新古今和歌集の部屋

源氏物語 湖月抄 藤袴 玉蔓の返歌

 
 
 
 
 
                              媒の人々也
めたるにほひも、さま/"\なるを、人どもみな
おぼしたらぬべかめるこそ、さう/"\しけれな
       兵部卿の宮ばかりの御返有也
どいふ。宮の御返をぞ、いかゞおぼすらん、たゞ
いさゝかにて、
 玉
  心もて日影にむかふあふひだに朝をく霜
                               玉の返しを蛍の
ををのれやはけつ。とほのかなるを、いとめづ
見給ふ心也    我御心からにてはなきとあるを宮はうれしく見給ふ也
らしとみ給に、みづからは哀をしりぬべき御
                    兵部卿の心中也
けしきにかけ給へれば、つゆばかりなれど、いと
うれしかりけり。かやうになにとなけれど、
 
 
 
頭注
おぼしたえぬべかめる 内へ
參りたまひなばかやうの事
かき絶ぬべきと也。今を
名残なるべきと也。
 
 
心もて けたずもあら
なんとあるをうけたり。葵
は必日に向ふ物也。衛足と
て身をたもちたる物也。
されど日に向ふとて霜
をばえけたざる物也。其
ごとく玉かづらの宮仕に
出だつ事も我心づから
なる事にてはなき也。人
まかせなるを云り。葵は
頭注
日にむかひて葉をかたぶけて根をかくすもの也。孔子曰。鮑荘子智不及葵能衛其足。
文集㐧十三傾心傾日葵。畧記之。抄衛足の葵は二葉にあらず云々。
さま/"\なる人々゙の、御侘こともおほかり。女の
御こゝろばへに、このきみをなんほんにすべ
きと、おとゞたちさだめきこえ給ひけり。
頭注
女の御心ばへこの君を本
に 哢玉かづらを女の本
と定め給ふと也。紫上は又
最上也。中/\いふに及ざ
るべし。此心此物語に
所々あるべし。 細孟
同也。花鳥説如何云々。
 

めたる匂ひも、樣々なるを、人ども皆おぼしたらぬべかンめる
こそ、騒々しけれなど云ふ。宮の御返しをぞ、如何がおぼすら
ん、ただ些かにて、
  心もて日影に向かふあふひだに朝をく霜を己やはけつ
と仄かなるを、いと珍しと見給ふに、自らは哀を知りぬべき御
氣色にかけ給へれば、露ばかりなれど、いと嬉しかりけり。か
やうに何となけれど、樣々なる人々の、御侘び事も多かり。
女の御心ばへに、この君をなん本(ほん)にすべきと、大臣達定め聞こ
え給ひけり。
 
 
※孔子曰。鮑荘子智不及葵能衛其足 春秋左氏伝 成公十七年 「仲尼曰鮑莊子之知不如葵,葵猶能衛其足」と思われる。
 
※文集㐧十三傾心傾日葵 不明。 
 
※衛足葵 蜀葵の別名。タチアオイの中国の品種?
 
和歌
               玉鬘
  心もて日影に向かふあふひだに朝をく霜を己やはけつ

 
よみ:こころもてひかげにむかふあふひだにあさをくしもをおのれやはけつ
 
意味:自身の心から、日の光りに向かう葵だに、朝置く霜を自分自身から消そうとはおもってはおりません。宮仕えも自身が望んだものではないので。
 
備考:葵は衛足葵(蜀葵)で、フタバアオイとは異なり、もちろんヒマワリ(向日葵)とも違う。日影は、肖柏本、三条西家本で、大島本他は、光りで、意味は同じ。
 
略語
※奥入 源氏奥入 藤原伊行
※孟 孟律抄  九条禅閣植通
※河 河海抄  四辻左大臣善成
※細 細流抄  西三条右大臣公条
※花 花鳥余情 一条禅閣兼良
※哢 哢花抄  牡丹花肖柏
※和 和秘抄  一条禅閣兼良
※明 明星抄  西三条右大臣公条
※珉 珉江入楚の一説 西三条実澄の説
※師 師(簑形如庵)の説
※拾 源注拾遺
 
 
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