悪性脳腫瘍に対するレーザー治療

悪性脳腫瘍で苦しんでおられる患者様、および御家族に、私が開発したレーザー治療の有効性、安全性を紹介します。

2015年PDT10例目

2015-08-23 09:43:44 | 日記
本年度の10例目は初発の悪性グリオーマ例でしたが、右側頭葉から大脳基底核、中脳まで進展し、術前から中等度の左半身麻痺を呈し、トイレも介助でなんとかといった状況の方でした。術中迅速診断で、かなり分裂像のめだつhigh grade gliomaと診断され、膠芽腫の可能性が高いと判断されました。右側頭葉を内側海馬構造を含め広範囲に切除、右視床背側核への浸潤腫瘍も切除した後、中脳錐体路近傍へアプローチしましたが、突然皮質運動誘発電位が消失してしまいました。添付したナビゲーション画像をみても、腫瘍最深部で錐体路(緑)が腫瘍内を走行しており、慎重に白質刺激を繰り返して、ミリ単位で進むべきだったかもしれません。しかし、膠芽腫が中脳に残ることは極めて重篤な神経症状の増悪を意味します。ご家族にはこの点を説明させていただきました。PDTは側頭葉に4箇所、視床に1箇所、島回に2箇所行いました。今後は、わが悪性脳腫瘍チームの総力をあげ、可能な限りの回復を図りたいと術後思っております。患者様、ご家族、そしてPDTに期待されている多くの患者様、医師のためにも。昨日、日本テレビで、脳腫瘍に侵された少年の闘病をドラマ化しておりました。その中で、少年の両親が新しい悪性脳腫瘍の治療を模索し、本や資料を調べている中にPDTが承認された記事がでてきました。また、PDTを紹介したK先生の書籍も少しですが表紙が写っていました。メデイアの力は甚大です。このドラマをご覧になった悪性脳腫瘍の診断を受けられた方々が、PDTに少しでも興味を持っていただけたら幸いと思います。

2015年PDT9例目

2015-08-15 15:47:38 | 日記
今回の患者様は他院にて過去2回の開頭手術歴のある、延髄症例です。延髄の内部に浸潤性に増殖しており、摘出も非常に怖いものでした。経頭蓋の運動誘発電位、手足末梢刺激の感覚誘発電位のモニタリング、気管内挿管チューブに電極をつけた声帯モニタリング、さらに経皮的ペースメーカを留置して、万全の安全対策を行っての手術です。この様な電気生理学的モニタリングに長けた2名の検査技師さんのおかげで、我々は安心して脳腫瘍、とくに髄内腫瘍の手術に取り組んでいます。この患者様は、術前のtractographyにて腫瘍内部を左右の皮質脊髄路が貫通していたため、摘出の途中で運動誘発電位が低下した時点で、終了としました。最後にPDTを行ったのですが、延髄の小さな間口から摘出していたため、照射が十分とどいていません。延髄後面全体に照射してしまっている様に見えます。効果はこれからの画像で判定していきますが、摘出腔内に均一に照射できる方法を考えていかないと、科学的根拠がなかなか得られないと思います。理工系の共同研究者と今後、検討していきたいと思っています。ちなみに患者様の術後ですが、幸い神経症状の悪化は見られませんでした。これから補助療法につき十分検討していきたいと思っています。