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月想記

戯言日記

くるみ割り人形

2016-03-30 | 芝居
3月26日(土)東京芸術劇場シアターウエストにて、青蛾館の男装音楽劇「くるみ割り人形」
を観てきた。

とにかくポップで明るくて楽しくて、でも笑いの中にもグッとくるところがあったり。
闇のない作品を久々に観たなぁ。これを寺山が書いたという事にまた驚きを感じたり。
映像化される事なく終わってしまった、アニメの原作が元になっているとの事。
寺山原作のアニメ、見てみたかったなぁ。

男装音楽劇・・だけれど全員が男装している訳ではなく、ネズミもいれば人形も猫も美女も
色々いっぱい。しかしドロッセルマイヤーの宮下今日子さんは男前だった!
そしてネズミの母マウゼリンクス夫人ののぐち和美さんの存在感の凄さ。
出てくるだけ、一言喋るだけで会場中が引き込まれる。
ネズミも人間も子を思う母の気持ちは一緒なんだよね。お母さん~!

今回自分的にとってもツボだったのが森ようこさんの青猫のフリッツ。
森さんが猫って素敵すぎる!青猫だから髪もメイクも衣装も全部ブルーで、それだけでもう
たまらない~。
支那の皇妃の蜂谷眞未さんも、お姿も声も相変わらず本当に綺麗だった。
万有の時とはまるで違う、コメディタッチのキュートな感じも新鮮で可愛い。

子供が観てもわかりやすいであろうシンプルなストーリーと、色と音の洪水。
時々自動の生演奏が臨場感があってとても良かった。笑顔×笑顔。お日様のような舞台。
暗黒面に惹かれる自分も思わず微笑んでしまった。

少女コレクション

2016-03-26 | 芝居
3月20日(日)原宿デザインフェスタギャラリーにて、APB舞台美術展Ⅲを観てきた。

2001年ロシア国立・ピリグリモフ劇場公演「少女コレクション」の映像上映。
15年も前の舞台を今こうして観られる事の貴重さ。
浅川マキさんの赤い橋などの音楽や蝋燭やライトの使い方など、現在のAPBに通じる
ものが多々あった。
APBが持っている良い意味でのレトロ感というか古臭さというか、それは昔からずっと
受け継がれているものなんだな・・と思った。
それがこの劇団の個性というか。新しいものに挑戦する姿勢と古いものを守り通す面と。
そこが私がAPBを好きな理由なのかもしれない。

ストーリーはオリジナルなんだけれど、寺山っぽい演出もありつつお話の内容的には
少女漫画風でもある。
現在もいらっしゃる方は高野さんと浅野さんのお二人ぐらいだったけれど、若かりし頃の
お二人の姿を観られて感激した。
浅野さんは当時からマントを翻していたのだね!w そしてやはり声の良さが一際目立つ。
高野さんは月蝕時代を彷彿とさせる可愛らしさ。

この舞台を観た当時のロシアの方々の感想をぜひ知りたいと思った。
同時通訳はなかったと思うし、日本語の台詞の意味がわからず観るとどう伝わったのか?

6月に上演される久々のオリジナル作品「双眼鏡の女」の舞台が、この上映を観てますます
楽しみになってきた。

奴婢訓

2016-02-08 | 芝居
2月7日(日)座・高円寺にて万有引力の奴婢訓を観た。

万有の舞台はいつも役者達の肉体の美しさとその動きの素晴らしさに魅せられ、言葉と
音楽と全てが一体になってこちらに一つの衝撃波となってぶつかってきて、劇場中に
そのエネルギーが満ちるのを感じる。
ずっと観たかったこの作品。そのスケールは余りにも圧倒的。

今回特に気になったのはやはりあの機械達。メイクや美術も含めての素晴らしい世界観。
人と機械が一緒になる境界線。支配するもの、されるもの。一瞬の逆転。
容易ではない体勢だという事がこちらにも一目でわかる、役者たちの体を張った機械と
なっての演技。あの状態でセリフを喋るんだからすごい!
ひたすら舞台に釘付けになった。

この日は終演後に高田恵篤さんと美術の小竹信節さんのアフタートークがあった。
小竹さんトークに不向きなれど(声が小さい、マイクを口から離してしまう、話の着地点が
見えないw)寺山さんとのエピソードや機械工作の裏話など色々聞けて面白かった。
ブラジル公演のスライド上映とこぼれ話もあった。ブラジル公演の映像を観る事って出来ない
のだろうか?すごく観たい~!

万有引力はアングラ劇団の中でも、一つ飛び抜けているというかその存在感が違いすぎる。
寺山の天井桟敷の直系なのだから当然か。
天井桟敷は観る事が出来なかったけれど、今こうして万有の舞台を観られる事を幸せに思う。

スキンヘッドと白塗りの男性ほど色気を感じるものはない!w
そして暗闇に浮かび上がるマッチの灯と煤の匂い。これが至極。

書を捨てよ町へ出よう

2015-12-25 | 芝居
12月23日(水)東京芸術劇場シアターイーストにて「書を捨てよ町へ出よう」を観た。
今年最後の観劇。

今回の舞台、嫌いじゃないけど好きじゃない・・というのが正直な感想。
色々と面白い演出で随所に惹かれるシーンもあったけれど、劇の世界に入り込めなかった。
これは単に好みの問題。

開演前の舞台上には鉄パイプ状の組み立て前のセットらしきものがいっぱい。
役者達が現れて台詞を言い始める中うしろでどんどんそれを組み立てて行くんだけれど、
パイプの当たる金属音が大きくて台詞の声がかき消されて聞こえなかったり。
一人ものすごく棒読みの女優さんがいて、あれはわざとなのか単にヘタなのか。

途中映像でピースの又吉が出てくるところがあって笑えるシーンなんだけど、面白いのは
又吉さんであってこの作品じゃないっていうか、なんかこうずるい気がした。
穂村さんについても同じ。私の中では劇とシンクロしてくれなかった。

映像と舞台の融合は決して嫌いじゃないし、実験的な抽象的な作品も好きだ。
でもなんでだろう、今回は合わなかった。

とは言いつつも、主演の村上虹郎君は素敵だった。
若さ故の苛立ちと鬱屈したエネルギーを抱えた感じが良い。今この瞬間のきらめき感に
溢れている。声と眉毛から目にかけての力強さが好きだ。
自分に合わなかったと言いながらどこか引っかかるものがあったのも確かで、もう少し
自分の中で消化したいと思いパンフは購入した。
ツイッターでこの舞台を「面白かった!」と書いているフォロワーさんがいたのだけれど、
何がどう面白かったのは全く書かれていなくて、どこがどう響いたのか私に教えてくれ!
と思ったりw
自分と違う意見を聞くのは好きで、むしろいろんな感想を知りたいといつも思う。
私のこのブログを読んで「けしからん!」と不愉快になる人もいるかもだけど、決して頭から
作品を否定するような気持ちはなく、それぞれの感じ方というものにただ興味があるだけ。
本当にどうでも良いと思う作品なら、パンフも買わないしこうして感想すら書いたりしない。
そう考えるとこの舞台は、やはり私に何らかの影響を及ぼしたのは確かだ。




醒めて歌え・青少年のための無人島入門

2015-11-29 | 芝居
11月28日(土)下北沢OFF・OFFシアターにて劇団APB-Tokyoの『醒めて歌え・
青少年のための無人島入門』を観劇。

観客席ぐらいからの映像を使った表現やデザフェスでのパフォーマンスも経て、APBの
進化系作品と感じた。寺山さんの思想をしっかり受け継ぎながら、新しい事に挑んで
いる印象。
今回は映像作品の醒めて歌えの脚本と舞台の青少年のための無人島入門の脚本2つを、
高野さんが1つにまとめた意欲作。
映像シーンはまるで映画を観ているような感覚になるのだけれど、元が映像の作品だと
アフタートークで知り納得。
ただこの部分が結構長いので、生の舞台が観たくて劇場へ足を運んでいる場合少し
違和感があるようにも思った。最前列だとスクリーンが近すぎて観るの苦しかったし。
私はここ何年かAPBを観ているので彼等の新しい試みには期待感しかないし、観客と
しての自分もまた固定観念を捨てて変わって行きたいと思うのだけれど、他の人から
観たらこういう演出ってどうなのかな・・と思ったりした。
いつも自分の観ようと思っている舞台や映画の感想は事前に出来るだけ見ないように
してるので、見終わったからあれこれググってみよう。うん。

APBの舞台を観ると毎回すごく言葉というものに対して改めて考えてしまう。
寺山さんの紡いだ言葉を通じて、その力、その存在に対峙する。
言葉で言い表す事の出来ない感動があり言葉なんて無意味だと思う一方、言葉によって
人生が変わったり、笑ったり泣いたり、人を殺す事さえ出来る。

言葉は無であり、全てである。

冒険を諦めサラリーマンとなったにんじんは、結局何も無い変わらない毎日を過ごす。
しかし彼だけが負け犬なのではなく、キノミ達偽りの無人島生活者達もまた現実逃避を
しているにすぎない。
そういう自分も生活の為に働き時間に追われ、時折舞台やライブで感動と刺激を貰い
生き長らえている。
私にとっての無人島は、そういった心の琴線を震わせてくれる芸術達なのだ。
舞台を観る度私の血は歌っている。醒めながら。

変化し、進化するAPBから今後も目が離せない。