次世代総合研究所・政治経済局

現代の日本および国際政治経済に関する隠れた視点を、国内のどのメディアよりも早く提供するページです

何がいったいダメなのか

2007年08月19日 12時04分03秒 | Weblog
 防衛庁事務次官人事が混迷の末決着した。

 守屋次官退任、小池防衛相の意中だった警察庁出身の西川徹矢官房長の退任、そして増田好平人事教育局長の次官就任、さらには守屋氏が推していた生え抜きの山崎信之郎運用企画局長も退任が決まった。

 守屋 武昌氏といえば「大物次官」とされているがなぜ大物なのかといえばかつて橋本内閣の時、普天間基地返還などで一貫して米側をはじめとする交渉に携わっていたからだ。当時は長官官房防衛審議官(併内閣審議官)、ちなみに当時の外務省の担当者は「あの」田中均である。当時のいきさつを実務者として一番良く知っている人物だっただけに基地の名護移設問題では硬直的な姿勢を取り、地元名護市にとって「目の上のたんこぶ」であった可能性はあるだろう。

 石破茂元防衛庁長官ですら「文民統制に服すべき」と防衛次官を批判、小池大臣の起用案に対し、「思い付きでやった人事なのかといえば、ある意味でよく考えている人事かもしれない」と一定の評価を示したとされる。

 しかし「報道で名前が上がった」ということも含め局長級幹部3名が一度に退任することは異例だ。文民統制(シビリアンコントロール)上、次官が人事に異を唱えるのは問題とする論調も多い(事実日経新聞社説もそう)だが、問題はそう単純ではあるまい。


 ①まず、小池防衛相の人事だが、人事が「混乱」すること自体、氏の責任だ。この原因は1)情報管理、2)手続き上、のいずれか、あるいはいずれもに問題があったということ。つまり小池氏が「組織人」でないことを露呈している。数十万人に及ぶ自衛隊員を擁する巨大組織の頂点に位置するのが防衛相である。組織の動かしかたが分かっていないようでは有事の際にも危なっかしいことこの上ない。

 ②更に、塩崎官房長官や守屋次官との応酬の内容が「いった」「いわない」の水掛け論、レベルが極めて低い。これまた2人とも有事の際の責任担当大臣として不適格だ。


 ③そもそも内閣改造を待たずして防衛次官の首を切るのもおかしい。自分の意思で切ることが自在にできるはずと主張するなら改造後に新しい防衛相が就任した際にももう一度切れるはず。しかしそれが非常識であることは誰にでも分かる話だ。

 ④この問題に「文民統制」を持ち出すのはおかしい。「文民統制」の問題ではなく、「政と官」一般の問題だ。 ここで文民統制を持ち出すのは1)広義の文民統制(政のコントロール)を狭義の文民統制(自衛隊員を政治家を含む私服職員が統制)を整理しており、さらに2)「政と官」の問題であることを意識していない、という二重の意味で不適当だ。

⑤更に、いくら「政」が「官」に卓越するからといってそれはこれ見よがしに人事権をちらつかせることではない。安倍総理のお墨付きがあるのなら、小池氏は焦らずに粛々と手続きを踏むべきであった。

 今回は「痛み分け」とされているがそれは塩崎、小池の間のことであって、防衛省内はかなりの混乱状態となった。新次官が異例の若さ(現次官より6歳下)であることからもそれが分かる。特に不祥事があったわけでもないのにやはり被害者といっていいだろう。


 小池氏を次期改造内閣で無傷のまま留任させるようでは安倍内閣もいよいよ終わりだ。

 
 それにしても小泉内閣の田中大臣といい、小池大臣といい、どうして「一部の」女性大臣はこうも「お騒がせ」なのか。人事問題で混乱し、次官が退任するところまでそっくり同じだ。何かがおかしいとしかいいようがないだろう。


最新の画像もっと見る