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CG映画技術に確認に終わった『日本沈没』

2006年07月21日 01時05分15秒 | Weblog
CG映画技術の確認に終わった新作『日本沈没』  映画
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 映画最新作『日本沈没』(樋口真嗣監督)を見た。平日なのに年配者の割合が観客に多く、1995年(平成7年)の阪神・淡路大地震以降、災害が現実味を持って捉えられている印象を持った。東京消防庁、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東大地震研、防衛庁、陸上・海上・航空各自衛隊が全面的に協力しており、迫力のある画像となっていた。
http://nc06.jp/

 しかし、残念ながら内容的にはCGの最新技術を確認するだけに終わった。

 小松左京自身も語っているように、元々三百数十万冊の驚異的な売上げを記録したこの小説は、日本人が世界各地に散らばった放浪の民族になったらどうなるか?という、すぐれて哲学的、政治的な課題をテーマにしていて、地球物理学への関心は副次的なものだ。

 前作(1973年・東宝)では、このあたりのことはラストシーンや渡老人(島田正吾)の登場で強烈なメッセージとして発せられている。しかし、今回はそうしたメッセージは伝わってこない。単なるSF娯楽映画になってしまったといえる。

 総理役の石坂浩二には「むしろ日本人はどこにも逃げないで滅びるのがいいかもしれぬ」といわせ、当初のテーマから外れてしまった。「日本沈没」が手段(契機)でなく目的(結果)になってしまったのだ。

 前作では、最初は半信半疑だった政府が、日本国民と資産を海外へ脱出させる「D計画」を立案・発動したが、今回は政治家の矮小性(総理臨時代理が仏像を賄賂に国外に脱出など)などが入っていて、ある意味「リアリティ」に富むが冗長な感がある。どうせなら国外に脱出できる日本人とそうでない日本人の差が生じたわけなども入れ、もっと社会性を取り入れたらよかった。

 前作のキャストは、田所博士:小林桂樹、小野寺俊夫:藤岡弘 、阿部玲子:いしだあゆみ 、山本総理:丹波哲郎であったが、今回のキャストは、田所博士:豊川悦司、小野寺俊夫:草塙・、阿部玲子(ハイパーレスキュー隊員):柴咲コウ 、山本総理:石坂浩二、 鷹森・危機管理担当大臣:大地真央 である。

 柄本明などの個性派俳優も使っているのだから同時進行的にさまざまな地点におけるストーリーを展開させても面白かったのに、各地の状況は全て津波や爆発などの「限界画像」ばかりで、徐徐に地震の兆候が現れるなどの「不気味さ」の演出は全くない。

 ストーリーもCG画像のほかは草薙と柴咲の恋愛しかなく、ストーリー展開も単調かつ平板である。

 技術(CG)に過大な依存をした平凡作というのが私の結論である。


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