忍性房良観は、自分達の既得権益を守ろうと、生涯に渡り日蓮を迫害し続けました。

 因みによく日蓮の法難と言いますが、松葉が谷の法難、伊豆流罪、龍ノ口の法難、佐渡流罪はこの幕府と鎌倉仏教界の既得権益に切り込んだ事からの迫害であり、残る小松原の法難は、東条御厨の主である領家の尼と、東条郷の地頭であった東条景信の利権争いに日蓮が関与し、領家の尼の権益を守った事に起因した迫害とも言えるのです。つまり日蓮の法難の根本にあるのは、こういう為政者に対する諌暁や反発の行動によるものであり、けして法華経を弘通したが故というだけでもありません。

 ちょっと話はずれてしまいますが、日蓮の生涯についても、この辺りをしっかりと理解をしておく必要があります。

 歴史に「もし」はタブーとされていますが、もし日蓮が現代に生まれていたとして、同じ様に今の政府に対して諌暁をするとしたら、恐らく創価学会と公明党の事、そしてそれによりかかり自分達の議席維持をもくろむ自民党に対して、激しく切り込んでいるのではないかと私は思います。

 現代では国は民主主義の政体をとっています。民主主義では「一人ひとりが政治に関心を持つ」という事が根本になります。そして自分の政治的な代弁者を選ぶのが選挙です。議会制民主主義ですから、選挙とはそういう意義を持つわけです。
 しかし創価学会では人々が「政治に関心を持つ」事を遠ざけ、その政治の考えの中に「御利益信心」を潜り込ませ、「政治の代弁者を選ぶ」という選挙を、信仰の御利益を受ける行動へと変容させています。これはまさに民主主義に対する冒とくであり破壊行為です。

 「為政者は治世の根本の目的を間違えてはいけない。」という事を日蓮が考えていたのであれば、選挙を信仰活動にする創価学会に対しては、徹底した糾弾を行うでしょうし、それを利用して自党の議員の議席を維持拡大する事をもくろんでいる自民党に対しても同じく糾弾するはずです。

 しかし現代に日蓮はおらず、結果、創価学会では日蓮の言葉を巧みに利用して、選挙活動を現在の国家諌暁だと言い、会員達には無分別に公明党への集票活動を命じ、必要であれば自民党への集票活動も行わせています。「集票すれば宿命転換できる」「それで絶対的幸福境涯を得る事が出来るんだ」とうそぶく訳です。そしてその集票力を背景として政権与党内に影響力を保持し続けているのです。

 結果、日本は今世紀に入ってどうなっていますか?

 消費税の税率は上がり、年金制度は崩壊し、法治国家としてあるまじき安保法制を無理くり成立させ、非正規雇用の大量生産と、それによる所得格差の拡大。挙句の果ては、その所得格差の為、若い世代が結婚を諦め始めており、少子高齢化に更に拍車を掛けているではありませんか。そして自民党は国外から移民の流入を進めているので、国内の治安も悪化していく事でしょう。まさに日本を破壊してきているのではありませんか?

 こういう事を、本来であれば創価学会員は敏感に感じ取らなければならないはずが、信仰の美名の元にその視点すら持たない様に会員を教導し、そこからはみ出す会員が居れば「共産党の手先」「著作権侵害により法的に潰してやる!」という行動を信濃町の創価学会執行部は取っています。近年、ツィッター上では「スラップ訴訟」と話題になっている奴ですね。

 現代に立正安国論を読み直すのであれば、読み直す側は、こういった現実社会で起きている事を諦かに理解する。またその必要性を啓蒙する内容でなければならない。私はその様に考えています。


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