悪性脳腫瘍に対するレーザー治療

悪性脳腫瘍で苦しんでおられる患者様、および御家族に、私が開発したレーザー治療の有効性、安全性を紹介します。

第25回日本光線力学学会

2015-07-29 09:02:37 | 日記
さる7月10日に京王プラザホテルにおいて、私の1学年先輩の同窓の先生が会長で第25回日本光線力学学会が開催されました。そのメインシンポジウムが、光線力学的療法(PDT)の温故知新というテーマで執り行われました。私は脳神経外科の代表として、脳腫瘍に対するPDTの温故知新を15分間講演させていただきました。添付したのはその中で用いたスライドの一枚です。PDTが悪性脳腫瘍に有効であろうことは、40年も前から考えられていました。しかし当時は、腫瘍細胞に選択的に取り込まれるはずの光感受性物質の質が悪く、励起レーザーも600kgもする大型で高価なものであり、脳腫瘍治療法としてのPDTの確立は困難でした。実際、PDTを最初にヒトのガンで用いたTJ.Dogherty教授は、1998年の論文において、現在のままではPDTの未来は無いと述べているのです。ところが、1995年頃日本で開発されたTalaporfin sodiumは極めて質の高い光感受性物質であり、励起レーザーも14kgと非常にコンパクトでコストも抑えられたのです。2000年以降にガンに対するPDTとして国家レベルで承認されたのは、Talaporfin sodiumとPDレーザーの組み合わせだけ(つまり日本だけ)なのです。今回、悪性脳腫瘍に対する世界の研究者によるPDT研究の歴史をまとめるにあたり、私が如何に良い薬に恵まれ、良い機器に恵まれ、良い指導者や研究仲間に恵まれていたのかを再認識しました。悪性脳腫瘍に対するPDT研究の世界のhot spotは、カナダ、オーストラリア、ドイツ、オーストリア、イギリス、そして日本です。今、第二世代と呼ばれる私たちがPDTの世界への普及に貢献すべく、日々努力を重ねていますが、同じ志を抱いた先駆者方の業績を今回まとめる機会をいただき、改めて本治療の論理的基盤形成に多くの叡智が必要であったことを知りました。メルボルンのAH Kaye教授は67歳になられた今でも新しい光感受性物質の作成に邁進しているそうです。私の研究も今後も患者様一人一人を救うために継続していきいと思っております。

2015年PDT8例目

2015-07-27 18:46:12 | 日記
久しぶりの投稿です。学会や依頼論文作成に多忙を極めており、なかなかアップできませんでした。今回の患者様は初回手術を他院で行われ、残存した腫瘍に対してPDTを行いました。言語関連野であり、最深部は運動神経路に接しており、覚醒下手術で運動誘発電位モニタリング下の手術になりました。覚醒時間は30分程度でした。保続傾向が出現したので、側頭葉側は無理できませんでした。覚醒中、ずっと右手の動きを確認しながら、腫瘍の最深部を摘出し、最終的にレーザーは6箇所に照射しています。術後は失語症や麻痺の悪化はありませんでした。術後画像でほぼ満足出来る摘出度が得られており、これからPDTの効果がゆっくり出現してくるのを待ちたいと思います。本例をもって、保険適応となってからグリオーマに対するPDT施行が20例となりました。多くの学会でも報告してきましたが、初期経験の区切りとして、現況と問題点、今後の展望について、論文化する予定としています。夏休みが少し取れるので、集中して論文作成に励むつもりです。