自燈明・法燈明の考察

心のかたちについて-中間世④

 中間世に現れる「裁判官」、これはけして裁きを行う存在として出現してはいません。中間世において自分自身の人生を評価するのは、自分自身であり、そこはけして他者が存在して裁かれるのではないと言います。

◆裁判官の存在
 では裁判官とは何をするのか。ホイットン博士の多くの被験者が語ったのは「助言」であり「励まし」であると言います。被験者が人生の回顧で懊悩した時、この裁判官たちが大局的な観点から、被験者が前の人生でとった行動を客観的に見せる事で、被験者は平静を取り戻す事が出来たと言います。

 またホイットン博士の研究によると、この中間世では、終えた人生を評価すると共に、次の人生について計画を立てると言いますが、その際に裁判官たちは、被験者にどの様な魂のカルマがあるのか、またどんな点を学ぶ必要があるのかをふまえ、幅広い助言を与えると言います。



 実はチベット仏教の「チベット死者の書」においても、魂が中間世で次の人生の計画を立てる事について同様な記述があると言います。「バルト・ソドル」は肉体を去った魂に対して次の様に語ると言います。

 「汝の生まれんとする場所を調べよ。肉体を選択せよ」

 またこの時、裁判官が助言するのは魂の望むものではなく、魂が必要とするものに応じて忠告を与えると言います。だから魂がいかなる代償を払ってでも一心に成長を追い求めるつもりがなければ、その助言は複雑な感情をもって受け取られる傾向がある様です。被験者の中である女性は語りました。

 「私はどんな困難が人生の途上に生じてもそれを直面できるよう、次の人生を計画するのを助けてもらっています。弱い人間なので責任を回避する事ばかり考えていますが、障害をのりこえるための障害を与えられるべきだとわかっています。もっと強く、もっと意識を高め、より進歩してさらに責任を果たせるように。」

◆魂の計画とは
 ここではさらっと書いていますが、この中間世で魂は次の人生について計画をしているというのは、とても興味深い事だと思います。これまで紹介してきた内容はすべてホイットン博士が行った研究結果なのであり、何か怪しいご託宣で語られた内容ではありません。複数の被験者を退行催眠で中間世に誘導し、そこで被験者から語られた内容です。そこでは魂は自分自身で人生を評価し、そこでは魂が自らの成長度合いを評価し、そこに必要な課題を次の人生で取り組むための計画を行うというのです。

 ホイットン博士のこの本では「カルマ(業)」という事について、次のように書かれています。

 「むかしから言われているように、カルマとは絶え間なく生まれ変わりを続けさせ、つぎの転生の生活環境を決める因果応報のシステムである。古人は『目には目を』の原理でカルマから解放されるーすなわち人は遅かれ早かれ自分が他人を喜ばせたり悲しませたりしたのと同じことを、そっくりそのまま自分も体験する事になる、と教えてきた。だがホイットン博士の被験者によれば、人生をそんなふうに解決する必要は無いのだ。カルマとは本質的に学ぶことだ、とバルドを訪れた人々は強調する。カルマは魂を発達させる可能性をもつすべてのものに働く原則である。学ぶことは不可欠であるが、どの様に学ぶかー自分も代わりにひどい目にあうか、同じような苦労をするか、知恵をめぐらして洞察するかーはさほどの問題ではない。間違いなく、そのプロセスにとって基本となるのは奉仕である。」

 一般的に『業』とは過去世の行為によるもので、私達の人生とはその業により左右されると、多くの宗教や宗派で捉えられていますが、実はそれは違うと言うのです。仏教では過去世で泥棒であれば今世では貧乏な生活を送るとと言い、過去世に殺人したら、今世では人から殺められるという様な事を説いていますが、実は業(カルマ)の本質とは、そういった事では無いと言うのです。
 大乗仏教では業について、「願兼於業」という考え方があります。これは菩薩が本来は受けなくても良い業を、この世界に法を弘める為にあえて自分で業を背負って、この世界に生まれて来るという考え方です。

 じつはホイットン博士の研究から導かれた「業(カルマ)」という考え方も、こういった大乗仏教の願兼於業に近しい考え方であったというのは、とても興味深い事だと思いますがいかがでしょうか。

 またここで言う「魂の計画」という考え方ですが、これが事実であれば、人生とは「予定調和」の世界であるという事になります。この人生で起きる様々な苦難や悲劇も、全ては自身の魂の成長のうえで計画されていた事。そこには一切、無意味な事はないという事になります。

 「輪廻転生ー驚くべき現代の神話」

 この本の中で、J.L.ホイットン博士が述べているのは、ここに紹介しただけではなく、幅広く深い内容が書かれていますが、それを全てこのブログで紹介する事は難しく、要点を掻い摘んで抜粋して紹介しました。

 ただそこからかいま見えた事は、多くの示唆を私達の生き方に示す内容であると、私は考えています。

(続く)


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