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月想記

戯言日記

「√」眼球譚または迷宮する劇

2020-08-02 | 芝居
7月24日(金)下北沢ザ・スズナリにて万有引力の「√」◉眼球譚または迷宮する劇◉を観た。

久しぶりの生の舞台。嬉しさと緊張で震えた。劇場のあの暗闇と匂い。空気を伝ってビリビリとこちらに届く感覚は劇場ならでは。
高田さんが「観客も一緒に舞台を作っているんだ。」とおっしゃっていたのに深く頷いた。

今回は眼球譚と疱瘡譚が日替りでの上演となり、眼球譚はこの日が初日。
眼球譚は毎回内容が変わるそうで、今回は「観客席」を中心とした内容だったけどあれは観客いじりの参加型なので心臓に悪い。
いきなり私の名前を呼ばれてすごく焦った(笑)
観客席は物語ではなくストーリーがないので、捉え方が難しい。
でもラストに取り残される感じも含めて、あぁ劇場に戻ってきたんだと思って嬉しかった。
過去の映像も毎回流され、この日は2013年の笹塚ファクトリーでのオリジナル作品「SUNA」を。
これは実際に観ているのだけれど、懐かしさと共にもう7年経ったのか・・・と感慨深かった。

身毒丸や田園に死すの上演だったり海外公演の様子が流された回もあったそうで、出来るものなら全部の回を観たかったと
思う事しきり。
素晴らしきかな、万有引力。

わたしのせいじゃない

2019-08-20 | 芝居
8月18日(日)六本木新世界にてミュージカル「わたしのせいじゃない」を観た。

飯田華子さんによる脚本演出の北村早樹子さんの自伝的ストーリーと聞いていて、勿論それは一部分だけでフィクションなんだろうけれど
すごくシンクロして刺さるものが沢山。
娘と母、両方の気持ちで観ている自分がそこにいた。なんとも苦しくて愛おしい作品。

我らがあみ太さんは、そのままあみ太さんだった。最後にはいつもの最終形態で見事な筋肉美を披露していたし(笑)
でも物語の良いストーリーテラーでありアクセント。台詞を喋っていてもやはり美声。
唄ってくれるともうひたすら聴き惚れてしまう。劇中での歌唱は我をも忘れる恋狂いと気狂いワルツの2曲。
シーサトさんと西井さんの生演奏も良かった。お二人は北村さんの祖父と祖母役も怪演!

「わたしのせいじゃない!」という叫びは、自分は悪くない…と思う事での自己防衛。憎むべき母を実はとても愛していて、拒絶しながら
自立して独りで生きる道を選ぶ。愛されない、愛したい。抱きしめられなかった子供は上手く愛情表現が出来ない。
本当は一番愛しているのは自分自身なのかもしれない。

その昔自分はまだ半分で、もう半分の欠片に出会えたら満たされると思っていた。だからこんなに寂しいんだと。でも実際にはそんな
欠片は存在しなく、愛してくれた人の想いに応える事も出来ず。誰かに幸せにして貰うのではなく、幸せは自分で見つけて作るもの。
己が誰かの支えになれたなら、そこに成る。
この舞台を観ていてそんな思いに駆られた。私も甘えるというのが出来ない、方法がわからない子供だった。未だにそれはある。
苦しみの中からも得られるものがあって、それはその経験をしていない人には持ち得ないもの。
子供の頃の自分をそっと抱きしめて、大丈夫だよって言ってあげよう。
昔の自分なら、子供の側の気持ちだけで今回の舞台を観ただろう。でも今は親の立場でも考えてしまう。子供を持って親に対する見方は
変わった。良い事も悪い事も見えていなかったものが沢山。親だからって人として急に完璧になんてなれない。
共に成長していくのだと痛感している日々。

私は最終日のマチネのみの観劇だったけど、今回とてもリピーターが多かったと聞いている。
一度しか観られなくてほんと残念。とても素晴らしかったので、またぜひこういう舞台もやって欲しい。

奴婢訓@武蔵野美術大学

2019-07-07 | 芝居
7月5日(金)武蔵野美術大学で万有引力の小竹信節退任記念公演「奴婢訓」を観た。
ビリビリと痺れるような空気の中、またこの世界に浸れる事の嬉しさ。演劇は芸術だという事を改めて痛感。
最高の舞台美術、照明、衣装、音楽。何よりも美しい役者たちの肉体と言葉。

小竹さんの美術は本当に素晴らしい。人間機械。圧倒的な演者の身体能力。
こんな素晴らしいものが武蔵美の学生さんは500円で観れてしまうなんて!
今回最初観劇は関係者のみとの事だったから諦めていたのに、一般にも抽選でチケット販売されて無事にゲット出来て嬉しい。
これが寺山演劇との出逢いになった武蔵美の学生さんは、人生変わってしまうのではないか。そのぐらいの衝撃がある作品。
寺山さんの舞台の中でも特に好きだ。そこに万有引力が存在している幸せ。

レグホンのシーン、赤い下着姿の曽田さんが実に妖艶だった。今回彼の姿がすごく印象に残ったな。見事なお尻。赤と白の対比。
ニワトリと包帯。森ようこさんのダリアも美しかった。ゴルチエ風の衣装がお似合い。午前零時の、零時の殺!

観ている間つかの間全てを忘れさせてくれ、向こう側の世界へ連れて行ってくれる。幻惑の非日常。
ご贔屓の今村博さんに、今回もドキドキしながら釘付けになっていた(笑)


チェンチ一族

2019-04-14 | 芝居
4月7日(日)下北沢ザ・スズナリにて万有引力のチェンチ一族を観た。

鳥肌立てながら魅入られてしまう迫力の舞台。役者たちの肉体と動きの素晴しさ、投げられる言葉の重みと迸る熱量。
圧巻の一言。いつもこちらの予想の遥か上を行き、心地良く裏切られる。またやられてしまった。

髙田さんのチェンチ伯爵の残忍な非道っぷり、森さんのベアトリーチェの気高さと悲哀の叫び、飛永さんの狡猾なオルシーノ、
サヴェッラ今村さんの苦悩・・・もうどの方も嵌り役すぎた。
舞台美術のシンメトリーな美しさと、そこに溶け込み佇む彫刻のような役者たち。それは一つの絵画のようだった。

終演後のアフタートークで髙田さんも少し触れていたけれど、私も今回事前にチェンチ家の話を調べた時、最近無罪判決の
出た父親が娘を暴行していた事件を思わずにはいられなかった。あの判決には反吐しか出ない。いかなる理由があろうと、
娘に手を出す父親なんてその時点で許される訳がない。
抵抗した証明が出来ないから無罪だなんて狂ってる。ベアトリーチェのように殺すしかなかったのだろうか?
いや、それで彼女が罪に問われるならそれも間違ってる。最後まで無罪を主張したベアトリーチェの「例えその行為を
認めたとしても罪ではない!(少し言葉違うかも)」みたいな叫びが胸に残ってる。

重いテーマではあるけれど、万有引力らしさが散りばめられた素晴らしい舞台。そして忘れられないのはやはり音楽。
男優だけで演じられたという初演版も観てみたかったなぁ。


狂人教育

2018-11-18 | 芝居
11月17日(土)下北沢ザ・スズナリで万有引力の狂人教育をマチネで観た。
久々のスズナリ。あの階段を登っていく瞬間に胸が高まる。

今回も思わず言葉を失うほどの格好良さ。全身が総毛立つのを感じながら、その動きの一つ一つに目が釘付けに。
いつもながら身体能力と表現力の高さが半端ではない。黒と白の対比の鮮やかさ。人形使いと操り人形の家族たち。
たった一人の気狂いは誰?

黒づくめの人形使いに対し操り人形の家族は全身真っ白で髪も金髪。森ようこさんの金髪ボブがなんて可愛いこと。
高田さんのおじいさんの金髪もはまりすぎ。高橋さんも森さんも新鮮で良い。そして蘭ちゃん伊藤さんの可憐さ。
万有の舞台は余りにも素晴らしくて、いつも観ると圧倒されてしまう。その世界観にひれ伏すのみ。
動きと言葉と音楽と、全てが一体になってこちらに畳み掛けてくる。またものすごいものを観てしまった。
万有引力はやはり特別だなぁ。

食べたいときに食べ
物語をよみたいときによむ
そう 人に〈気狂い〉ってよばれたって構やしない

自分を貫く気狂いに明日はないの?いいや、私も気狂いであり続けたい。誰になんと言われても。

次回作「リヴォルヴィング・ランターン」の先行販売チケットも購入出来たし、大満足。
次回公演が今から待ち遠しいのである。
万有引力の舞台を観ないで人生を終わるのは、絶対損していると思うよ。
口で言っても伝えられない。観て、感じて、体感するべし。