前の記事で「自我」という事について法華経の久遠実成という教理から思い巡らして来た事について書いてきました。この事について今回も書いていきたいと思います。まあここで書いているのは、現段階での私の思っている事であって、これが真実という事は言いません。しかし少なくとも自分自身の在り方について、一人ひとりが想いを巡らすことはとても重要な事だと思うのです。
そこに想いを巡らさないことから、人々は下らない宗教の奴隷となり、自分の誕生や死についても、宗教屋から容易に握られてしまうと私は思いますし、それによって自分自身の心の自由をも奪われてしまう事になるのではないでしょうか。
◆多重人格に似た構造
さて、先の記事では完全に独立して永遠に続く自我は無いと言いましたが、それでも「個」としての自我はあると思います。これはとても相矛盾する様な論点に聞こえるかもしれませんが、これを具体的に表せば「解離性同一性障害」に於ける人格というものに、極めて親しいと私は考えています。

これはAIの専門家ベルナルド・カストラップ博士の論文にあったことで、2019年12月にこのブログの記事でも取り上げましたが、博士によれば、この宇宙にはもともと一つの意識があり、これを仮にここでは「宇宙意識」と呼ぶ事にします。私達一人ひとりの個人の意識とは、この宇宙意識が「解離性同一性障害」状態の様にその主たる意識から分裂した意識であると言うのです。
「24人のビリー・ミリガン」という話があります。このブログを読んでいる方でもご存知の方がいるかもしれません。ビリー・ミリガンとは1955年生まれのアメリカ人男性で、強盗強姦事件で逮捕、起訴されたのですが、彼は「解離性同一性障害」を患っていると主張、その裁判で注目され一躍有名になりました。
この解離性同一性障害では、一人の中に複数の人格が同居し、それぞれの人格個別に記憶もあります。最近言われているのが、幼児期に虐待を受けた場合、その虐待から人格崩壊を防ぐ為に脳内で主たる人格とは別の人格を造り出し、その虐待という苦痛をその人格が受け入れる事で、主たる人格の崩壊を防ぐための心の防御反応の結果とも言われています。
実際にこのビリー・ミリガンは、主人格の他に24の人格が同居しており、犯罪を起こしたのもこういった同居しているミリガンとは別人格が行った事であり、主人格は認知できていなかったというのです。
これに似たような事で、私たち一人ひとりの人格というのも、宇宙にあった一つの意識から分離して生まれた人格であるというのが、ベルナルド・カストラップ博士の主張した内容でした。つまり私達の意識とは、宇宙意識にあった主人格から分離して出来た人格だと言うのです。
私はこの考え方にとても共感を覚えています。何故なら私の解釈している久遠実成の釈尊、またそれから派生したと言われる迹仏や一切衆生との関係が、これにとても親しく感じているからです。私の考えでは、恐らくこの宇宙の誕生と共に久遠実成の釈尊というのが存在しており、全ての生きとし生ける物の意識は、そこから分離派生した意識ではないかと思うのです。そしてこの久遠実成の釈尊とは、九識論でいう阿摩羅識として、全ての生き物の心の奥深くに存在するものであり、その底心の働き掛けにより、生き物はこの世界で様々な経験をして、それらは全て阿頼耶識へと個別に蓄積されていきます。そしてこの蓄積された記憶というのは、近年、神智学で言われる「アカシックレコード」の様に、多くの分離した意識の間にも共有されたりするので、それにより例えば「生まれ変わり(輪廻転生)」の様な事象も起きたり、いわゆる霊能者と言われる人達にも見られる「超常現象」という様な事も起きるのかもしれません。
◆意識や人格の統合
さて、この様に個々に分離した個別の人格ですが、例えば24人のビリー・ミリガンの様な解離性同一性障害の場合、分離した人格を主人格に再統合するという治療法があると言います。これは別人格で経験した記憶や、その別人格の存在をも主人格に受け入れさせる事により、統合を図っていくというもので、これにより個人に同居していた多くの人格は無くなっていくと言うのです。ただこれは単に無くなると言う言葉は正確ではなく、統合されてしまう人格の記憶などは、その後の主人格に引き継がれるとも言われています。
そこから考えると、私達が個々に「別人格」と今の段階で認識している「自我」も、何れ(これはとても長い時間のスパンと思われますが)宇宙意識というレベルに再統合される時が来るのかもしれません。そしてこれは自我が無くなると言うのではなく、元々の意識のあり方に戻る言う事であって、自我が消失すると言うものでは無いと思うのです。そもそも私達の意識の奥底には、今この瞬間にもこの宇宙意識というのは存在していますので、そこに戻ると言う事でしょうか。
実はこの辺りの事については、以前に紹介したニール・ドナルド・ウォルシュ氏の著書である「神との対話」や、ジャン・ピエール・プチ氏の「宇宙人ユミットからの手紙」にも書いてありましたので、次回にそれらについて、再度紹介し、考察を加えてみたいと思います。