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月想記

戯言日記

愚者たちの機械学

2016-12-04 | 芝居
12月3日(土)川崎市アートセンター アルテリオ小劇場にて万有引力の「愚者たちの機械学」
を観劇。

久々のオリジナル作品で先入観のない状態で物語に浸れたし、次の展開がわからない楽しさを
持って観た。始まった途端いつも全身の毛穴が開いて鳥肌が立ち、彼らの作り出す世界に魂を
持って行かれる。

万有引力のメンバーはとにかく身体能力が素晴らしい。肉体そのものの美しさとその動きの
見事さ。目と耳と鼻と全てを刺激し訴えてくる。生演奏の音の迫力と臨場感。
暗がりで揺らめくマッチの灯りと煤の匂い。全部がたまらない。

森ようこさんの凜とした美しさ。タイツで顔面を覆った姿での踊りは、狂気と怒りが見事に
表されていて鬼気迫るものがあった。
曽田明宏さんのニジンスキーのような舞踏も、圧巻だった。鋼の肉体。そこに宿る確かな意思。
万有の公演は舞台セットや小道具などの美術がいつも素晴らしいのだけれど、今回もその精緻な
美しさが随所で劇に深みを与えていたように思う。

ラストはいつもながらの終わり方で観客は突き放され取り残される。そして各々が劇を持ち帰り
自分の中の物語を完結するのだ。
この終わった瞬間の呆然とした感じが好きである。万有の舞台でカーテンコールらしきものが
あったのは、これまで私が観た中では唯一リア王ぐらいか。

今回劇場で来年の身毒丸のチケット先行予約をやっていて、とても良い席を取れた。
うふふ。あとはライブと重ならない事を祈るのみ!w


B機関 毛皮のマリー 

2016-11-14 | 芝居
少し前だけれど11月4日(金)ザムザ阿佐ヶ谷にてB機関 毛皮のマリーのソワレを観劇。

いろんな劇団のマリーを観てきたけれど、これは全くの新しい衝撃のマリー。
舞踏家点滅さんの演出らしい踊りと演劇の見事に融合した世界。
よく知ってる話なのにものすごく新鮮で感動してしまい、めちゃめちゃ心が震えた。素晴らしい!

開演前に見えている舞台上のセットが海辺の感じで岩場の真ん中に船。あれ今日何の舞台を観に
来たんだっけ?と一瞬思う。船はマリーのバスタブ?と思ったらその通り。
そのまま海辺がマリーの屋敷。こんなのは初めてだ。

マリーの葛たか喜代さんは、マリリン・マンソンか在りし日のピート・バーンズを彷彿とさせる
出で立ちながら、ゴージャスで気高くて哀しくて切なくて。見事なマリーだった。
毛皮のマリーは母と息子の愛憎劇なので、息子を持つ身としてはとても身に染みる部分がある。
葛たか喜代さんは正に女であり母だった。

欣也役の辻真梨乃さんはAPBの舞台で何度も拝見している方。ザムザのあの空間で辻さん演じる欣也を
観られたのは、ものすごく感慨深かった。ショートヘアが似合っていて、ちょっと昔ギニョルのライチ
光クラブでマリンを演じてた時のコシミハルさんを思い出したり。
いつも全身全霊で役を演じている辻さん。欣也の涙に私も泣いた。

毛皮のマリーでは醜女のマリーのパートが好きなんだけど、今回の森博之さんは今まで観た中で一番の
イケメン&肉体美!でもしっかり醜女のマリー。
このシーンをこう表現するんだ、この台詞をこういう感じに言うんだ・・とワクワクしながら観た。
最前列に座った方はオイシイですw

紋白役尾崎さんの圧倒的なまでの破壊力。この役も毛皮のマリーではかなり重要な役割を占めてると
思うんだけど、めちゃめちゃパワーがあって引き込まれた。
欣也と紋白が船に乗って世界に出て行くのを表現するシーンは、幻想的で素敵だった。
そして鶏姦詩人の高田さんと笹野さん。詩人のシーンであんなに笑ったのは初めてだよ。
あのお尻はインパクトありすぎ!もうやられた!!w

舞踏シーンでの点滅さんと美女の亡霊たちの、その身体で全身全霊でこちらに訴えかけてくる無言の
感情の迫力と緊迫感。
指先、腕、脚、そして何と言っても背中の動きの見事さには、圧倒された。

ラストのカーテンコールでの鳴り止まない拍手。本当に素晴らしい舞台で胸が熱くなった。
旗揚げ公演の初日という素晴らしい瞬間に、同じ空間にいられた事を本当に嬉しく思う。
また一つ好きな劇団が増えた。
最近ライブが中心になっていたけれど、やっぱり舞台も好きだって改めて思った。
特に寺山演劇。これは自分の原点っていうか核だ。



犬神

2016-06-19 | 芝居
6月18日(土)座・高円寺にて万有引力の犬神を観た。

月が禍々しく残酷な光で照らす中、静々と語られていく悲劇の物語。
余りにも切なくて美しい。
呪術音楽劇とある通りシーザーの生演奏も迫力で臨場感に溢れていて、ラストの衝撃まで
舞台に魅入られて金縛りにあっていた。

犬加微(シロ)の存在がこの舞台の鍵になると思うのだけれど、以前青蛾館の犬神を観た
時に点滅さんが演じていたのが自分の中で大きく印象に残っていたものの、今回の曽田明宏
さん演じる犬加微も圧倒的な存在感だった。
姑の井内俊一さん、裁判官の森祐介さん等の巧みさ。
そして何と言っても月雄の愛おしさ。幼少期の前田文香さんも青年期の森ようこさんも、
どちらも透き通るような孤独と悲哀が滲み出ていてすごく良かった。
永遠のかくれんぼに終わりが来るかと思いきや、訪れる惨劇。
鬼の役は一生終わる事はないのか。ああ。

今回物販で万有の缶バッチを購入。目玉は舞台の衣装・小道具で登場したもの。
ライブで愛用してる帽子につけたい。



双眼鏡の女

2016-06-13 | 芝居
6月5日(日)高円寺明石スタジオにて、劇団APB-Tokyoの「双眼鏡の女」を観劇。

初めて生で観るAPBのオリジナル作品。寺山作品は内容が予めわかってる事が多いけど、
今回は先の読めない面白さもあり意味やその後の展開をあれこれ想像しつつ、いつもとは
違った感じで非常に楽しめた。

今回写真家の横木安良夫さん撮影の写真集がコラボしていて、デジタル版は舞台より前に
ネットで、紙媒体は舞台会場にて販売。そこから作品の内容を想像しイメージを膨らませ
ながら舞台を観たのだけれど、写真と舞台では異なる世界を持ちながら絶妙にクロスして
相乗効果でどちらもより面白くなった。これは斬新な試み。

精神病院が舞台の老女の純愛物語。邪悪の象徴のような鴉はずっと彼女を見守っている。
戦時中の1日だけの恋。帰らぬ人をいつまでも待つ、その切なさと愛しさ。
変わるのは希望だけ。希望を胸に彼女は生き続ける。
じーんと心に余韻の残る良いお話だった。
出来るなら二人が再び出逢えるシーンが観たかった・・というような事を終演後に高野さん
に伝えたら「戦死してるしそれはない。」と思いっきり言われてしまったけれど、戦死
してるのは自分もわかっていて、だからこそ概念というか想念というか、そういう非現実の
中だけでも再び出逢えたらならな・・と思っただけなんだ。

高野さんの雪子は少女の可愛らしさを残していて、でも若い頃を演じている時とガラッと
感じが変わりその老女ぶりは見事。
健一役の前田さんが今回高野さんにひけを取らない熱演で、とても印象に残った。
彼は初めて観た頃よりどんどん素敵になって、輝きが増してきたように思う。
辻さんの振り切れ方はいつもすごいのだけれど、今回更に鬼気迫るというか圧倒される
すごいパワーがあった。
飯塚さんの遊女は色っぽく狂気に満ちていて、彼女の襦袢姿は艶がある。

脚本を書いた柴田優作さんは主宰の浅野伸幸さんであり、11年ぶりの上演との事。
多少今に合わせて変更されている部分はあるんだろうけれど、マッチに懐中電灯、歌と
踊りといったいつものAPBらしいアングラ感もあり、でもしっとり優しくて。
イベントで観た「少女コレクション」もどこか少女浪漫を感じるような内容だったけれど、
これらを浅野さんが書いたのかと思うと少し不思議な感じ。
オリジナル作品すごく良かったので、またぜひやって欲しい!


毛皮のマリー

2016-04-10 | 芝居
4月9日(土)新国立劇場 中劇場にて毛皮のマリーを観劇。

美輪様版はDVDでしか観た事なかったけど、この作品は他の劇団で何度か観ていて台詞も
覚えている程なのに、同じ作品でもそれぞれに違った魅力があると再認識。
マリーは美輪様そのものだから、余りにもするりとこちらに入ってくる。
80歳を過ぎているとは思えない、その美しい声と佇まい。
衣装の豪華さも圧倒的で、更に美輪様のきらびやかさを引き立てている。冒頭の青い肩出し
ドレスで私の心は持って行かれた!w
ピンク色のも着物風のドレスもすごく素敵で、長い裾を綺麗に捌きながら歩く美輪様の何とも
優雅な事!

毛皮のマリーは母と息子の愛憎劇と一言では言い尽くせない、身毒丸とはまた一味違う切なさよ。
マリーの方に親近感を感じてしまうのは何故だろう。
真っ直ぐだけが愛情表現じゃない。屈折する程それは強い。
カーテンコールでの白いドレスの美輪様は神々しすぎて思わず涙が・・。欣也役の勧修寺保都さん
も天使のようで、マリア様と天使が降臨したかのようだった。



梅垣義明さんの醜女のマリーもすごく良かった。醜女のマリーの独白シーンは結構な見せ場だけれど、
観る度にいろんな表現があって楽しめる。今回もめっちゃゴージャス。ビバ、ラインダンス!w
紋白の若松武史さんと名もない水夫の木村彰吾さんも最高だった。嵌まり役。
蝶が沢山飛んでる美しいセットも自分にはたまらないものがあり、壮麗で切なくて、素晴らしい
舞台だった。

美輪様の舞台は毎回届いてるお花も豪華なんだけれど、今回も錚々たる方々からのお花が沢山。