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月想記

戯言日記

中国の不思議な役人

2018-11-04 | 芝居
高円寺明石スタジオへ劇団A・P・B-Tokyoの「中国の不思議な役人」を観に。

始まってすぐ暗闇の中のマッチの灯りと煤の匂いに、来た、来た~!と思う。待っていましたこの感じ。
その世界に引き込まれて釘付けになり、あっという間の2時間弱。格好良いの一言。瞼の裏がまだ赤く染まっている。
「中国の不思議な役人」は初めて観たのだけれど、寺山作品の中ではストーリーとしてはわかりやすいかな?
純愛ものに見せかけて単純なラブストーリーでは終わらない。

APBは毎回セットが豪華だけれど、今回も支那のムード満天。衣装もメイクも一つ一つがとても際立っていた。
刺青のボディメイクはお見事。男優陣の前頭部を剃り上げていた心意気にも痺れた。娼婦たちはひどく妖艶で美しく、
中でも13歳の少女娼婦の可憐さと、おじさん好き…の破壊力たるや。
花桃役の渡邉さんは本当に13歳ぐらいに見えるので実際はどうなんだろう?と思ったら、中学一年生との事でまさに
そのまま!あの役は本当の少女にやって欲しいよね。とっても嵌っていた。
西瓜男の七朗さんは、与太者を演じさせたらピカイチの色男(笑)
娼館のママ役の飯塚さん、めちゃめちゃ色っぽかった。本当に見るたびに綺麗になっていくなぁ。
ちょっと前まで新人さんなイメージだったけど、今やAPBを代表する女優さんになった気がする。

明石スタジオは今年いっぱいで閉館との事で、ここで観るAPBは今回が最後。次はまたどこでどんな世界を魅せてくれるのか。
ラストの名乗りは何度観ても鳥肌が立つ。新しい役者が増えてもAPBらしさは変わらず、伝統を守りながら良い方向により
進化して行っているように感じる。次の公演を楽しみに待つ。



星の王子さま

2018-09-24 | 芝居
9月20日(木)池袋芸術劇場シアターウエストへ、Project Nyxの「星の王子さま」を観に。
今まで観たNyxの舞台の中で最もライブ感が強かったような。芝居を観た後じゃない感覚に・・・(笑)
随所に見所満載で楽しかった。
今回も美術や衣装がとても美しく、宇野さんの美の世界を堪能。黒色すみれの生演奏が更に臨場感を高めてくれる。
すみれーずの音楽はこの舞台に不可欠。キラキラと眩しくて華やかで麗しく、笑いあり切なさありの豪華絢爛な
舞台だった。

上演時間が2時間15分とのアナウンスで少し長いな・・・と思っていたけど、途中の5人のクイーンたちのステージ
で納得。そこだけお話と別物なんだけど、とにかくそれぞれの内容が圧巻。一度にこんなに観てしまって良いん
だろうか?というぐらいに濃密な内容。寺山さんが観てたら何て言うだろうなぁ(笑)

わかみほさんは最初にクイーンが勢揃いした時に、一際目を惹く美しさ。手足が長くて背も高い。プロポーションが
もう特別。エアリアルの力強くて華麗な美にすっかり魅せられる。わかみほさんのちゃんとしたステージは是非一度
観てみたい。出来ればストの方で〜。

フラワー・メグさんの貫禄の中に漂うアンニュイさ。まさにエロスだった。ヴィヴィアン佐藤さん、ここで観られる
とは〜。存在自体が贅沢。ジュリーのサムライ、思わず歌えてしまう自分がいた(笑)
中山ラビさんの低音のハスキーヴォイスの渋さったら。パワフルでこちらにガンガン響いた。

エロチカ・バンブーさん。バーレスクって本当に美しいよね。肉体だけではなく音楽や衣装や演出全て自分で考えて
表現して、その世界観にひたすら感動してしまう。アナーキー・イン・ザ・UKは反則です。この曲には反応して
しまう(笑)生まれ変わっても女だったらバーレスクやりたい・・と思う程に素敵。

Nyxの舞台では合間に入るルナティコさんの人形劇もすごく魅力的で。その動きと内容の切なさに涙した。
星の王子さまの声を演じていた柏木亜優美さんは月蝕歌劇団で拝見した事はあったけれど、そのお声ですぐに彼女
だとわかった。こちらの胸に沁み入るような優しさがあった。

今回の舞台はこれまでに観た事のある星の王子さまとは大きく異なって、寺山さんの原作ともまた違う展開だった。
そこがまたとても斬新で面白く。
こうなると来年のB機関の星の王子さまがどんな感じになるのか、余計に楽しみなのである。


大山デブコの犯罪

2018-09-02 | 芝居
8月26日(日)ザムザ阿佐ヶ谷でB機関第参回公演『大山デブコの犯罪』を観た。
初めて観た時から惹き込まれその世界観の虜になったB機関。演劇と舞踏が融合した舞台は、他に類を見ない
独自の寺山作品。虚構と現実。全てが美しくて切なくて、こちらの心を掻き乱して止まない。
大千秋楽、圧巻であった。心底震えた。

デブコの物語は実際に舞台で観るのが初めてで、今回B機関のオリジナル設定で七つの大罪がモチーフにも
なっていたので、どういう展開になるのか予想がつかずとてもワクワクした。
一つ一つのシーンがとても美しく印象に残り、引き出しにしまって好きな時に開いて堪能したいと思うほど。

舞踏担当の皆さまの肉体とその動きが素晴らしいのは言うまでもなく、役者陣も負けずに美しい。
柚木成美さんの貞操帯姿はヤバかった。お尻が可愛すぎ。辻真梨乃さんは中性的な感じがぴったりなので
天使役はとてもはまる。凛とした横顔と、抱える闇と切なさと。
辻さんと点滅さんの舞踏シーンは海の底を漂いながら浮上していくようで、本当に美しかった。
言葉のいらない、動きだけで全てが伝わって来るその瞬間。刹那の想い。

いつも印象に残る存在だった高田那由太さん。今回は物語の中心になる役どころでとても素敵だった。
見事な人魚姿にもう惚れてしまった(笑)笑いあり苦悩あり、どちらも見事にこなせる役者さんだと思う。
フタナリのサーカス団長の天誅さん、その悲哀に思わず涙してしまった。相変わらずの美声です。

葛たか喜代さんはその存在感が圧倒的。出てきて言葉を放った瞬間ひれ伏したくなる。美しさは正義。
そして何と言っても主催の点滅氏。その肉体で極限までこちらに畳みかけてくる。

B機関は舞台セットや衣装もとても美しく印象的で、今回は特にやはりあのデブコの大きな顔の人形が
トラウマな素晴らしさ。ボディメイクも毎回見所の一つだ。
「人生はお祭りだ 死ぬ日までどこかでお囃子が鳴っている」
この世界観にただただ浸っていたいと思う。次回公演も必ず行く。

赤糸で縫いとじられた物語

2018-06-23 | 芝居
6月22日(金)新宿シアターブラッツへ万有引力の「赤糸で縫いとじられた物語」を観に。
夜叉ヶ池以来のシアターブラッツ。この広さで万有の舞台が観られるのは非常に興奮する。アングラ度、臨場感
半端なし。冒頭暗転の後赤い照明の下高田恵篤さんが現れた瞬間格好良すぎて鳥肌が立った。
そこからずっと釘付けに。

次々といろんなエピソードが展開していくのだけれど、消しゴムやけむりという名の猫や過去の記憶の改ざんや、
随所に寺山を感じる暗黒童話。曽田明宏さんの駒鳥の悲劇と思い出内科のシーンが特に好き。
写真屋の主人と思い出内科の院長を演じた森祐介さんの狂気もすごかった。
今回歌が多いのだけれど、歌も踊りも照明も美術も全てが万有引力の世界で魅入られた。
観ていてものすごくゾクゾクして、とにかくこれがやはり大好きだと思った。自分の原点。

森ようこさんは今宵も本当に美しく、姿が見えなかったとしても声を聴くだけでわかる存在感。土曜夫人、素敵
だった〜。その夫人に焦がれる水夫の高橋優太さんも良かった。間違えた後悔の絶叫が胸に残る。
人を消し去る事ができる消しゴムがあったなら、私が消すのはやはり自分自身かな。。。

琴線を震わせてくれる素晴らしいものって沢山あって、私はつい一つのものに集中してしまいがちなのだけれど
それだと煮詰まる事も多いので、いろんなものをインプットして自分の中で消化して吐き出していきたいと
そう思った。
万有引力の舞台はウジウジと悩んでいた己の小さな感情も吹き飛ばしてくれる程に、余りにも圧倒的で素晴らしくて
感動してしまうのである。

青ひげ公の城

2018-04-22 | 芝居
4月21日(土)高円寺明石スタジオにて劇団A・P・B-Tokyoの『青ひげ公の城』マチネを観劇。

数年前にもAPBのこの作品を観ているけれど、出演者も衣装も演出も変わりその進化にまた新たな感動が。
前回のシーンも色々と思い出しつつ観ていた。
あのラストの名乗りを聞くと胸が熱くなる。最近舞台からは少し足が遠のいていたけれど、やっぱり好きだ
APB。

第2の妻の浅野さんと第5の妻の高野さんはもうハマリ役。浅野さんのあの「ユディットォォ〜〜!」って
声は夢に出てきそうなぐらい。
前回ユディットだった飯塚さんが第1の妻を妖艶に演じていたのも感慨深い。本当に美しく成長されているなぁ。
にんじんがマメさんだったのもとってもキュートで良かった。

第3の妻の既に死んでいるその存在と歌声は好み。今回の田中さんもイメージぴったり。
第4の妻はプールの底で死んでいるけれど、唯一名前を連呼される妻・シモーヌ。中野さんはショートヘアが
似合うきりりとした方で、キレのある踊りがカッコ良かった。

第6の妻の前田さん、これまでにも女装姿は見ていたもののこれ程本格的なのは初めてか?人形役も美しかった
けれど、個人的にはメイド姿に萌えました(笑)今回セリフがほとんど無かったので、あの美声が聞けなくて
少々残念。男優役の七朗さんはイケメン枠をがっちりと継承な印象。ニクイお方です。
衣装係の華岡さんは、怨念溢れる役どころがよく似合う。

前回観た時天誅さんが演じていたコプラ。目のやり場に困るハードな衣装の役どころだけれど、今回の高橋さんの
振り切り方が半端無く格好良かった。舞台監督となった天誅さんは、その存在感を遺憾なく発揮。
ラストの赤毛のド派手な衣装が、ただでは終わらせない感がひしひしと。

アリスとテレスの後藤さんと山崎さん。登場した時の童話感がすごい。こんなに可愛らしくて印象に残ったアリス
とテレスは初めてかも。抱きしめたい(笑)
そして何よりもユディットの横木さん。この役は初々しさを残しつつ力強く凛とした女性。火吹きもお見事だったし
ラストの独白シーンは迫力があった。
「月よりももっと遠い場所。それは劇場!」の叫びが胸に残る。

寺山作品は他の舞台の話が混入してくるのはよくあるけれど、今回もこれは毛皮のマリーよね・・・とか思いつつ
楽しんだ。次々に現れる妻たちのエピソード、初めて観る人にはどんな風に映るのだろうか?
劇中劇、どこまでが嘘で、どこからが真実か?

次回公演は同じく明石スタジオにて11月との事。次は何を演ってくれるのだろう。
きっとまた観に行ってしまうのだろうなぁ。